2009-04-01から1ヶ月間の記事一覧

家庭か、学校か、どこかでちゃんと教えなければいけない・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

記憶とは、何とはかないものか。そんな思いを新たにした。戦闘機を伴った米大統領専用のジャンボ機が、写真撮影のためニューヨークの空低く旋回したと知ってのことである。自由の女神像を背景にしたベストショットを狙って、30分も飛び回ったらしい。 「無神…

激動の日々を経て、復興を遂げた昭和時代を顧み、国の将来に思いをいたす・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

「氷雨ふるきさらぎのはてつくづくと嫗(おうな)となりぬ 昭和終(おわ)んぬ」。2月の冷たい雨が降った大喪の日の感慨を、難解歌人といわれた山中智恵子さんが、このように易しく詠んで、もう20年過ぎた。今日は「昭和の日」になって3回目の昭和天皇誕生日…

「言われなくても坊ちゃん扱い」他人の坊ちゃんのつもりで・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

「膏薬煉(こうやくねり)」という狂言の曲がある。上方の膏薬煉と鎌倉の膏薬煉が薬の効き具合を自慢して大ぼらを吹き合う話だ。2人はそれぞれ、空飛ぶスッポンだの海中に生えたタケノコだのノミの巨大な牙だの、とんでもない薬の材料を3つずつ挙げるはずだ…

「新型インフルエンザ」新たな病に人類社会が対抗する・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

第1次世界大戦中、スペインかぜと呼ばれる新型インフルエンザが世界で流行した。死者数は4000万人ともいわれ、日本でも東京駅の設計で知られる辰野金吾らが命を落とした。最新の広辞苑はこの病を「1918年スペインから起こり世界各国に広まったインフルエンザ…

「一生勉強です」指示された仕事をこなすだけでは進歩がない・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

帝国ホテルの総料理長を務めた故村上信夫さんは、フランス料理の達人として著名だった。その村上さんのところに、息子をコックにしたいという母親が相談に来た。「うちの子は勉強が嫌いで駄目なんです。コックならどうでしょう」 「料理人の仕事は、お母さん…

「官頼み」世界同時不況下のなかで、国頼みの企業再生・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

商業においては決して政府の威権を仮(ママ)るべきものにあらず――。渋沢栄一は「立会(りっかい)略則」という会社設立の手引書の中でこう書いた。140年近く前のことだ。官尊民卑を破ろうとした渋沢は早くから官を頼らず独り立ちせよと説いた。 その「民の…

「出前のそば」わいろや談合のような不正が後を絶たぬ・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

日本で博士号は「足の裏にくっついた飯粒」と言われてきたそうだ。そのココロは「取っても食えません」。もっとも、学位論文を審査する北大の教授ら9人が博士になった人々から金品の謝礼をもらっていたというから、この飯粒、存外価値があるのだろう。 その…

昔日の栄光にすがり、延命に手を貸すだけになりかねない・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

その昔、居間にステレオが鎮座しているのは少し誇らしげな景色だった。白黒テレビに洗濯機、冷蔵庫という「三種の神器」はみんなが手に入れた。こんどはカラーテレビ、自動車、クーラーの「3C」だ。そんな時代の贅沢(ぜいたく)品である。 パイオニアはそ…

少年少女は塾通い「全国学力テスト」学校はテスト向けの勉強にいそしむ・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

風船もブランコも春の季語だという。しゃぼん玉もそうだ。うららかな日差しをまとい、戸外で無心に遊ぶ子どもたちの姿に昔の人は季節を感じたのだろう。もっとも昨今はそんな光景を見たくても、少年少女は塾通いなんぞで忙しい。 それにこの時期は「全国学力…

「枯れた技術の水平思考」小さなひらめきが大きな変革につながる・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

京都から東京までの新幹線の車内で、サラリーマンが退屈しのぎに電卓のキーをたたいて遊んでいた。それを見て、液晶で小さなゲーム機を作れないかと思いついた――。任天堂の開発担当者だった横井軍平氏は後にそう述懐している。 小さなひらめきが大きな変革に…

多くの貴重な人の消息が失われ、忘れられてきた・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

17日の本紙夕刊「プロムナード」で作家のツジ井喬さんが触れているのを読み、書いておかねばならないと思った。ことし2月にパリで92年の生涯を閉じた高田美(たかたよし)さん。デザイナーのピエール・カルダン氏をして、生涯の友と言わしめた女性のことであ…

半導体「ムーアの法則」技術者が築き上げた精巧な伽藍・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

物の機能を追求していくと、意外な美しさが宿るらしい。風を切る飛行機の流線形は人の目をひきつける。使い勝手がよい家具は姿に色気がある。摩天楼が輝く都市の夜景は現代の名勝と呼ばれる。自然美に負けない人工の美は数多い。 半導体の集積回路は、ミクロ…

なぜパキスタン支援か「子供の情景」タリバン支配の非人間性、息苦しさが伝わる・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

パキスタン支援国会合が開かれた。なぜパキスタン支援か。アフガニスタンの隣国だから……が答えのひとつだ。アフガニスタンの混乱は、30年前のソ連軍侵攻で始まった。10年間の戦いがあり、20年前にソ連軍は敗れ、撤退した。 ソ連軍と戦わせるために米国が支援…

五輪招致「素晴らしい立候補都市だ」大阪が見たうたかたの夢・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

「施設の充実ぶりは素晴らしい」「市民の熱意が高く感動した」「環境への配慮も十分」。競技場を視察し、繁華街を歩き、地下鉄にも乗った国際オリンピック委員会(IOC)の調査団が絶賛している。これで五輪開催に王手だ――。 というのは8年前の物語。大阪…

身構えっぱなし「通勤風景」超満員の密室を恨みたくなる・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

「押し屋」と呼ばれる仕事がある。ラッシュアワーに電車に乗りきれない客をぎゅうぎゅう押し込んでくれる、あれだ。初登場は1955年の新宿駅だという。この国の通勤風景の非人間的なること、半世紀を経ても変わってはいない。 卑劣なヤカラもいるから女性にと…

したたかな国「議長声明」思惑の異なる国際社会の駆け引きは難しい・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

北朝鮮の労働党機関紙が、工場を視察した金正日総書記にまみえた労働者の様子を詳しく伝えたそうだ。「やせ細った父なる将軍」を前に彼らは言葉を発することもできず、「嗚咽(おえつ)する顔には2筋の涙がとめどなく流れていた」という。 大仰でげんなりし…

名人戦の対局中サインを頼み、次の一手を思案中・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

ノンフィクション作家の後藤正治さんが、ぜひやってみたい仕事を3つ挙げたことがある。そのなかの1つに将棋タイトル戦の観戦記があった。観戦記とは、プロの将棋を間近で見つつ工夫を凝らして面白い読み物に仕立てたもので、大作家もよく書いていた。 念願か…

「自転車は転ぶもの」自分が落ちるかと思ふと幼児を落す事もある・・・春秋 八葉蓮華

自転車は転ぶものだが、昔は落ちると言ったらしい。夏目漱石はロンドン留学中に自転車を練習した。悪戦苦闘ぶりを「人間万事漱石の自転車で、自分が落ちるかと思ふと人を落す事もある」「大落五度小落は其(その)数を知らず」とユーモラスに振り返っている…

「半世紀を振り返り」成熟社会を迎えた今の日本が忘れた熱気・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

人口は9300万人。1人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率は2.04。実質経済成長率は約9%で、実質的な経済規模は日本のおよそ9分の1。どこの国だろう。50年前の日本である。 1959年、日本は岩戸景気と呼ばれた好景気の真っただ中にあった。池田勇…

ゼネラル・モーターズ(GM)再生の手段として破産法の申請も視野・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

