2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

永遠だと貴方は教えてくれた・・・春秋 八葉蓮華

オリックス時代のイチロー選手が試合前のパフォーマンスで背面キャッチをするのを見たことがある。ゆったりとして自信たっぷりのプレーだった。運動神経の固まりのようなプロ野球選手たちのなかでも、このひとは特別なのだろう。▼二代前の米大統領、ブッシュ…

迅雷風烈には必ず変ず・・・春秋 八葉蓮華

「朝霞(ちょうか)には門を出(い)でず、暮霞(ぼか)には千里を行く」。朝焼けは降雨の前ぶれだから外出せず、夕焼けなら翌日は好天なので遠出も大丈夫。夏休みは空模様が気になる。中国の古い言い伝えを幼いころ聞き覚え、上空を眺める人は多かろう。▼し…

世界の基軸通貨ドル・・・春秋 八葉蓮華

最初は貝殻や毛皮。次に金や銀。お金の歴史である。希少な材料だからこそ価値がある。現代の通貨は紙でできている。なのに、どうして皆が大切にするのだろう?小学生に聞くと、愉快な答えが返ってきた。「たぶん思い込みでしょ」▼知識や経験に邪魔されない幼…

巨万の富「慈善事業」・・・春秋 八葉蓮華

世界的なベストセラー「道は開ける」に53歳のジョン・D・ロックフェラーはミイラそっくりに見えたとある。巨万の富を築いたが、日夜それを失いはしないかと不安で睫毛(まつげ)まで抜け落ちる禿頭(とくとう)と不眠症、消化不良に悩まされていた。▼医者は…

わが家独自の家庭づくり・・・春秋 八葉蓮華

ほぼ30年を1世代とする、と「広辞苑」に出ている。30年つまり1世代前には企業の広報文はこうだったな。そう懐かしく眺めた文書は表題、けい線、本文がすべて手書きで、洋数字だけ何か機械で印字したのを切り張りしてある。▼1978年に「現代家庭の年中行事」を…

言葉は生き物であり、乱れと進化は紙一重・・・春秋 八葉蓮華

若い人に仕事の進み具合を聞く。または体調を気遣う。するとこんな返事がくる。「はい、全然大丈夫です」。全然は打ち消しに使う。その言い方は「間違い」だ、と怒るのは早計らしい。少し古い辞典によれば昔は肯定文の中でも使われていたようだ。▼文化庁の調…

住まば日の本遊ばば十和田歩きゃ奥入瀬三里半・・・春秋 八葉蓮華

訪ねてみて感動する観光名所というのは案外少ない。しかし十和田湖から奥入瀬渓流にかけての山水の美といったら文句なしに一級だ。「住まば日の本遊ばば十和田歩きゃ奥入瀬三里半」。明治大正の文人、大町桂月はこう称(たた)えている。▼桂月の詠んだとおり…

疑いの眼差しが・・・「土用の丑の日」・・・春秋 八葉蓮華

長男茂太さんの婚約が整い、斎藤茂吉はうなぎ屋での両家顔合わせに出かけた。将来の茂太夫人は着物姿のうえ緊張して箸(はし)が進まない。と、隣の茂吉が「それを私にちょうだい」と言ってひょいとかば焼きをとりあげ、食べてしまった。▼茂太夫人美智子さん…

いっせいにうごめき出す・・春秋 八葉蓮華

盛夏の濃密な命の気配を代表するのは、間違いなく虫たちだ。土の中、水の底、草の茎などに潜んで時を持っていた彼らが、熱暑の季節にいっせいにうごめき出す。里地、里山、そして都会の小さな公園でも、幾種類もの虫が、夏休みの子供たちと出会う。▼おなじみ…

立場への自覚、責任ある行動、勇気と決断・・・春秋 八葉蓮華

「女の道は一本道。引き返すは恥にございます」。分家から藩主の養女に抜擢(ばってき)され戸惑う主人公を老女中が諭す。そんな台詞(せりふ)も印象的な大河ドラマ「篤姫」が人気だ。幕末の日本を将軍家に嫁いだ女性の目から分かりやすく描き、週間視聴率…

「海の日」母と海のつながり・・・春秋 八葉蓮華

きょうは「母の日」などと書いたら、何かの勘違いと思われるだろう。確かに、きょうは母ではなく「海の日」。でも「母」と「海」をじっと見つめてほしい。海のなかに母がある。そう見える。母と海の間には様々なつながりがある。▼母には「物事を生み出すもと…

月面のかなりの部分が「販売済み」・・・春秋 八葉蓮華

毎年この日になると、月を探して空を仰ぎ見る。今年はほぼ満月。アポロ11号が月に着陸した39年前は三日月だった。アームストロング船長が感嘆の声を上げた記録が残っている。誰のものでもない広大な土地が眼前で輝いていた。▼月の不動産には所有者はいない。…

夢に一番近いところまで来た・・・春秋 八葉蓮華

美術家の村上隆さんといえば今や国際的なアーティストだ。若いころは東京芸大で日本画を学び、前途は開かれていた。ところが自由な現代美術に出合って衝撃を受ける。震源地はニューヨーク。そこへの「巡礼」は必然だったという。▼ニッポンの画壇とは違い、す…

何が悪かったのか・・・春秋 八葉蓮華

ファニーメイとは風変わりな会社名だが、つづりは「風変わりな」のfunnyではなくFannie Mae。元々の社名フェデラル・ナショナル・モーゲージ・アソシエイションとイニシャルが同じFNMAになる女性の名前を選び正式社名にしたようだ。▼団塊…

