夫人のささやき「女帝」身内の声につい耳を傾けがち・・・春秋 八葉蓮華

 「竹久みちさん死去」という小さな記事が先日夕刊に載った。三越の故岡田茂元社長の愛人で社員から「女帝」と恐れられた。三越に輸入商品を不正に仕入れさせて損害を与え、岡田社長の解任に発展するスキャンダルを引き起こした。

 事件が表面化したのは27年前である。岡田社長の全盛期に三越に取材に行くと、オフィスの壁に社長の写真が掛けてあった。サラリーマン経営者なのに、まるで創業者かオーナーである。そのワンマン社長の権力をかさに着て「女帝」は経営に介入した。「三越」のノレンは金額では計れないほど大きく傷ついた。

 多いのは社長夫人がくちばしを入れるケース。1980年に亡くなった帝人大屋晋三社長とおしどり夫婦ぶりを見せつけた政子夫人に役員や社員はピリピリしていた。「工場や役員の家の家相を見て、『門はこっちに付けた方がいい』などと言う政子さんに合わせるのにみな大変だった」と副社長が話していた。

 夫人のささやきが人事に影響すると思うから怖いのだ。ある機械メーカーの社長が「女房の勘は鋭くてね。出張に連れて行ったら、現地の支店長に会うなり『変な人ね』と言うんだよ。それが当たってるんだ」と話していた。トップは気を許せる身内の声につい耳を傾けがちだが、会社の私物化はそこから始まる。

春秋 日本経済新聞 8/3
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