2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

風雅に響く「日本再発見塾」日本を元気にしようとする試み・・・春秋 八葉蓮華

「武蔵」「大和」といえば、戦艦を連想する人が多いだろうが、明治初期まで使われた旧国名である。多くが現在の県名よりも風雅に響く。異論もあろうが、例えば千葉よりも「安房」、福井よりも「若狭」がずっとゆかしく、美しい。 なかでも「美作(みまさか)…

人々の工夫で最期の一花、解体を待つ建物ならではの現代アートの催し・・・春秋 八葉蓮華

東京・港区のフランス大使館で、ちょっと変わった現代アートの展示会が始まった。今月初めまで実際に大使館として使っていた1950年代の建物を丸ごと転用。室内や壁を約70組のアーティストが思い思いの作品で飾っているのだ。 絵あり映像あり立体作品あり。階…

世界中にあふれたマネーが暴れる外国為替市場は、現代の戦場・・・春秋 八葉蓮華

秋空のどこからか、1匹のトンボが飛んで来る。羽を休めようと、ふと選んだ場所が悪かった。武将が立てた槍(やり)の先っぽにとまった途端に、スーッと真っ二つ。戦国時代の三河の名将、本多忠勝が愛用した長槍「蜻蛉切(とんぼきり)」の逸話である。 岡崎…

「事業仕分け」あれこれを引っ張り出し、世の風にさらしただけでも意味はあった・・・春秋 八葉蓮華

科学にめっぽう弱い身としては、ノーベル賞受賞者の業績の話は難物だ。日本人が賞を射止めれば嬉(うれ)しい。快挙を祝いたくなる。しかし「分子の不斉合成」とか「対称性の破れ」などと聞くともうお手上げだ。ただ感心するのみである。 そんな高邁(こうま…

少子高齢化の加速「おひとりさま」シングル族を相手にしたサービス・・・春秋 八葉蓮華

鮨(すし)、そば、天ぷらといえば東京には名店が多いけれど、もともとは江戸庶民のファストフードだった。単身者の多い大都会だから手軽な食べ物が人気で、さっと立ち寄れる屋台が大繁盛したという。いまでいう「おひとりさま」市場だ。 現代ニッポンのおひ…

「事業仕分け」長年にわたって染み付いたものは簡単には落ちない・・・春秋 八葉蓮華

晩秋の空に白や淡いピンクの御影石が映え、「白亜の殿堂」が約70年ぶりに蘇(よみがえ)った。国会議事堂の化粧直しである。首相官邸や中央省庁の建て替えに続く、今回の議事堂。これで「あの話」は消えたと思っていたらどうもそうではない。 首都機能を地方…

自然淘汰「種の起源」隔絶した孤島という環境で、独自の姿に進化・・・春秋 八葉蓮華

同じ種でも、少しでも自然環境に適した特徴を持った個体が生存競争を勝ち抜いて子孫を残していく。「自然淘汰」説で進化の謎を解いたダーウィンの「種の起源」が英国で出版されたのが150年前のきょう。彼が50歳のときである。 そのずっと前、20代の5年にわ…

欧州連合(EU)の初代の大統領、欧州理事会で、常任の議長を務める・・・春秋 八葉蓮華

「大統領」という言葉は、いったい誰がつくったのだろう。大工の「棟梁(とうりょう)」から来ているのか、人々のかしらの「頭領」に由来するのか。英語の「プレシデント」を大統領と訳すのは、同じ漢字の文化圏でも日本と朝鮮半島だけらしい。 「大統領」が…

いま起きたこと、いま感じたこと「人のぬくもり」遠からず近からずの関係・・・春秋 八葉蓮華

ビジネス雑誌などで、今年流行した商品を振り返る記事の掲載が始まった。安値、安全、環境など生活防衛色の強い顔ぶれに、ヒットの特徴を示すものとしては珍しい言葉が交じる。「すれ違い」と「つぶやき」は新顔の代表格だろう。 通信機能付き携帯ゲーム機向…

値下げ合戦、果てしない消耗戦「デフレ宣言」明日への希望を持てぬ世の中のなんという・・・春秋 八葉蓮華

あのころの華やぎはどこへ消えたのだろう。フランス産ワインの新酒「ボージョレ・ヌーボー」がすっかり高級感を失い、スーパーには格安品が山積みだ。フルボトルで749円と聞いて店頭をのぞいたら、さすがにこれは完売だった。 値下げ合戦が熱を帯びている。…

