ミャンマー20年も続く軍事政権の暴挙愚挙の繰り返し・・・春秋 八葉蓮華

 納豆があるかと思えば赤飯もある。モチ米を炒(い)って固めた雷おこしも売っているし琵琶湖名産の鮒(ふな)ずしの類(たぐい)も……。どこかの物産展の話ではない。写真家の森枝卓士さんが「東南アジア食紀行」でつづるミャンマーの山村の市場風景だ。

 「とにかく、次から次と日本を思い出させるものが登場する」と森枝さんは驚いている。どうやらかの国には日本文化のルーツのひとつが潜んでいるのだろう。人々の風貌(ふうぼう)もまた私たちと似通っていて親近感を覚えるのだが、ならばこそ、20年も続く軍事政権の暴挙愚挙の繰り返しには怒りと悲しみが募ってくる。

 こんども軍政は、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんへの「判決」なる芝居を演じてみせた。自宅まで池を泳いで渡ってきた旅行者と会ったという罪状も謎なら、自宅軟禁1年半に「減刑」した司法手続きも奇怪だ。つまりは来年の総選挙からスー・チーさんを締め出すための小細工に違いあるまい。

 納豆や赤飯に感心した森枝さんは、そこで往年の日本の軍国歌謡を口ずさむ僧侶に出会う。かつて侵攻してきた日本軍に教えられたのだ。第2次大戦の時代には浅からぬ縁を持ち、現代史も交錯する両国だと改めて知るべきなのだろう。私たちと遠くで近くでつながるミャンマーの不幸に、もっと目を凝らしたい。

春秋 日本経済新聞 8/13
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