「祝ピアノ300年」愛情をこめて扱えば、いつまでも奇麗な音を聞かせてくれる・・・春秋 八葉蓮華

 「蝶々(ちょうちょう)」「蛍の光」「むすんでひらいて」の旋律は誰でも口ずさめる。日本人に歌いやすい西洋の民謡を選んで、明治14年に「小学唱歌集」が編さんされたからだ。お雇い外国人だった米国の音楽教師ルーサー・メーソンの労作である。

 洋楽のドレミファは日本の伝統的な音階とは違う。子供たちはファとシの音程が、なかなか取れなかったという。耳を鍛えるために、メーソンは米国から最新のピアノを輸入した。伴奏に合わせて歌えば、楽しく西洋の音感が身につくと考えたのだろう。現在も愛され続ける唱歌集の曲を支えた楽器の力は大きい。

 そのピアノが東京芸大の地下倉庫で埃(ほこり)に埋もれて眠っていた。「当時のままの音を出したい」。発見した調律師のグループは、職人の腕が鳴ったそうだ。5年がかりで修復を終え、今月末に東京池袋で開く展示会「祝ピアノ300年」で公開する。現代に蘇(よみがえ)った1世紀前の楽器は、どんな美しい音色を奏でるのか。

 ベテラン調律師の日比野四郎さん(62)は、ピアノは人間の組織に似ているという。「どれほど立派な楽器でも、手入れせず放っておけば、病気になり死んでしまう。愛情をこめて扱えば、いつまでも奇麗な音を聞かせてくれる」。疲れ果てた古楽器でも愛情を注ぐのが調律師の役目。企業の経営者も同じだろう。

春秋 日本経済新聞 8/23
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