2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧
「酒悲(しゅひ)」という言葉があるそうだ。中国文学者でもあった作家の高橋和巳が白楽天の詩を引いて、エッセーに書き残している。「酒に悲しみをまぎらそうとし、かえって酒に悲しみを倍加させてしまう」。そんなありさまをいうらしい。 身に覚えのある方…
福岡県が圧倒的な1位。2位は鹿児島、3位は熊本と九州勢が強い。その後はグンと数字が小さくなり、静岡、香川と続く。都道府県別にみた2008年の筍(たけのこ)の生産量である。南国育ちの旬の食材が店頭に並び、遅い春の訪れを告げる。 美食家の北大路魯山…
高校野球部の名女子マネージャー、ミナミちゃん。こう聞いて30代後半から40代くらいの男性が思い浮かべるのは、1980年代の人気漫画「タッチ」の浅倉南だろう。しかし今の若い人たちには「川島みなみ」が浮かぶかもしれない。 川島みなみは青春小説「もし高校…
渋い脇役がにわかに脚光を浴び、客席の目もその挙措にクギ付けになっている。検察審査会をめぐるニュースだ。審査会の議決を受けて「強制起訴」が続いたり、偽装献金事件では鳩山首相が「不起訴相当」になったりと目まぐるしい。 国民から選ばれた11人が、検…
「鼻の穴へ屋形船を蹴(け)込む」だの「けんかを茶漬けにして食う」だのの名台詞(せりふ)もたっぷり。今月限りで取り壊される歌舞伎座にかかっている「助六」は、江戸の男(おとこ)伊達(だて)の横綱格だろう。市川団十郎さんはじめの熱演に胸すく思い…
往来でスーツ姿の若者から突然声をかけられる。あれっと思うと名刺交換を迫られる。こうしたことが最近幾度かあった。おおかた研修の一環だろう。直立で「頑張って100枚集めてまあす」などと叫ぶ。行儀だけはやけによろしい。 が、失礼ながらどこの誰とも知…
ノープロブレム(問題ない)。海外旅行でこの言葉を聞いたら要注意だ。「街を案内しよう。その前に、ウチでメシでも食っていけ。「ノープロブレム」。笑顔でこう言われ、ほいほいついて行くと、最後に法外なカネを要求されたりする。 作家の素樹文生氏が東南…
運河が縦横に流れるサンクトペテルブルクは北のベネチア。坂の多い港町のウラジオストクは、極東のサンフランシスコ。世界の有名観光地になぞらえた場所が旧ソ連に幾つかある。「中央アジアのスイス」と呼ばれるのはキルギスだ。 中国との国境には雄大な天山…
富士山が噴火したら首都東京はどうなるか。パソコンや精密機器が故障し、銀行ATMや地下鉄は動かず、ビルの照明や信号機も消えるかもしれない。火山学が専門の鎌田浩毅京大教授が著書「富士山噴火」(講談社)で予測している。 原因は西風に乗って訪れる火…
「ゲームは、ないと生きていけないわけではない。需要が増え続けるとは限らない」。家庭用ゲーム機の生みの親といわれる任天堂の山内溥相談役は2002年までの社長在任中、こう語っていた。どんなに販売が好調でも冷めていた。 娯楽がなくても生活はできるし、…
その五木村の議会が注目を集めている。4月から10人いる議員に能力給を導入したからだ。月21万円強の報酬の8割を基本給とし、残る2割を成果分とするそうだ。議会での発言や政策の提案、地域での活動を村内の有識者が3段階で年に1回評価する。満額をもら…
ジョン・レノンの名曲「イマジン」は、心にこんなこと、あんなことを思い描いてみよう、と呼びかけて聴き手の胸を打つ。「想像してごらん。みんなが今を生きていると」「想像してごらん。みんなが世界を分け合っていると」……。 世界のどこかが天災に見舞われ…
英国議会の床には、2本の赤い線が引いてある。どんなに議論が熱を帯びても、議員は決して線から足を踏み出してはならない。与野党どちらから剣を伸ばしても、ぎりぎり届かない距離。英国の議会制度の伝統を示す「剣線」である。 扇形に議席が並ぶ日本や米国…
タイはきのうから、ソンクランと呼ばれる伝統的な正月休みに入っている。例年なら、水鉄砲やバケツを手にした若者たちが通行人に水をかける光景を、バンコクのあちこちで見かけるときだ。そのため日本では水掛祭りとも呼ばれる。 水と一緒に白いパウダーをか…
人生の出口でもう一度観(み)てみたい……。映画好きは「ラストムービー」を考える。井上ひさしさんが挙げた一本に、黒澤明監督の「素晴らしき日曜日」があった。饅(まん)頭(じゅう)1個、コーヒー1杯が5円という敗戦直後、35円しかない若い男女のデー…
覚えている方も多いはずだ。普天間基地の全面返還を発表した橋本龍太郎首相は、誇らしげな顔をしていた。モンデール米駐日大使は緊張の面持ちだった。政治の底力を見せつけた夜の緊急記者会見である。明日でちょうど14年になる。 そんな離れ業を本当に実現で…
海外旅行への関心が薄い。そう言われることが多い若者層の一部で今、人気急上昇中の行き先があるという。バングラデシュだ。ある大手旅行会社が昨年春から本格的に取り組みを始め、1年間で400人以上の大学生らを送り出した。 ツアーといっても普通の観光旅…
1年前に米国のオバマ大統領が「核なき世界」を目指すとプラハで宣言したおり、まっ先に思い浮かべた歌があった。「核兵器廃絶を見ずわれはシなむその兆しさへ見るなくてシぬ」。25歳のとき長崎で被爆した歌人の竹山広さんが、80歳を過ぎて詠んだ一首だ。 オ…
その夜、公民館で女性たちに振る舞われたぶどう酒は甘味料入りの「白」だったという。男たちには日本酒だ。1961年という時代を感じさせる場面だが、なごやかな会だったろう。やがて女性ばかりが苦しみだし、5人が亡くなる。 そもそも、ぶどう酒の毒物は何だ…
この季節に沖縄を歩くと、あちこちでのどかなピクニック風景に出くわす。青空の下で重箱のごちそうを広げ泡盛を酌み、三線(さんしん)を弾いて踊る姿も珍しくない。そんな宴を、ご先祖のお墓の前で親戚(しんせき)一同が和気あいあいと繰り広げるのだ。 「…
どんな出来かは最後までわからない。1948年から40年余り日本生命保険の社長、会長を務めた弘世現(ひろせげん)さんは、窯から陶芸作品を取り出すときの緊張感が好きだった。会長になる1年前の81年から、時間を見つけて陶芸教室に通った。 土を注意深く選び…
「東京の三大タワー」という呼び方があるそうだ。一つはご存じ、東京タワー。もう一つは現在建設が進む東京スカイツリー。残る一つの場所は浅草、名を凌雲閣という。ただし実物はすでにない。大正の関東大震災で倒壊したからだ。 三大タワーという呼称を見た…
「教科書なんか無いほうがこっつらええ」。その先生はこう言い放った。ユニークな教育実践で知られた無着成恭(むちゃくせいきょう)さんが、山形県上山市の中学校に新任でやって来たころの話だ。「こっつらええ」。標準語だと「かえっていい」である。 新聞…
往年の歌謡曲や演歌には毎度おなじみの言葉があった。盛り場、通り雨、夜汽車、裏町、波止場……などと書き連ねればキリがない。霧笛というのも大事な小道具だろう。恋も捨てて港町をさすらえば「霧笛が俺を呼んでいる」わけだ。 正式には「霧信号所」というそ…