2009-05-01から1ヶ月間の記事一覧

大学の大衆化、カレッジソング自体が歴史になってしまった・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

蔦(つた)のからまるチャペルで……。これだけでもう、ある年齢以上の方々は、ハミングが始まってしまったのではないか。ペギー葉山さんのヒット曲「学生時代」だ。この春、東京・渋谷の青山学院大学の構内に歌詞を刻んだ碑ができた。 歌ったペギーさんは青山…

一門の伝統「背中を見て育つ」いつの間にか身についている・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

目の前のテーブルにふきんがのっている。と、知らず知らず手が出てふきんをとり、あたりを拭(ふ)き始める。人に言われて初めてそんな癖に気がついたと、落語家の柳家小三治さんが自身を主人公にしたドキュメンタリー映画で話していた。 この癖、実は一門の…

見る目は一変「空気」自己改革を怠れば、苦しむのが当然・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

日米貿易摩擦が激しかったクリントン政権時代、ワシントンの政府職員は自家用の車を選ぶのに苦心していた。拳を上げて日本叩(たた)きをする立場で、日本車を乗り回していては格好がつかないからだ。役所の駐車場は米国車ばかりだった。 当時の橋本龍太郎通…

「衆院選の足音」この国の姿をもう少ししっかり描き合ってくれないと困る・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

平年より気温が高め、と聞いてももう驚かないが、あちらこちらに影響は出ている。ことしはホタルの見ごろが早まりそうだというのもその一つ。気象庁によれば、発光しながら飛ぶのを初めて観測した日が、例えば京都では平年より19日も早かったそうだ。 きのう…

ご用心。ほろ酔い程度が身のため財布のため・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

若山牧水によく知られた歌がある。「かんがへて飲みはじめたる一合の二合の酒の夏のゆふぐれ」。暮れそうでなかなか暮れない今ごろの季節の情景だろう。何ごとかにとりとめもなく思いを巡らせ、ゆったりと味わう独酌に違いない。 牧水はたしかに1人で飲むの…

「核廃絶を目指す世界」人々を不安に陥れ、不敵にほくそ笑む蛮行・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

地の揺れはナマズが引き起こすという迷信は江戸時代に大いに流布し、その様子を描いた錦絵がまた風説をあおったようだ。とりわけ、安政年間に江戸の町を襲った大地震の後には何百種もの「鯰(なまず)絵(え)」が世に出てブームを呼んだという。 不(ふ)埒…

「日本人のマスク信奉」マスクをめぐる世界の常識の違い・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

赤信号で停車すると、隣の車の人がギョッとした表情を見せたことがある。地下鉄で周りの乗客から警戒の視線を浴びたこともある。いずれも米欧の都市での自分の経験だ。東洋人が珍しいわけではない。マスクが異様に見えたらしい。 こちらは花粉の季節になると…

「誰も恨みに思うな。運命だ」風に吹き上げられ、頂点を極め・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

70歳を過ぎ初めての海外旅行で韓国の地を踏んだ知人女性がいる。ヨン様ドラマの撮影地巡りが目的だったが、帰国したらすっかり韓国人のファンになっていた。「日本よりずっと年寄りに親切にしてくれる」気質に感激したという。 たとえ年長者でも、韓国では過…

不正にかかわる通販会社、あぐらをかいてきた郵便局、・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

通信販売は日本では明治時代に始まった。J・フロントリテイリング傘下の松坂屋は早くからこの新商法を実践した企業の一つだ。呉服販売業だったときに、人気の和服や最新のデザインを紹介する「衣(きもの)道楽」という宣伝誌を創刊した。 注文の受け付けに…

生涯に及ぶ守秘義務「ここだけの話」評議の場でどんな議論を重ね・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

「この秘密は墓場まで持っていく」。小説やドラマにはこんなセリフがよく出てくるが、実際にはそうそうできることではない。知れば口に出したくなるのが凡人の悲しさ。サラリーマンの集う酒場など「ここだけの話」の披露会場だ。 きのう動き出した裁判員制度…

