全国学力テスト「三奪」勉強の場を奪われ、意欲も奪われ、将来の活躍のチャンスも奪われ・・・春秋 八葉蓮華

 いまの大分県日田市に江戸時代の末、咸(かん)宜(ぎ)園という私塾があった。モットーは「三奪」といって、入るときに年齢、学歴、身分を奪い取ったという。つまり徹底した機会均等主義だ。そのかわり競争は厳しく、能力だけがモノをいった。

 現代の公教育も機会均等が大切な理念だ。ならば家庭のふところ具合など真っ先に「奪」が必要なはずだが、実際には違う。文部科学省の調査では、全国学力テストを受けた小学校6年生の成績は保護者の年収によって驚くほどの格差をみせている。所得が高いほど点数が良く、正答率には20ポイントほどの開きが出た。

 学校外の教育にどれだけお金をかけるかが、成績格差の大きな背景に違いない。調査では、学習塾や通信添削への支出が多い家庭の子どもほど正答率が高いことも分かった。こういう成績はのちの進学や就職にまで影響していく。親の所得で子の人生が左右され、企業だって有為の若者をつかみ損ねることになる。

 このままでは公教育の看板が泣こう。余計なお金をかけなくても、まず学校だけでしっかり学べるように授業の中身と環境を整えなくてはなるまい。家が豊かではないから勉強の場を奪われ、意欲も奪われ、将来の活躍のチャンスも奪われる。こんな「三奪」をはびこらせていては、面白い世の中はやって来ない。

春秋 日本経済新聞 8/7
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