国や自治体、個々人の新型インフルエンザ感染対策に慢心・・・春秋 八葉蓮華

 「冒」という字は、頭巾(ずきん)のたぐいを深くかぶり目だけを出している姿を表しているそうだ。「字統」(白川静著)によると、それがかぶとをつけて進撃する格好にも見え、「無頓着に行動すること」を指した。「冒険」「冒す」の意味もそう聞けばよく分かる。

 17世紀初めのポルトガル人宣教師のための辞書にすでに載っている「感冒」にも、病気の厚かましさが込められたのだろう。かつてインフルエンザを指していた流行性感冒(流感)なる言葉は、意味があいまいで科学的にはもうシ語という。でも、夏に暴れる新型インフルエンザのウイルスは「冒」がお似合いだ。

 舛添厚労相は感染対策に慢心があったと指摘した。これまで患者の症状が比較的軽かったので、春の一時期の厳戒ムードは確かに冷めていた。こちらがかぶとを外していたその間に、3人がシ亡して、プロ野球高校野球、大相撲にも感染が広がった。佳境の選挙戦に影響も出始めている。

 本格的な流行とともに新学期も近づいてきた。学校が始まれば「冒」がさらに勢いづく心配がある。その狼藉(ろうぜき)を抑えこむことは国や自治体に課せられた宿題でもあり、個々人の責任でもある。ちなみに慢心の「慢」には蔑(さげす)みを込めて流し目を送るという意味があるという。流し目ではウイルスに対し勝ち目はない。

春秋 日本経済新聞 8/21
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge