2008-09-01から1ヶ月間の記事一覧

閣僚の辞任を謝罪するはめになるとは・・・春秋 八葉蓮華

国会演説の模範を戦前にまで探しにいくと、「憂国の熱弁満場を圧す」「高調に達した衆院論戦」と見出しが躍る記事があった。1936年5月8日付、民政党の衆院議員、斎藤隆夫の演説を報じた本紙の前身「中外商業新報」である。▼2・26事件直後だ。「粛軍演説」と…

人の心はもともと雑多・・・春秋 八葉蓮華

東京・隅田川の東岸に広がる向島は路地の街だ。同じような家。同じような植木鉢。「しかしよく見るとそれは決して同じ路地ではない」。永井荷風が随筆「寺じまの記」で描いたように、細部に息づく生活感が路地の魅力をつくる。▼そんな向島がいま、若い創作家…

強権的な改革論者はだれなのだろう・・・春秋 八葉蓮華

日曜の朝である。歴史に思いをはせたい。自民党総裁選挙に勝った麻生太郎氏が首相に選ばれたのは、つい4日前の24日だが、131年前の同じ日、それと深くかかわる出来事があった。鹿児島の城山での西郷隆盛の自決である。▼「雨は降る降る、人馬はぬれる、越すに…

新しい酒は新しい革袋に盛りなさい・・・春秋 八葉蓮華

小泉元首相の今期限りの引退について麻生首相は「(驚きは)全然」と即座に答えた。構造改革修正に走る新政権には“過去の人”といいたげで、後継の次男進次郎氏を「お父さんと違ってふつうの人、きわめて有能よ」と痛烈だった。▼小泉元首相は、車の窓を開け「…

地球温暖化はすでに気象に変調・・・春秋 八葉蓮華

天気にはクセといっていいものがあって、特定の気象現象たとえば「小春日和」とか「寒の戻り」とか「木枯らし」とかが訪れやすい特異な日が観測記録を調べると、ある。それでいくときょうは大型台風が上陸しやすい日のようだ。▼日本気象協会が出版した「続・…

生きとし生けるこころはげまむ・・・春秋 八葉蓮華

2人はともに福岡にゆかりがある。1人は身を引き、もう1人は立った。今季でユニホームを脱ぐ決意をした福岡ソフトバンクホークスの王貞治監督と、きのう首相に選出された麻生太郎氏と。大仕事の終着点と出発点が交錯する2人は、68歳の同い年だ。▼王さんがプロ…

ニッポニア・ニッポン・・・春秋 八葉蓮華

上越新幹線の愛称にもなっているのに、その鳥が大空を飛ぶのを見た人はほとんどいない。トキのことだ。昭和30年代に在来線特急にこの名が付けられたとき、もう幻に近かったという。復活への願いをこめた命名だったに違いない。▼それも見果てぬ夢に終わり、5…

流れ星のごとくその座を去るのか・・・春秋 八葉蓮華

失礼ながら際物出版の印象がある麻生太郎氏の著書「とてつもない日本」を急ぎ買い求め読んだ。昨年6月に発行したところ首相が突然辞任して「有力後継候補が政見を披露した本」に思いがけずなった結果、増刷を重ねた新書である。▼政権投げ出しが、あろうこと…

行列の先に待つ物は・・・春秋 八葉蓮華

百貨店や老舗の洋品店などが並ぶ東京・銀座通りに行列ができている。先々週の末に開業した外資系の洋服店に入ろうとする人々だ。待ち時間は平日午後でも1時間半。大学生くらいの若者や、赤ん坊を抱いた若夫婦などが西日のさす路上に辛抱強くたたずむ。▼銀座…

不正を図る卑しい心根・・・春秋 八葉蓮華

将棋の谷川浩司9段が若き日に敬愛する大棋士、升田幸三と食事をした。その席で「谷川の将棋は全部見ている」と言われたという。史上最年少の21歳で名人になった才能あふれる青年は、升田が注目してくれることが大変うれしかったと振り返っている。▼「どれだ…

コーネリウス・バンダー・スター・ボンサイ館・・・春秋 八葉蓮華

ニューヨーク郊外に隠れた観光名所がある。ブルックリン植物園内の「CVスター・ボンサイ館」。居住まいを正すような風情で日本の盆栽が並ぶ。広く静かな空間に足を踏み入れると、優しさと緊張が交じった神秘的な心持ちになる。▼観光案内によれば、穴場のデ…

雷鳴を聞いたら逃げ出すしかない・・・春秋 八葉蓮華

雷鳴がとどろき稲光が走る空に凧(たこ)を上げ、凧糸に伝わる電気を感じ取って雷の正体を突き止めた――。米国のベンジャミン・フランクリンが1752年に敢行した命がけの実験は広く知られている。彼はそれをもとに避雷針を発明した。▼大昔から、人類はこの天変…

アフガニスタンの人々を置き去り・・・春秋 八葉蓮華

イスラム教の国々は今ラマダンで、日中は食べ物や飲み物を口にできない。このムスリムの苦行は、1年が354日で終わるイスラム暦に従ってするから、年々季節がずれていく。ここ数年は辛(つら)さもひとしおの「暑いラマダン」だ。▼ラマダン中は異教徒も飲ん…

「バブル崩壊」リーマン破綻・・・春秋 八葉蓮華

地獄に下りてきた1本の糸。天上へと続く救いの道は、銀色に輝く蜘蛛(くも)の糸だった。芥川龍之介の短編小説「蜘蛛の糸」では、その糸が途中で切れ、主人公は再び地獄に転落する。窮地にあって、外の助けを借りて救済されるか否か、の分かれ目は何だろう…

「農政を司る人」畜産、漁業、農業の実習・体験・・・春秋 八葉蓮華

秀峰岩木山のふもと、弘前市の木村秋則さんのリンゴ園は、たわわに実った早生種の「つがる」の収穫にてんやわんやである。「いやー、(リンゴが)成って成って」と小躍りする。無肥料・無農薬のリンゴ園をさわやかな秋の風が渡る。▼その足元のふかふかした土…

月見はやはり十五夜に限る・・・春秋 八葉蓮華

月の満ち欠けは連続した変化なので、完全な満月「望(ぼう)」は、ある瞬間に現れ過ぎ去る。今日は月を愛(め)でる中秋の旧暦8月15日なのに、残念ながらその瞬間は訪れない。月が「望」になるのは明晩の6時13分と理科年表に書いてある。▼旧暦の各月は完全な…

相撲はすっかり衰え・・・春秋 八葉蓮華

尚武館とか武育館とか、議論百出で迷走したらしい。1909年、東京に初めて常設の相撲場ができたときの話だ。名称がようやく国技館に決まったのは開館式の数日前。角界のご意見番だった板垣退助は後々まで不満を漏らしていた。▼風見明著「相撲、国技となる」に…

抽象的な言葉で体面を繕う・・・春秋 八葉蓮華

名刺に刷られた肩書の意味が分からず、戸惑うことがある。少し前までは銀行の「調査役」が代表格だった。駆け出し記者のころ、何を調査しているのかと質問して恥をかいた経験がある。「部付部長」や「担当部長」にも悩まされた。▼そんな謎の肩書から産業構造…

日米のバブルの教訓・・・春秋 八葉蓮華

低金利の期間が長すぎた、などと手厳しく批判されているのが、グリーンスパン前米連邦準備理事会(FRB)議長。在任中は「巨匠」ともたたえられたが、住宅バブル崩壊で揺れる米国では、今や、いけにえのヤギの印象だ。▼そんな批判をどんな思いで聞いていた…