まず「人づくり」・・・春秋 八葉蓮華

道端にガラス瓶を並べて売っている子供たちがいる。強い日差しが中身の水に反射して、キラリと光る。飲み水だろうか。現地の友人がにっこり教えてくれた。「あれは熱帯魚ですよ」。東南アジアの内陸国、ラオスで見た光景である。▼路上で熱帯魚を買う客は観光…

 もう一度言おう、夢を忘れずに!・・・春秋 八葉蓮華

「このくらいのことは覚悟してたんで/ぜんぜんヘコんでないから」。ロック歌手の忌野清志郎さんが気丈なメッセージをつづっている。喉頭(こうとう)がんを克服して最近はステージにも立っていた清志郎さんだが、腸骨への転移が見つかった。▼この夏のライブ…

屁理屈・・・春秋 八葉蓮華

政治学者のジェラルド・カーティスさんは44年前の夏、はじめて日本にやってきてカレーを注文した。添えられたスプーンを見て外人扱いされたと思い、箸(はし)を頼んだ。必死にカレーをつまみながらふと顔を上げると、周りの誰ひとり箸を使っていない――。▼「…

酔余の乱行・・・

「殴り合う貴族たち」と題した著書で、歴史民俗学者の繁田信一さんは、平安時代の貴族が「かなりの程度に暴力に親しんでいた」と主張している。右大臣藤原実資(さねすけ)の日記などに書き残された貴人らの乱暴狼藉(らんぼうろうぜき)は、確かにひどいも…

点と点は必ずつながる・・・

墨をする。硯(すずり)の中に日常が洗い落とされていく。筆先を浸し紙の真っ白な世界と向き合う。筆を下ろす一瞬。書の達人でも緊張するという。仮名書きは特に難しい。字の形だけでなく、空間に黒と白を美しく「ちらす」絵柄を頭に描く。▼人の心を研ぎ澄ま…

日本人の魚離れ・・・

二銭銅貨をよく洗って、鮪(まぐろ)の中骨に付いている肉をえぐりぬく。これをあったかいご飯に載せお茶漬けにするおいしさは忘れられない――大正期、東京・日本橋で幼いころを過ごした女性が書き残している。(金窪キミ著「日本橋魚河岸と文化学院の思い出…

教育委員会 何なに・・・

中世のヨーロッパではギルドが大きな力を持っていた。商人や手工業者の組合である。モノの値段や規格、労働時間等々を取り決め、後継者の育成を仕切り、領主の支配が及ばないこともあったという。今どきの業界団体の比ではない。▼現代ニッポンの教育界にはギ…

世界中の青空・・・

北京五輪開幕まで1カ月足らず。洞爺湖サミットは中国の胡錦濤国家主席が五輪への国際協力を演出する場にもなっている。ボイコットを取りざたされたフランスのサルコジ大統領も、日米首脳に続いて開会式参加を表明する方針という。▼五輪史上最も多い80人以上…

姿が見えない透明な議長・・・

森の青葉を揺らし、紺碧(こんぺき)の湖面を渡る風が、22カ国の首脳が集う山上のホテルを吹き抜ける。洞爺湖サミットは、初夏の北海道の透明な光と、火山が生んだ絶景が、主な舞台装置だ。それがあいにくの雨と霧。光も絶景もなく、視界不良のまま幕を開け…

「アイヌ語に由来」・・・

北海道にある市町村の名のおよそ8割がアイヌ語に由来するという。きょうからサミットが開かれる洞爺湖町もそうだ。トーは湖、ヤは岸。湖畔の土地を指した言葉が湖の名に転じた。釧路湿原に面した「遠矢」も由来は同じだという。▼16年前、93歳で亡くなった山…

ベリブ

「傘の自由化」なるアイデアを作家の大崎善生さんが書いている。必要なとき差せるよう傘を社会の共有財産としてあちらこちらに備え、雨がやんだら近くの置き場に返せばいい。駅や温泉街で時折見る仕組みが東京全体にあったら、と作中の主人公は夢想する。▼パ…

物価上昇と金融不安・・・

ワシントン郊外の米国立暗号博物館に、タイプライターに似た機械が鎮座している。鍵盤の奥に、秘密の回転板が3枚。ここに当時の数学と技術の粋が刻み込まれている。「解読不能」と恐れられた旧ドイツ軍のエニグマ暗号機である。▼ドイツの発明家シェルビウス…

素人鰻・・・

「素人がたは鰻(うなぎ)の顔はみな同じように思っておられるが、商売人が見ますとことごとく異なっております」。こんな語りが落語「素人鰻」に出てくる。元禄時代の本草書「本朝食鑑」の鰻の項では、滋賀・大津あたりを「第一とする」産地等級づけをして…

小さな王子様?

洞爺湖サミットに向けて日本各地で様々な閣僚会合が開かれてきた。先週も京都で外相会合があった。G8の会合の場合、日本の首脳や閣僚の発言はいったん英語に訳され、それが仏、独、イタリア、ロシア語になって会議が成り立つ。▼逆もまた真なりか。明治初め…

モンスター・・・

ピンク・レディーの「モンスター」がはやっていた。18歳の少女作家が書いた「海を感じる時」が話題だった。甲子園ではPL学園が劇的な逆転優勝を果たした。どれも30年前の夏の出来事だ。サミットは旧西独のボンで開かれた。▼そんなころ、じつは北朝鮮の工作…

落書き 犬の電柱 ・・・

「落首辞典」は、平将門の乱から江戸城明け渡しまで900年余の間に現れた落書を編さんした本だ。辞典なので50音順にしてあり、巻頭は「相生(あいおい)の父と母こそ住みよけれ花のお江戸に高砂(たかさご)ぞ降る」。1707年の富士山噴火で降灰に襲われた江戸…