2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

活気ある街の掟、変化を追い切れなかった店は舞台を去り・・・春秋 八葉蓮華

東京の銀座といえば日本を代表する繁華街。しかし江戸のころ商いの中心は日本橋だった。職人の家や小商いが多かった銀座は、日本橋に比べ「かなり見劣りする街であった」と都市史に詳しい初田亨氏は著書「繁華街の近代」に記す。 明治に入り、近くに新橋駅が…

「ライ麦畑でつかまえて」どんな時代にも共感を呼ぶ青春の息遣いを描ききった・・・春秋 八葉蓮華

作詞家の秋元康さんに文学趣味の作品がいくつかある。「サルトルで眠れない」「赤道を越えたサマセットモーム」などとオシャレだ。有名なのは「借りたままのサリンジャー」だろうか。かつて、アイドル歌手が歌って少しはやった。 サリンジャー。この小説家の…

身勝手極まりない「動機」自己完結しがちな孤独や孤立・・・春秋 八葉蓮華

1097件という数字を、先日の紙面で知った。昨年1年間に全国で発生した、未遂を含めたサツ人事件の警察庁統計である。およそサツ人という犯罪は昭和30年代からほぼ一貫して減り続けていて、昨年は戦後最少を更新したのだという。 治安が悪くなったと感じてい…

微妙な均衡「アバター」技に精通しているが、技におぼれることはない・・・春秋 八葉蓮華

ジェームズ・キャメロン監督は「文転組」だった。大学で物理学を専攻したが、途中で英文学に転向した。科学技術は大好きだが、数学の勉強が嫌いだったようだ。映画界を代表する監督の頭の中は半分が理科系、半分は文科系である。 技術への強烈な関心は作品に…

相撲界にあって初の女性横審委員「角界」敵役に据えた朝青龍・・・春秋 八葉蓮華

10年にわたる横綱審議委員を退いた作家の内館牧子さんが、最後の最後にも朝青龍を評して「アスリートとしては150%認めるが横綱として認めていない」とぶちかましたそうだ。千秋楽まで続けた横綱との取組は技能賞ものだろう。 いまだに女性は土俵に上がれな…

マイホームの姿「住宅すごろく」造っては壊すのではなく暮らし続ける・・・春秋 八葉蓮華

新婚時代はアパートで暮らして子どもが生まれたら賃貸マンションへ。その後、分譲マンションを買い、その売却益で郊外の庭付き一戸建てを購入してアガリ。かつて会社員の人生設計の目安としてこんな「住宅すごろく」が語られた。 一億総中流といわれ、土地も…

20年余り前の水準、いま百貨店もスーパーも苦境に立つ・・・春秋 八葉蓮華

世界初の百貨店は19世紀後半のパリに誕生したボン・マルシェだとされる。気軽に入れる店に、いいモノをたくさん並べ、安く売る。このアイデアは新興の中産階級に支持され、欧州から米国、日本へと「百貨店」は瞬く間に広がった。 鹿島茂氏の著書「デパートを…

「大変だね」今の日本には、もっと大事な問題があるのではないか・・・春秋 八葉蓮華

現職の国会議員が逮捕され、与党の幹事長が事情聴取を受ける。政界の巨人と検察が火花を散らしてぶつかり合う。この重大局面を海外はどうみているだろう。いささか興奮した気分で、米欧アジアの知り合い10人に電話で聞いてみた。 まず「大変だね」と慰めの言…

相手を敬い自分はへりくだる書簡、いまは絵文字・・・春秋 八葉蓮華

お年玉付き年賀はがきの抽選があしたある。届いた賀状にあらためて目を通すのは、少し寝かせたおでんを味わうような楽しみだろう。正月は見落としていたが、じつは、差出人の思いがたっぷりしみ込んだはがきが何通もあるからだ。 去年11月の本紙プラスワンで…

常用漢字の見直し「障碍」言葉に人がこめる偏見や差別意識・・・春秋 八葉蓮華

「書類選考」などというときの「選考」は、本来は「銓衡」と書く。「銓」とは秤(はかり)に使う分銅のことで、片や「衡」は秤ざおを指す漢字だ。つまり、ものごとや人物を秤にかけるようにしてしかと見極めるのが「銓衡」なるものである。 それがなぜ「選考…

