2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

政権交代を求める国民の目覚め、時代を動かす・・・春秋 八葉蓮華

そのときも大いに風が吹いたのだろう。明治23年、近代史に残る第1回衆院選の話である。自由民権運動の流れをくむ「民党」が171議席を得たのに、政府系の候補者は84議席。日本の国政選挙の歴史は野党圧勝から始まったわけだ。 ほぼ120年を経て、こんどは民党…

FRBバーナンキ議長「大胆な行動と独創的な発想」素早い金融政策・・・春秋 八葉蓮華

「あなたは、たしかゴールドマン・サックスの最高経営責任者(CEO)でしたが……」。勘違いした議員が質問を始めると当人はニヤニヤしていた。「いえ、私はプリンストン大の経済学部CEOでした」。公聴会は爆笑に包まれた。 米連邦準備理事会(FRB)の…

漫画がきっかけで「文化系」熱中するものがあるのは素晴らしい・・・春秋 八葉蓮華

とめはね、けいおん、おちけん、バクマン。さてこれらは一体、何の名前でしょうと聞いても、漫画通の方々には易しすぎるクイズかもしれない。いずれも最近の人気作の題名であり、文化系の青春をさわやかに描写した点で共通する。 「とめはねっ!」の舞台は高…

「祝ピアノ300年」愛情をこめて扱えば、いつまでも奇麗な音を聞かせてくれる・・・春秋 八葉蓮華

「蝶々(ちょうちょう)」「蛍の光」「むすんでひらいて」の旋律は誰でも口ずさめる。日本人に歌いやすい西洋の民謡を選んで、明治14年に「小学唱歌集」が編さんされたからだ。お雇い外国人だった米国の音楽教師ルーサー・メーソンの労作である。 洋楽のドレ…

日本に最も近い米国である「夢の」ハワイを再発見・・・春秋 八葉蓮華

「10問正解して夢のハワイに行きましょう」――。1963年から20年以上続いた人気テレビ番組「アップダウンクイズ」の冒頭に語られたキャッチコピーである。70年代だったか、これが「さあ、ハワイに行きましょう」に変わった。 「夢の」が消えたのはその分、身近…

国や自治体、個々人の新型インフルエンザ感染対策に慢心・・・春秋 八葉蓮華

「冒」という字は、頭巾(ずきん)のたぐいを深くかぶり目だけを出している姿を表しているそうだ。「字統」(白川静著)によると、それがかぶとをつけて進撃する格好にも見え、「無頓着に行動すること」を指した。「冒険」「冒す」の意味もそう聞けばよく分…

民主化の闘士「激動の生涯」自由にモノが言える普通の国をつくり・・・春秋 八葉蓮華

オリンピック開催に沸く21年前のソウルで、かの地の女子大生たちから流行のあれこれを取材したことがある。「音楽は何が好き?」と聞くと競い合うように答えてくれた。「日本の中島みゆき」「工藤静香がいいな」「中森明菜です」 こちらの人気者をよく知って…

「日本という方法」日本の発展と生き残りにはアジアとの共存共栄が不可欠・・・春秋 八葉蓮華

お盆の帰省に合わせ、故郷で墓参りをしてきた方も多いのではないか。田園に囲まれた瓦屋根のお堂、塔や山門。寺の風景は城跡や祭りと並び古い町になじみ懐かしさを誘う。しかし学校で習う通り仏教はもともと日本の宗教ではない。 インドから中国、朝鮮半島へ…

一国のリーダーを決める衆院選、情報や組織を掌握できないときの怖さ・・・春秋 八葉蓮華

広島県江田島市の海上自衛隊幹部候補生学校では1羽のフクロウが大講堂の中を見下ろしている。演壇の上の玉座を飾る彫刻のことだ。大講堂は海軍兵学校のころから入校式や卒業式に使われ、士官になる大勢の若者を送りだしてきた。 フクロウはローマ神話の知性…

意志の勝利「まず平和を愛せ。そして従順、勇敢であれ」とあおり立てる独裁者・・・春秋 八葉蓮華

もとはもっぱら激しい寒さや恐怖、嫌悪を表現した「鳥肌が立つ」という言葉は、最近は感激した時にも使われる。「総毛立った」と言えば誤解はないだろうか。1934年のナチス党大会を宣伝用に記録した映画「意志の勝利」を見終わっての気持ちである。 映画はい…

便利さ・治安の良さで普及が進んだ「自販機王国」に逆風・・・春秋 八葉蓮華

自動販売機の歴史は紀元前のアレクサンドリアにさかのぼるという。貨幣を入れると重みで弁が開き、水を得られる仕組みだったらしい。実在の証拠はないが図面は残る。そして19世紀に英国で、たばこ、菓子などの自販機が登場した。 20世紀前半は米国、後半は日…

ミャンマー20年も続く軍事政権の暴挙愚挙の繰り返し・・・春秋 八葉蓮華

納豆があるかと思えば赤飯もある。モチ米を炒(い)って固めた雷おこしも売っているし琵琶湖名産の鮒(ふな)ずしの類(たぐい)も……。どこかの物産展の話ではない。写真家の森枝卓士さんが「東南アジア食紀行」でつづるミャンマーの山村の市場風景だ。 「と…