今どき、高い熱をおして会社に出るサラリーマンは少ない・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

戦前、海軍の軍人、小笠原長生が東宮御学問所の幹事をしていた時のことである。風邪を引いて高熱が出ているのに出勤した。総裁だった東郷平八郎がこれを見とがめて「無理は卑怯(ひきょう)者のやることです」とたしなめて休ませたという。 東郷は日露戦争の…

個性的な古着店「区役所でファッション展」年代別の流行を実物の服・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

「これって、うちらの服と同じ!」。マネキンの装いを見て10代とおぼしき若い女性の2人連れが声をあげた。東京都の杉並区役所で現在、古着のファッション展が開かれている。今に通じるもの。違うもの。おしゃれ好きな若者たちが興味深そうに見て回る。 1920…

「あと一歩の階段」小沢さんでは戦えぬ選挙の指揮を小沢さんがとる・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

原爆歌人として知られる長崎県出身の竹山広さん(89)には、政治や政治家をユーモラスに詠んだ歌がある。「鈴木善幸といふ名を妻が思ひ出しくれて眠りの安らかにくる」。歴代首相に連なるゼンコーさんの存在感をずばり言い当てたようで、何ともおかしい。 そ…

「海図なき航海」世界的にも未経験の領域へ踏み込んで・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

東京・神田のうなぎ屋で、日本銀行総裁の速水優氏は親しい経済人に打ち明けた。「もう辞めたい。宮沢さん(喜一氏、当時財務相)に言った」。金融緩和が不十分だと政界から批判されていた8年前の春。氏が最も苦しかったころだ。 するとそこに宮沢氏から電話…

民主党代表選、岡田克也氏 鳩山由紀夫氏に敗れた・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

30年以上も前の話である。東大法学部に山登りのグループがあった。頂上を目指す途中に休憩時間がある。いま某省の局長になったA君は仲間とお菓子を交換し、雑談して過ごした。独り離れ、遠くを眺めるB君がいつも視野に入る。 「孤高の人だな」と思った。孤…

エコポイント制度「反射してください」何に交換できるかも決まっていない・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

映画監督の溝口健二が俳優に気に入った演技を求める決めぜりふは有名だった。「反射してください」。その一点張りで役者さんを悩ませた。香川京子さんは今年3月の「私の履歴書」に「死にたくなるほど苦しんだ」と書いている。 最近、「反射してください」の…

意志に満ちた書き手たち「表現の自由」日本文学の新たな可能性・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

映画「三丁目の夕日」で、小説家を目指す茶川青年はいつも頭をかきむしっている。紡ぎ出したいのはいわゆる純文学のようだ。書いては破り天井を仰ぎ、またペンを執る。そんな懊悩(おうのう)ぶりは純文学作家のイメージそのものなのだろう。 日本人が母語を…

「お天道さんは見てござる」道徳教育の大切さなどを説いてきた・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

シニア世代も恋愛願望というものはなかなか捨てがたいようだ。のんびり名所旧跡を巡ったり陶芸や蕎麦(そば)打ちを楽しんだり。そんな老後もいいが、ちょっと冒険をしてみたくなるのは人の情けだろう。「老いらくの恋」なる言葉もある。 あるコンサルティン…

市民でつくる検察審査会、地検特捜部の看板も傷ついてしまう・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

その振る舞いも胸のうちもこれほど分かりにくい政治家はいないという。民主党代表を辞める小沢一郎氏だ。ふだんから隠密行動に徹し、次に何をやり出すのか予測不能。辞任の記者会見も案の定、スッキリした中身とは言えなかった。 正体が分からず隠密ぶりが際…

より良い明日のために「自己改革」時代の歯車に逆らえない・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

舞踏会が終わると、公爵は1人ふらりと小道に歩き出す。その後ろを野良猫がうろつく場面で映画は幕となる。名優バート・ランカスターの背中には、ひとつの時代が終わる荘厳さが漂っていた。ヴィスコンティ監督の「山猫」である。 政治体制の転換に揺れる19世…