政と官の有形無形の圧力「我田引空」重ねた無理と無駄・・・春秋 八葉蓮華

1日に1度、ソウル便が往復するだけで国内線の定期便はひとつも飛ばないという。この春オープンする茨城空港である。旅客のざわめきもなく、売店やレストランは手持ちぶさた……。時間が止まったようなターミナルが目に浮かぶ。 ざっと81万人、と見込んでいた…

「一切の行蔵寒にある思ひ」大寒から立春までの半月はもっとも冷え込む・・・春秋 八葉蓮華

「普通では考えられないほど程度が極端であること」。「笑い」や「騒ぎ」の前につく「ばか」を、新明解国語辞典はこう説く。極端とは悪いことが多いから、「はした借りまで書き置きのばかりちぎ」と江戸川柳でもからかっている。 しかし、万事「ばか」が悪い…

「通常国会」汝、君主たるすべを知らぬなら、君主になるべからず・・・春秋 八葉蓮華

始まりは「異国の女」から届いた手紙。文通は17年も続き、縁はついに結ばれる。19世紀フランスの文豪、バルザックの晩年の結婚逸話だ。「異国の女」はハンスカ夫人。夫人が館を構え、文豪も行き来した異国とはウクライナである。 帝政ロシアの辺境ながら、欧…

権力と権力が対決、風景はゆがみ、人々は足をすくめる・・・春秋 八葉蓮華

小沢一郎氏の地元の岩手県に鞍掛山という小さな山がある。盛岡駅からバスで1時間ほど。標高900メートル足らずの、おだやかな印象の山である。宮沢賢治が残した詩やメモに、この山の名前がしばしば登場する。 「たよりになるのは、くらかけつづきの雪ばかり…

「メメント・モリ」たまたま生の側にいる私たちにできることは・・・春秋 八葉蓮華

歌人の道浦母都子さんに、阪神大震災の体験を詠んだ連作がある。そのひとつは「たくさんの人がシんだのに……」と詞(ことば)書きを添えた歌だ。「あかねさす生の側にて光り立つ黄の水仙とこのわたくしは」。シはまさに、生の隣にあった。 あの日から15年が過…

入学といえば「春から秋に」春始まりという状況は変わっていない・・・春秋 八葉蓮華

きょうから大学入試センター試験が始まり、受験の季節も本番を迎える。ここまで来て、体調を崩しては元も子もない。地域によっては雪で列車が遅れることもあろう。筆者も昔、受験日に雪に見舞われてぎりぎりで会場に滑り込んだ。 高校なども含め風邪や雪の心…

「雲の後ろの太陽」重く垂れこめる雲は広がってきている・・・春秋 八葉蓮華

「雲の後ろではいつも太陽が輝いている」。米国の詩人、ロングフェローの言葉だそうだ。意味するところはわかりやすい。つらいときでも希望とチャンスは必ずある、という励ましだ。虐げられ苦闘している人々への応援でもあろう。 この格言を題名に借用した英…

臨機応変に行動せよ 状況に合わせ打つ手は変える・・・春秋 八葉蓮華

大黒柱といえば、どっしり構え不動。それを必要なら動かしてしまえというのが、大手スーパー、イオンの岡田家に伝わる家訓だ。大黒柱に車をつけよ――。会社を支える店も、人の流れが変われば移せと、変化への即応を説いている。 実際、イオンの源流の岡田屋は…

安全運航という至上命令、過去の栄光を捨てる長い道のり・・・春秋 八葉蓮華

万葉集に名の知れぬ旅人の一首がある。「足柄の箱根飛び越え行く鶴(たづ)の羨(とも)しき見れば大和し思ほゆ」。妻が待つ都への望郷の念を鶴に映した歌だ。大空とそこを飛びかう鳥に、翼を持たない人間は古来あこがれ見果てぬ夢を託してきた。 いや、飛行…

「成長戦略」過度に悲観的になるな、前向きにチャレンジしていけ・・・春秋 八葉蓮華

「国に頼っていても、らちがあきません。我々企業が自ら需要を喚起するようにがんばるしかない」。経済同友会の桜井正光代表幹事(リコー会長)は最近、こう繰り返し述べている。企業も縮こまっていては駄目だというわけである。 ごもっともだが、人によって…