「事業の仕分け」枝葉ではなく幹に切り込んだとしても説明を尽くせば・・・春秋 八葉蓮華

縄という道具はなぜか神秘性を帯びている。これを張り巡らせば聖と俗を隔てられると昔の人は信じたのだろう。神社の建物はもちろん海の奇岩にも山峡の滝にも掛かるのが注連縄(しめなわ)だ。巨木にしっかり巻き付けてある光景も珍しくない。 民主党政権は森…

経営者の責任の重さ「優しすぎると、会社が揺らぐ」みんな慌ててしまって・・・春秋 八葉蓮華

経営者の仕事はすさまじいものだと実感する機会が何度かあった。例えば1985年秋からの急激な円高に輸出産業が直撃されたときだ。対応に苦労したキヤノンの賀来龍三郎社長の疲れ切り、すっかり老け込んだ表情が忘れられない。 まだ60歳ぐらいだったと思うが、…

「いい酒は真ん中を通る」右往左往して政権の風味をいささか損ねている・・・春秋 八葉蓮華

太宰治、松本清張、埴谷雄高……。ことしは生誕100年を迎えた作家の当たり年だ。その一人、大岡昇平が「人事酒」という言葉を残している。戦争中、神戸で会社員だったころの体験をもとにした命名だと、丸谷才一さんが山口瞳との対談で披露していた。 「酒を飲…

たった1秒の時間差に天文学的な額、情報管理の厳しさ、その重みをどう考えていたのか・・・春秋 八葉蓮華

用を足すつもりで、うっかり外に出たのが運のつき。必シに弁明しても、二度と部屋に入れてもらえなかった。午前8時30分に迫る秒針を見て、冷や汗が噴き出た。ワシントンで経済指標の速報記事の送信に失敗した苦い思い出がある。 GDPや失業率などの数字は…

人も物も「避けるべき障害」ぶつかることを避けて生きる心の寂しさ・・・春秋 八葉蓮華

東京近郊に住む目の不自由な若い女性会社員が、都心まで一人、電車で通勤していた。大変でしょうと聞かれ「あっちこっちにぶつかりながら歩きますから、なんとか……」とほほ笑んだ。「ぶつかるものがあるとかえって安心」だと。 この問答をテレビで見た詩人の…

たばこの増税「やめようか」値上げすればその背中をポンと押すことになる・・・春秋 八葉蓮華

驚いた。毎日186回もたばこを「やめようか」と考えるというのだから。ポケットから出す。くわえる。火をつける。1本につき3回、1箱で60回思う。さらに店で金を払う時と品物を受け取る時。それを3箱分という計算だそうだ。 劇作家の別役実さんが随筆に書…

平和を静かに語る「君を責めているのではない。事実を知ってほしいだけだ」・・・春秋 八葉蓮華

オバマ米大統領が駆け足でやってきた。日米首脳会談の注目点は、沖縄・普天間基地の移設問題だった。日本国内でただ1県だけ先の大戦で地上戦を経験した沖縄。悲惨な体験は、平和への思いを強め、米軍基地を拒む心情につながる。 沖縄出身でカナダに住む宮平…

日本航空の経営悪化の根っこは政府の過保護のもと、競争を避けてきた・・・春秋 八葉蓮華

東京・代々木公園の片隅に、「日本航空發始(はっし)之地」と刻まれた碑が建っている。ライト兄弟が初めて空を飛んでから7年後の1910年。この地で徳川好敏、日野熊蔵という陸軍大尉が、同じ日にそろって、日本での初飛行に成功した。 徳川大尉が3000メート…

邪馬台国「水行十日陸行一月」纒向遺跡で3世紀前半の遺構らしい大型建物跡・・・春秋 八葉蓮華

新井白石も悩んだ。本居宣長も大いに首をひねった。明治になってからは学者たちの議論が一段とかまびすしく、謎解きに憑(つ)かれた郷土史家や考古学ファンは今も数知れない。女王・卑弥呼が治めたという邪馬台国の所在地論争である。 罪作りなのは古代中国…

