政権交代を求める国民の目覚め、時代を動かす・・・春秋 八葉蓮華

 そのときも大いに風が吹いたのだろう。明治23年、近代史に残る第1回衆院選の話である。自由民権運動の流れをくむ「民党」が171議席を得たのに、政府系の候補者は84議席。日本の国政選挙の歴史は野党圧勝から始まったわけだ。

 ほぼ120年を経て、こんどは民党ならぬ民主党の劇的な躍進を平成の有権者はもたらした。予測はあったけれど、現実の数字をみると風、というより嵐のすさまじさに息をのむ。これを生みだしたのは政権交代を求める選挙民の沸々たる熱に違いない。時代を動かすダイナミズムが久々に目覚めたのはたしかだ。

 もっとも、それは自公政権への幻滅の裏返しでもあろう。「歴史は多くの場合において悔恨の書であった」と民俗学者柳田国男は述べている。4年前、圧倒的な力を与えて送り出した政権の不行跡を人々はいやというほど見た。その深い悔恨こそが、今回の大転換を支えていることを民主党も忘れてはなるまい。

 明治の最初の衆院選に投票できたのは国民のほんの一握りだった。それとは比べものにならない膨大な数の民意が描きあげた、鮮やかな政権交代である。ああ、こんなはずではなかった。後々、そんな思いを決して抱かせないでほしい。政治がいつの世も私たちに残してきた「悔恨の書」を積み重ねないでほしい。

春秋 日本経済新聞 8/31
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