「地震国」国挙りて男女叫び、唱いてまどいぬ。すなわち山崩れ河湧く・・・春秋 八葉蓮華

 天武天皇の治世、684年に四国の南岸を激しい揺れが襲った。「国挙(こぞ)りて男女叫び、唱(よば)いてまどいぬ。すなわち山崩れ河湧(わ)く」とは日本書紀の生々しい描写だ。列島の太平洋側で繰り返される巨大地震についての最古の記録だという。

 同じ時期には東海地震も起きたようだから、古代の人々の恐怖はどれほどだったろう。歴史をたどれば、その後も100年から150年の周期で発生してきた東海・東南海・南海の災厄だ。ただし20世紀以降、東海だけは一度も起きていない。したがって今後30年以内の発生確率は87%、という深刻な予測がある。

 それだけに、駿河湾震源のきのうの地震は何とも不気味だった。グラリときて明け方の眠りを破られ、速報を聞けば御前崎などで震度6弱。思わず身構えた人もおられよう。規模もメカニズムも違うから東海地震には結びつかないと気象庁は説くが、関連を見極めるべきだという専門家もいて不安はぬぐえない。

 どちらにしても、やがては東海の巨大な揺れにも見舞われると覚悟するしかない地震国である。「国挙りて男女叫び、山崩れ……」。古代から幾度も体験してきたこんな光景を乗り越える知恵と行動を持ちたい。路肩をざっくりと削り取られた東名高速道路の惨状が、一段の備えを促していることだけはたしかだ。

春秋 日本経済新聞 8/12
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