目をしっかりと見開いた96年「運は向こうから来るが、目をふさいでいては見損なう」・・・春秋 八葉蓮華

おお、モリシゲが出ている。懐かしい人に出会ったような気がして、そのテレビドラマに見入った覚えがある。6年ほど前のことだ。向田邦子さんの若き日の恋を描いた作品に登場した老優はしみじみと飄々(ひょうひょう)と、物語を引き締めていた。 あれが森繁…

スターリンの亡霊「カティンの森」ベルリンの壁の崩壊から20年、歴史の清算は難しい・・・春秋 八葉蓮華

ロシアでスターリンの孫が新聞社を相手に訴訟を起こした。第2次世界大戦中、捕虜のポーランド人将校がソ連軍に大量虐サツされた「カティンの森」事件。スターリンがサツ害を命じたとの報道で、祖父の名誉が傷つけられたというのだ。 モスクワの裁判所は孫の…

「消費の主役」低価格を基本にしながらも、消費者のニーズを機敏につかむ力がいる・・・春秋 八葉蓮華

三越の源流で江戸の日本橋に1673年開業した呉服店「越後屋」の商法は斬新だった。創業者の三井高利は、客の家へ注文をとりに行き、商品を届ける慣習を破って店頭販売を始めた。人手をかけず経費を節約、他店より安く売った。 あとで代金をもらう掛け売りもや…

自らをただす身慎莫(みじんまく)なくして応援の声は強めようがない・・・春秋 八葉蓮華

みじんまく。漢字で身慎莫と書く。最近はあまり見ないが、身じまいと身支度が混じってできた語ともいう。だから普通は身じまい、身支度の意味で使う。きょうは立冬。全国的に秋晴れの予報だが、さあ、寒さに向けた身慎莫である。 そんな使い方からの連想だろ…

ニッポン人を勇気づける「行ってよかった」渡米から7年間の労苦に咲いた大輪の花・・・春秋 八葉蓮華

ゴジラとモーツァルト。何だか妙な取り合わせだが、ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜選手は小学生のころ、自宅でピアノのレッスンを受けていたという。いつもクラシックを聴いて眠り、今もモーツァルトが大好きなのだそうだ。 鍵盤をたたくよりもバットの…

多様な人材がそれぞれ個性を発揮して光り輝く、一糸乱れず指示に従う組織・・・春秋 八葉蓮華

絶滅が心配される生物が前年より363種増えて、1万7000種あまりに上るそうだ。国際自然保護連合という団体がこのほど発表した2009年版の絶滅危惧種リストが示す。懸念される「生物多様性」の危機は高まる一方である。 しかしアフリカの珍しいカエルがいなく…

庶民の芸術、リサイクル「BORO」不況でも生活を楽しむ人々のたくましさ・・・春秋 八葉蓮華

使い古して役に立たない布。つぎはぎの服。転じて欠点や失敗。「ぼろ」という言葉を辞書で引くと否定的な意味合いの解説が並ぶ。青森県の農家で眠っていた、つぎはぎだらけの「ぼろ着物」を集めた展示会が東京の浅草で始まった。 在野の民俗学者、田中忠三郎…

巨大化「回路」家庭の太陽光発電の電力を買い取る新制度・・・春秋 八葉蓮華

家計に占める光熱費といえばふつうは水道、ガス、電気を指す。蛇口をひねると水が出る。コンロをガス栓につないで鍋を囲む。電源コードを壁に差し込めば、掃除機が動き出す。似たような仕組みの3つだが、電気だけ違う点がある。 見慣れたコンセントを眺めて…

日米とも政策転換「大きな壁のなかの国」ウイグル、チベット・・・春秋 八葉蓮華

小柄で物静かな女性だった。インタビューで「あなたにとって中国とは?」と第1問をぶつけた。「大きな壁のなかの国」と答えた。「壁の外にウイグル、チベットがある」と言葉が続く。だれの発言か、おわかりのひともいるだろう。 「中国に一番憎まれている女…

王者も慢心すれば転落する、一点突破し立場は入れ替わった・・・春秋 八葉蓮華

王者(リーダー)、挑戦者(チャレンジャー)、後追い(フォロワー)、すき間狙い(ニッチャー)――。1つの市場を争う企業を、マーケティング分析でこう分類することがある。王者はトップ企業だ。挑戦者はその座を狙う存在を指す。 王者のものまね品を安く売…