野鳥の自活を妨げる「愛鳥週間」野鳥へのエサやりは控えましょう・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

休日に多摩川べりを散歩する。東京湾の河口から40キロメートルあまりで野鳥を目にする。トビが舞い、サギやカワウ、ハクセキレイなどが羽を休めている。まれに美しいカワセミが支流で小魚を取っているのを見ると得をした気分になる。 鳥は自由でいいとうらや…

新型インフルエンザ「未経験の危機」過剰な楽観と、過剰な恐れ・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

新型インフルエンザの感染者が国内で初めて確認された。国際交流のためカナダを訪れた高校生と先生。多感な年齢に生の異文化に触れる。有意義だった旅の思わぬ結末をさぞ悔しく感じていることと思う。心からお見舞いを申し上げる。 そのうえで、やや気になる…

メドベージェフ大統領のブログ、プーチン首相の訪日・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

「何を書いても、なんのおとがめもないのかな」「ブログの世界では法律は通用しないよ」「でも、ここに書いている人はみな法の下で暮らしている」「やっぱり、ここには書き込みしないほうが…」。最初こわごわと。次第に大胆に。 ロシアでは最近、一般のブロ…

「夢のような幸福のくに」何でも売っている百貨店が夢を売れなくなった・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

1個100円ナリの「鮭(さけ)とタケノコの煮付け」などという缶詰もあれば、人間国宝の手になる十数万円の備前焼のおちょこもある。宝石もある。カツラもある。扇子も文鎮もある。全館で在庫品を大売り出しした三越池袋店の閉店セールだ。 百貨店とはよく名付…

姿が見えない敵におびえるあまり、人の心の垣根を高くする・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

エンジンをかけると、巨大な車体がピョコンと跳ね上がる。粋な格好のお兄さんたちが飛び乗り、爆音をとどろかせて街を走り回る。そんな愉快な改造車をご存じだろうか。発祥の地は米国の西海岸。マニアは「ローライダー」と呼ぶ。 車高が上下するのは、油圧ポ…

「暴力に屈せぬ大切さ」テロの凶刃はいとも簡単に言論を封殺する・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

元毎日新聞カメラマン長尾靖さんの名前は知らなくても、先日の死亡記事に添えられた写真を見覚えていた人は多いだろう。1960年10月12日、東京・日比谷公会堂で演説中の浅沼稲次郎社会党委員長が17歳の右翼少年に刺殺された事件を撮ったものだ。 委員長は少年…

風薫る季節「みどりの日」風を浴び、ざわめく緑がまぶしい・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

1年に15日ある国民の祝日のうち、最も地味なのが「みどりの日」ではないか。1989年に昭和が終わり、天皇誕生日だった4月29日はみどりの日に。「みどりの日昭和一桁(ひとけた)老いにけり」(稲畑広太郎)。当時の感慨が伝わる。 2年前から、その日は「昭和…

「安カワ」服として人気、米欧ファストファッションが続々進出・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

東京・原宿といえばファッションの町。先月末、大通りに面し、米国西海岸からカジュアル服の世界チェーンが上陸した。消費不振の声がウソのような行列ができ、若者でにぎわう。百貨店やスーパーの不調ぶりとあまりにも好対照だ。 服、靴、バッグまで全身そろ…

創るモノは夜空にきらめく星の数ほど無限にある・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

「原型師」と呼ばれる、ちょっと変わった職業がある。大量生産するミニチュア模型の型を粘土や樹脂で作る造形作家だ。彫刻刀を巧みに操り、手のひらに乗る精密な立体を削り出す。その繊細な仕事から、現代の仏師にも例えられる。 上野の東京国立博物館で開い…

「プロシューマー」ものづくりなどの過程にも参加する生産消費者・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

イタシャがちょっとしたブームだという。イタリア車のことではなく、漢字で書けば痛車となる。アニメなどの登場人物を描いたクルマを指す。持ち主は男性、絵は女性という組み合わせが多く、門外漢の目にはいささか痛々しい、という辺りが語源だという。 高級…