2009-10-01から1ヶ月間の記事一覧

笑点の司会を23年「想像力の対話」が成り立たなくなっていく時代・・・春秋 八葉蓮華

「小股(こまた)の切れ上がった女」と聞く。それだけで、それぞれが自分好みの女性を想像する。丸顔好きなら丸顔、やせ好みならその体形を。昭和の後半は、落語家と観客の間でそんな「想像力の対話」が成り立たなくなっていく時代だった。 おととい76歳でシ…

魅力を伝える美術館、太陽の輝きから蝋燭の明かりまで自在に再現する・・・春秋 八葉蓮華

その部屋に足を踏み入れた瞬間、生き物の気配を感じた。薄暗い空間のそこここに、息を潜めて辺りを窺(うかが)う何者かがいた。改装を終えて開館した東京・南青山の根津美術館である。新しい展示室で、太古の美術品が目を覚ましつつある。 紀元前の古代中国…

活字離れの読書週間「キンドル」電子書籍端末は読書のありようを変えるだろうか・・・春秋 八葉蓮華

その世界ではありとあらゆる書物が禁じられていた。詩集も経済学の本も歴史書も、そして聖書さえも。消防士は禁制品を見つけ次第、火炎放射器で本の山を焼き尽くすのだ。レイ・ブラッドベリの近未来小説「華氏451度」である。 読書週間に合わせ、今年も東京…

新人はイロハを学ぶ研修が最優先「小学五年生」「六年生」が休刊・・・春秋 八葉蓮華

これも時代の流れだろうか。87年の伝統を持つ小学館の学年別学習誌「小学五年生」「六年生」が休刊することになった。今や小さな読者もゲームにアニメにスポーツにと興味は様々。昔ながらの中身がニーズに合わなくなったという。 たしかに子どもだってやりた…

政権交代「無血の平成維新」日本もようやく民主主義の国に・・・春秋 八葉蓮華

この人も明治維新を思い浮かべ、救国の念から行動を決意したという。1961年、軍事クーデターで政権を奪取した韓国の朴正熙元大統領である。18年間も政権の座をシ守したが、最期は側近の凶弾に倒れた。昨日が三十周忌だった。 韓国の発展に最も貢献した大統領…

民間の熱意がこもる「アニメの殿堂」協力して保管し後世に伝える・・・春秋 八葉蓮華

今週末、東京の御茶ノ水に漫画とサブカルチャーの専門図書館が誕生する。名前は米沢嘉博記念図書館。3年前に53歳で亡くなった漫画評論家、米沢氏の蔵書14万冊を収蔵する。母校である明治大学の施設だが、一般の人も利用できる。 米沢氏は毎回55万人を集める…

東京モーターショー、オートバイを乗るには少々の覚悟と「攻め」の姿勢が要る・・・春秋 八葉蓮華

東大教授で作家、詩人でもある松浦寿輝さんが愛用のオートバイを盗まれたのは46歳のときだ。四輪車に乗り換えて書いた。「たしかに快適だし、ずっと安全性も高いけれど、しかしそのぶん、生きるうえでの態度としてはどこか守りの姿勢に入ることになる」 日本…

危機が近づくにつれて人は冗舌になり、ついには語る言葉が尽きるらしい・・・春秋 八葉蓮華

パット・ボローニャ氏は、ウォール街でよく知られた靴磨き屋だった。証券取引所のそばに陣取って、客から耳よりな情報を仕入れては他の客に助言した。磨き上げるまでの数分のささやきが、微妙な市場の表情の変化を人々に伝えた。 ケネディ大統領の父ジョー・…

そつのない人「金太郎アメ」いつの間にか官僚的な体質に変わり衰運に傾いていく・・・春秋 八葉蓮華

社長のタイプが変わると企業が変わる好例かもしれない。キリンビールのことだ。今年9月までのビール類の出荷量シェアは業界トップで、年間首位奪還を狙う。サントリーとの経営統合を目指すなど、最近の果敢な経営は注目される。 かつては業界のガリバーとい…

能力識見が第一「イミフー」元官僚をかたくなに拒んだ民主党の姿は記憶に新しい・・・春秋 八葉蓮華

「イミフー」と若者がよく口にしている。意味不明のことだが、これにはいろいろな思いがこもっているらしい。実は意味は分かるけれど理解できない、という場合にも使われるのだと北原保雄氏監修の「みんなで国語辞典!」にある。 日本郵政の新しい社長に元大…