「黄変米」汚れたコメ・・・春秋 八葉蓮華

先年亡くなった石垣りんさんが「日記より」という詩を残している。1954年7月の出来事を綴(つづ)った作品だ。「その日私たちは黄変米配給決定のことを知り/その日結核患者の都庁坐り込みを知る」。はて、この黄変米とは何だろう。▼年配の方はご記憶かもし…

5節句のひとつ「重陽」・・・春秋 八葉蓮華

北京五輪が始まったのは8月8日。中国では八の重なりが縁起がいいからだが、きょうは九が重なる。こちらも縁起がいい。陰暦のこの日は5節句のひとつ「重陽」だ。易学で奇数は「陽」の数とされ、能動的な性質を表すのだという。▼だからなのか、9月の奇数日に…

熱くなって否定する師弟の姿・・・春秋 八葉蓮華

俳句の世界では、ただ「涼し」というと、夏のことを指す。炎暑の夏、路地を渡るそよ風や風鈴の音、あるいはささやかな木陰に、涼を感じ取るのが、日本的季節感なのかもしれない。秋になってめっきり涼しくなると、それを夏の涼と区別して新涼と呼ぶ。▼「新涼…

「皆既日食」真昼の暗闇が続く・・・春秋 八葉蓮華

来年の7月22日は歴史的な日付となる。世界が日本に目を凝らすことだろう。といっても、総裁選だ総選挙だという下界の話ではない。今世紀で最大の皆既日食である。鹿児島県のトカラ列島(十島(としま)村)で、それを観測できるのだ。▼太陽は東京や大阪でも7…

「変革を!」の叫びを聞きながら・・・春秋 八葉蓮華

岩倉具視を頭に木戸孝允、大久保利通、伊藤博文らそうそうたるメンバーで世界を回った岩倉使節団は、アメリカで見聞した女性の地位、姿がお気に召さなかったようだ。「米欧回覧実記」にこう書かれている。明治5年のことである。▼「男女の義務は、自(おのず…

東洋のヘンな国ニッポン・・・春秋 八葉蓮華

日本事情に詳しく、いくつかの社会派作品もある外国人ドキュメンタリー映像作家が嘆く。日本の政治や社会問題を深くえぐるような作品をつくり、世界の人に見てもらいたい。しかし本国のテレビ局などから求められるのは面白おかしい話ばかりなんだ、と。▼彼個…

犯罪の域にまできた不祥事が続き・・・春秋 八葉蓮華

英語で暗殺者を表すアサシンはイスラム教ニザール派の欧州での呼び名に由来するそうだ。900年ほど前に、現在のイラン、シリア辺りに興ったこのシーア派の一分派は特異な教団組織をつくって、敵対するスンニ派やキリスト教徒を殺害した凶行で知られる。▼何が…

すぐこわれてダメになるもの・・・春秋 八葉蓮華

「行蔵(こうぞう)は我に存す、毀誉(きよ)は他人の主張」。福田康夫首相が座右の銘とする勝海舟の言葉だ。行蔵とは出処進退の意で、世の称賛も悪口も我関せず、信ずる道を進むという意味合いになる。唐突な辞任を批判されても、我関せずだろうか。▼信念に…

「すごい純粋さ」途中で息が切れて・・・春秋 八葉蓮華

「腹黒くないからこそ政治家として人気が出ないのかも」。北京五輪の柔道で金メダルを取った石井慧選手は、福田首相をそう評していた。「すごい純粋さが伝わってきました」。身体で感じ取った人物像は正しかったのかもしれない。▼石井選手は柔道の王道をゆく…

北京パラリンピック・・・春秋 八葉蓮華

北京の街に世界から一流の運動選手が集い、技を競う。そんなスポーツの季節も前半戦が終わり暫(しば)しの小休止。6日には後半戦、パラリンピックの幕が開く。障害者スポーツの夏季大会は今年で13回目。日本からも160人余の選手が17競技に参加する。▼パラリ…