「地震国」国挙りて男女叫び、唱いてまどいぬ。すなわち山崩れ河湧く・・・春秋 八葉蓮華

天武天皇の治世、684年に四国の南岸を激しい揺れが襲った。「国挙(こぞ)りて男女叫び、唱(よば)いてまどいぬ。すなわち山崩れ河湧(わ)く」とは日本書紀の生々しい描写だ。列島の太平洋側で繰り返される巨大地震についての最古の記録だという。 同じ時…

ゆとりは自分で作るもの「夏休み」雑事にかまけている人ほど仕事の要領が悪い・・・春秋 八葉蓮華

大雨による災害が相次いでいる。被災された方々にお見舞い申し上げる。夏休みの計画が台無しになった人も少なくないだろう。だが出歩かなくても過ごし方はいろいろある。日ごろ忙しくしている人には、ゆっくりする絶好の機会だ。 不景気で気苦労は絶えないが…

この国は滅びる「最後の賭け」国民を苦しめる独裁者・・・春秋 八葉蓮華

きのうでヒロシマ、ナガサキは終わった、などと思ってはいけない。国際社会の声を聞こえぬかのように2度の核実験をした北朝鮮は、国連安保理の制裁決議があっても、態度を変えない。かの独裁者はいま何を考えているのだろうか。 キヤノングローバル戦略研究…

64年の間「長い時間をかけた人間の経験」未来は先へと逃げるが、過去はいつでも現在に雪崩れ込む・・・春秋 八葉蓮華

14歳のとき学徒動員先の長崎の兵器工場で被爆した作家、林京子さんの小説「長い時間をかけた人間の経験」の中にこうある。「私は被爆者だから、被爆を根にしたシに的を絞って生きてきた」。70歳を間近にこう言う主人公はしかし、愕然(がくぜん)とすること…

余計な出費「ポイント」をため、懐が豊かになった気がしない・・・春秋 八葉蓮華

景気が悪いのに、財布が膨らんで困る。気をつけていないとどんどん分厚くなって、ポケットに入らなくなる。といっても、小遣い銭が増えたわけではない。店で買い物や飲食をするたびに「ポイント」をためるカードをもらうせいだ。 試しに何枚あるか数えてみた…

全国学力テスト「三奪」勉強の場を奪われ、意欲も奪われ、将来の活躍のチャンスも奪われ・・・春秋 八葉蓮華

いまの大分県日田市に江戸時代の末、咸(かん)宜(ぎ)園という私塾があった。モットーは「三奪」といって、入るときに年齢、学歴、身分を奪い取ったという。つまり徹底した機会均等主義だ。そのかわり競争は厳しく、能力だけがモノをいった。 現代の公教育…

飛び出した恐怖「パンドラの箱」未来を失いかねない危機は差し迫っている・・・春秋 八葉蓮華

物理学者の中谷宇吉郎に「原子爆弾雑話」なる随筆がある。終戦直後の一文だ。地球の創世以来「堅く物質の窮極(きゅうきょく)の中に秘められていた恐るべき力」を解きはなった愚を彼は嘆く。「開けてはならない函(はこ)の蓋(ふた)を開けてしまったので…

一般市民の感覚を裁判に反映させる「裁判員裁判」実際に市民が判決に参加する・・・春秋 八葉蓮華

有罪が確実視された被告に対し、証拠などを子細に検討した陪審員らが無罪を言い渡す。そんな筋書きの米映画「12人の怒れる男」は、日本の人気作家によるパロディー作を生んだ。「12人の浮かれる男」と「12人の優しい日本人」だ。 筒井康隆作の「浮かれる」は…

水の中「フジヤマの英雄」無我夢中でもなければ、空っぽでもない・・・春秋 八葉蓮華

旧植民地から連れて来られたアメリカ先住民の泳ぎ方が、英国人の度肝を抜いた。1844年にロンドンの競泳大会で起きた“事件”の記録が残っている。両手を交互に動かすクロールは圧倒的に速く、有力選手は皆ごぼう抜きにされた。 泳法に制限がない自由形といえば…

夫人のささやき「女帝」身内の声につい耳を傾けがち・・・春秋 八葉蓮華

「竹久みちさん死去」という小さな記事が先日夕刊に載った。三越の故岡田茂元社長の愛人で社員から「女帝」と恐れられた。三越に輸入商品を不正に仕入れさせて損害を与え、岡田社長の解任に発展するスキャンダルを引き起こした。 事件が表面化したのは27年前…

革命劇から23年「黄色いシャツ」フィリピンは極端な貧富の格差を残したまま・・・春秋 八葉蓮華

独裁者の栄華の跡には、もの悲しい空気が漂っていたのを思い出す。フィリピンのマルコス元大統領夫妻が住んだマラカニアン宮殿だ。あの革命から4年ほど過ぎたころだが、イメルダ夫人のドレスや靴の数々が整然と展示されていた。 権勢をほしいままにした「王…

太宰治の生家「赤い大屋根」撰ばれてあることの 恍惚と不安と 二つわれにあり・・・春秋 八葉蓮華

町に近づく列車の窓からも、ひと目でそれと分かる赤い大屋根。青森県金木(かなぎ)に残る作家、太宰治の生家だ。10年余り前から公開され老若男女でにぎわう。道を挟んだ土産物店には、漫画調の肖像をあしらうイカ墨煎餅(せんべい)「生まれて墨ませんべい…