「生誕100年」女優はいつも世の中の先端を歩かなくてはならない宿命も背負わされている・・・春秋 八葉蓮華

60年前のきょう10月21日、日本映画界を代表する女優、田中絹代が芸術親善使節としてアメリカへ飛び立った。まだ戦後4年だ。興行もこなし、ハワイやハリウッドを3カ月回って帰国した彼女を迎えたのは、しかし、冷笑の嵐だった。 「宮本武蔵」のお通のイメー…

疫病が故郷を襲ったときの混乱ぶり「デカメロン」副作用に神経質で、大きな壁・・・春秋 八葉蓮華

イタリア・ルネサンスの文学者ボッカチオは小説「デカメロン」のなかで、1348年に疫病が故郷を襲ったときの混乱ぶりを書いている。「黒シ病」と恐れられたペストだった。難を逃れようと必死の市民の様子を次のように描いた。 「病人のいない家や安んじて暮ら…

共働き夫婦が口にする「待機ストレス」予算を膨らませるだけの少子化対策・・・春秋 八葉蓮華

夫が失踪(しっそう)するのが一番の早道だと聞き、思わず隣に立つ顔をチラリと盗み見たそうだ。3歳になる男の子を保育園に入れようと苦労した女性から、そんな告白を聞いた。働く女性の子供を預かる施設が、大都市で決定的に不足している。 地元の保育園を…

イキイキ、あたたか、ギスギス、冷え冷え。突破口は皆が変革への参加意識を共有すること・・・春秋 八葉蓮華

「いい会社をつくりましょう」。そんな社是を掲げた食品会社が長野県の伊那食品工業だ。企業は会社を構成する人々の幸せのためにあるべきだとの趣旨。リストラなし、成果主義なしの終身雇用。午前と午後にはお茶の時間もある。 ただ居心地がいい、というわけ…

福知山線事故の調査をめぐり「JR西日本」鉄道の安心安全にもロマンにもほど遠い・・・春秋 八葉蓮華

東京の地下鉄全線を1日で乗り尽くしたり、JRの鈍行だけを使って24時間のうちに九州の八代まで行き着いたり。エッセイストの酒井順子さんが近著「女流阿房列車」で、こんなマニアックな試みをおかしくもしみじみと描いている。 酔狂といえばそれまでだが、…

国際化してハブ(拠点)空港、戦略を誤った空港行政の厄介なツケ・・・春秋 八葉蓮華

おお、こんなところに身を潜めて……。などとものの哀れを誘うのが羽田空港の国際線ターミナルだ。きらびやかな国内線ビルからしばしバスに揺られ、たどり着く先は小さな2階建ての屋舎。ひなびたローカル空港に来たようである。 ソウルや上海にチャーター便が…

どんな境遇にあっても「生きたい」と思える社会はないものねだりという空気・・・春秋 八葉蓮華

65歳の妻を包丁で刺サツして自首した66歳の夫が逮捕された。妻は5年前、難病に苦しんでいた40歳の長男の人工呼吸器を止めて嘱託サツ人罪に問われ、執行猶予中だった。神奈川県相模原市で先日起きた事件に、言葉を失うばかりである。 長男の病はALS(筋萎…

新聞案内人「あらたにす」多様なテーマ、コラムの新鮮な切り口が楽しい・・・春秋 八葉蓮華

宣伝めいて恐縮だが、朝日、読売、日経3社が共同でつくる「あらたにす」というサイトがある。15人の「新聞案内人」たちのコラムの新鮮な切り口が楽しい。政治、経済だけでなく、スポーツ、文化など多様なテーマで様々な論がある。 今月、ふたりの新聞案内人…

ヒトはいかに変わってきたか「骨」さまざまな時代の人骨が展示されている・・・春秋 八葉蓮華

「ホラホラ、これが僕の骨――/見てゐるのは僕? 可笑(をか)しなことだ」。中原中也の「骨」という詩にこんな一節がある。いやいや、これもこれもみな僕の骨ではないかしら。ずらり並ぶヒトの骨を眺めていて、奇妙な感覚に襲われた。 東京大学総合研究博物…

きらりと光る特色がありさえすればニッチの市場でよみがえってくる・・・春秋 八葉蓮華

クヌギやナラの葉を食べる天蚕(てんさん)は、屋内で飼うカイコと違って、まゆからとる糸が薄緑色で光沢を放つ。「繊維のダイヤモンド」とも呼ばれている。食べ物のせいなのか糸の中に微小な気泡が交じり、それが光に乱反射するのだそうだ。 天蚕は病気にな…