宮沢賢治の未発表の詩が生家で発見された。「傾配つきの90度近いカーブも切り」「径一尺の赤い巨礫(れき)の道路も飛ぶ」――。詩人が描いたのは乗り合いバスの雄姿である。停車場では気だるげなバスの巨体が、想像の林を駆け抜ける。 大正の終わりから昭和の…

合理的な疑い「裁判員制度」評議の場で裁判員が一斉に異を唱えだしたら・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

「合理的な疑い」って何のこと? 高崎経済大学教授の大河原眞美さんが著書で、この言い回しを奇妙な裁判用語の筆頭に挙げている。たしかに「犯人とするには合理的な疑いが残る」などという判決文は、分かったようで分からない。 平たく言えばこんなところだ…

「黄金の72時間」手を差し伸べさえすれば確実に守りきれる命・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

人の世の移ろいの早さを散り急ぐ桜に重ねれば、口をついて出るのは「3日見ぬ間の……」という言葉だ。3日という日数など、それほど短くはかないものに違いない。いつものように慌ただしく過ぎ去っていく、昨日今日明日である。 その72時間が、災害現場ではと…

「カリスマ性」創業者と2代目、3代目では受け止め方が違う・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

上場会社で最近、創業家出身の新社長が目立つ。例えば建材大手のトステムでは、創業者の長男潮田洋一郎会長が1日付で社長を兼務した。とりわけトヨタ自動車の豊田章男副社長の社長内定は話題になった。 創業家は企業にとって特別な存在である。その後光に輝…

「天気ハ変リ易シ」いつどこに雨が降るのかも分からない・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

こんな嫌な気分で天気予報に目を凝らした週末はない。桜の見ごろは逃したくないが、好天なら北朝鮮が何やら発射すると聞けば春の嵐の1つも吹いてほしくなる。怒りも不安も届かぬ上空を自称「衛星」は図々(ずうずう)しく通り抜けていった。 気象庁はふだん…

モノと人が行き交い、互いに富を生む、貿易に観光に文化交流・・・春秋 八葉蓮華

今の時期、花見といえば桜というのが大方の思いだろうが、菜の花畑の可憐(かれん)な黄も捨てがたい。この週末、両方を同時に楽しめるのが埼玉県日高市の巾着田(きんちゃくだ)という場所だ。蛇行する高麗(こま)川に丸く囲まれた土地の形から、その名が…

「東北地方の空にミサイル」非難されなお愚行を繰り返す北朝鮮・・・春秋(nikkei) 八葉蓮華

20世紀初めにパリの空を自作の気球に乗って散歩でもするように飛び回ったブラジル人、サントス・デュモンは、当時の人気者だった。伝記「空飛ぶ男サントス―デュモン」(草思社刊)が、子供のころのこんな言葉を紹介している。 「空には鳥たちが高々と飛び…雲…

常識に挑戦「家族」で一緒に、安心して楽しめる・・・春秋 八葉蓮華

「入場者、予想の3分の1」。1983年春、東京ディズニーランド開業日の様子を翌日の新聞がそんな見出しで伝えている。開園前の行列が想定を下回ったという内容だ。別の新聞には「黒字化に時間」という記事もあり、お手並み拝見という空気が漂う。 「ハイテク時…

「連翹忌」僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る・・・春秋 八葉蓮華

きのうの本紙夕刊に「逆風下の入社式 トップ訓示、奮起促す」と見出しの付いた記事がある。「自らの未来を切り開く認識と気概をもってほしい」「変革できる者だけが生き残れる」。社長たちが、それぞれの表現で危機感を訴える。 人生の序章を終え、本論に入…

「日本を希望の持てる国」票のなる木をむやみに植えて収穫を心待ち・・・春秋 八葉蓮華

スイスの農村にはスパゲティのなる木があって、この時期には村人が総出でにょきにょき生えてくるパスタの収穫に大わらわ――。というのはもちろん真っ赤な嘘(うそ)。英国BBCが1957年のエープリルフールに流した「ニュース」だ。 こしらえた映像がまたもっ…