世界を驚かせた受賞「潔い発信力」平和へのメッセージを感じる・・・春秋 八葉蓮華

ノーベル賞ほど秘密に満ちた賞はない。候補者の名も審査の過程も極秘。受賞者への通知は発表当日までない。7年前に化学賞を受けた田中耕一さんは、ストックホルムからの電話に「どっきりカメラかと思った」と本気で驚いていた。 物理学賞と化学賞では学術機…

強い台風が毎年いくつも発生「スーパー台風」地球温暖化が進めば南方の海面温度が上昇・・・春秋 八葉蓮華

晴れ上がった青空と散乱するごみが対照的だった東京。台風で亡くなられた方、けがをされた方、家や農作物などに被害を受けた方々に、まずお悔やみとお見舞いを伝えたい。予報通りなら今朝、台風は北海道の東。道東の方々は十分、気を付けていただきたい。 首…

削れ削れの大号令、家計簿を放り投げ、しゃにむに借金に走る姿は見たくない・・・春秋 八葉蓮華

トイレはなるべく外出先で済ませる。職場では下戸のふりをして酒席の誘いを絶つ――。家計の無駄を削ろうと読者が試した涙ぐましい節約術が本紙に載っていた。外食を減らしたり家族旅行をやめたりする程度では大いに甘いらしい。 鳩山政権の閣僚たちも家計簿と…

ひたすら口をつぐむ「献金問題」真相を洗いざらい打ち明けて・・・春秋 八葉蓮華

ツグミという鳥は、ほとんど鳴かないのだそうだ。秋からはとりわけ無口になるらしい。ひたすら口をつぐむ鳥だから付いた名がツグミ、と物の本にある。ひょっとしたら、今をときめく官邸のハトもそれをまねているのかもしれない。 鳩山首相の政治資金管理団体…

非常識な企業風土がいったん出来上がると、常識を捨てないと偉くなれない・・・春秋 八葉蓮華

JR福知山線事故の報告書漏洩(ろうえい)問題について事実関係などを調べる、JR西日本の第三者によるコンプライアンス特別委員会が動き出した。ぜひ究明してほしいのは、山崎正夫前社長らトップが、なぜ不正を働いたのかという点である。 山崎前社長は、…

「鞆の浦」知恵とやる気があれば、景観と生活は、決して対立するものではない・・・春秋 八葉蓮華

ギリシャにミコノスという人気の観光地がある。エーゲ海に臨む港町で、漁船や沖合の島々も美しいが、肝は肩寄せるように建つ古い家だ。白壁と青い窓枠が陽光に映え、クルマの入らぬ路地は歩いて楽しい。バスには町外れから乗る。 白と黒。壁や屋根の色こそ正…

「世紀の祭典」アジアの北京、欧州のロンドンに続くのが南米初の五輪リオデジャネイロ・・・春秋 八葉蓮華

狐狸庵先生こと遠藤周作は、背泳ぎの様子を「選手はスタート台に立った、うしろむきに飛びこんだ」と書いた。かくもスポーツ知らずだった先生でさえ筆をとり、「戦争中の報道班員のようにみんなが駆りだされていく」と述懐した。 作家や詩人40人の観戦記や随…

委託販売なる仕組みが続いてきた「読書の秋」責任販売制を使って本を出す実験・・・春秋 八葉蓮華

「商いの切っ先がなまる」。そんなせりふが落語「明烏(あけがらす)」にある。大店(おおだな)の主が堅物の息子に向かって「どこのお茶屋はどういう格だぐらいのことを覚えてもらわないと、いざというとき商いの切っ先がなまっていけません」。先代桂文楽…

日本最古とみられる旧石器、信頼がすっかり揺らいだ旧石器研究の再出発・・・春秋 八葉蓮華

縄文の昔よりはるか昔、まだ土器を持たない旧石器文化が日本列島にもあったことを突き止めたのは在野の研究者、相沢忠洋だ。行商のかたわら、群馬県・赤城山のふもとを踏査していた彼は台風一過のある日、大きな手掛かりを得る。 崩れ落ちた赤土、つまり数万…

肝を冷やす言葉遊び、言葉を使うときは自分が選んだ意味だけで使うんだ・・・春秋 八葉蓮華

卵のような姿のハンプティ・ダンプティが、得意げに講釈を始める。言葉ってやつは素直に言うことを聞かない。しっかり仕事をさせるときは、超過勤務手当を払うんだよ――。ルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」の一場面である。 数学者でパズル好きのキャロル…