先の見えない世の中、行けるところまで行ってみよう・・・春秋 八葉蓮華

「どこまで行くの」と聞かれて20歳のジュンは答える。「行けるところまで行くんだ」。横浜からナホトカへ向かう船の中である。五木寛之さんの「青年は荒野をめざす」は、こんな主人公の果てしない冒険を描いて若者を旅に誘(いざな)った。 「これはもうぐず…

数字1つに工夫を凝らした知恵を、われわれはきちんと受け継げるか・・・春秋 八葉蓮華

きょう1月10日は「110番の日」。警察は110番と小さいころ覚える。そういえばなぜだろうと、ふと疑問に思う人は多いらしい。ネットを見ると、警察やNTT、一般の人同士が質問し、回答するページなどに答えが並んでいる。 理由は覚えやすい、かけやすい、動…

座敷わらし「民話のふるさと」雪が積もる民話の里にも不況の風が吹く・・・春秋 八葉蓮華

岩手県二戸市の金田一温泉郷にある旅館「緑風荘」。昨年10月初めに火災で全焼し、今も雪面に残骸が広がるこの旅館を支援しようと、全国から義援金が寄せられている。「座敷わらし」が現れる宿として有名で、常連客も少なくない。 座敷わらしは家人に幸運をも…

多様な生活文化「シェパード海賊団」保全と利用の兼ね合いに知恵を絞ろう・・・春秋 八葉蓮華

シェパードとは羊飼いの意味だ。グッド・シェパードという言葉もあって、これは弱者のために身もささげようとしたキリストを指す。「われは善き羊飼いなり。善き羊飼いは羊のために命を捨つ」と新約聖書のヨハネ伝は記している。 南極海で日本の調査捕鯨団に…

目配り、気配り、思いやり、役割の重圧はいかほどか・・・春秋 八葉蓮華

目配り、気配り、思いやり。プロ野球のキャッチャーにはこの心構えが欠かせないのだと、野村克也さんの語録にある。ピッチャーの気持ちをくみ、内野外野にまんべんなく目を注ぎ、チームをもり立てていく役割の重圧はいかほどか。 体調を崩して辞任が決まった…

ブログは気ままな日記のように、ツイッターは独り言のように・・・春秋 八葉蓮華

もう鳴いたのかな。いや、まだみたいだよ。早く鳴かないかな。あ、いま鳴いた。ほんとうに鳴いたね。次はいつ鳴くかな――。正月早々からネットがにぎやかなので何かと思えば、鳩山首相が始めたブログとツイッターの話題だった。 ブログは気ままな日記のように…

 交通戦争の奇妙な遺跡「歩道橋」車をスムーズに通すため人が回り道をする・・・春秋 八葉蓮華

昨年の交通事故シ者が57年ぶりに5000人を下回った。そう伝える記事を読みながらテレビで箱根駅伝を見ていたら、大詰め、9区から10区への中継所の頭上にある歩道橋が目に入った。横浜市鶴見区の第1京浜(国道15号)である。 かつて、歩道橋が交通戦争に対す…

失敗を恐れず「ミスした時こそ笑え」苦しい時こそ皆で上を向け・・・春秋 八葉蓮華

きょう、仕事始めのあいさつや訓示が待っている職場も多かろう。いままさに出勤の途上にあり、何を語るべきか頭を悩ませている方もおられるのではないか。日本の行く末は暗い。わが社の経営も厳しい。各員一層、奮励努力せよ…。 専門家によれば、こんな悲観…

寅年の2010年、柔らかくて頼りなげな猫の面影が混ざり込む・・・春秋 八葉蓮華

虎の勇猛な姿はよく知っているつもりでも、いざペンをとって絵を描いてみると、どこか猫っぽくなってしまう。瞳がつぶらすぎるのか、口元がかわいすぎるのか。届いた年賀状の作品を見比べて、思わずニヤリとした方もいるだろう。 でも、笑ってはいけない。虎…

2010年に歩き出す「正月の妙薬」お年玉をねだろうにも、懐具合が気になる・・・春秋 八葉蓮華

まずは遊びぞめを。1950年元日、「若返りの妙薬」のお年玉が政府から出たとの記事が小紙に載った。なんのこと? ピンとこられたかどうか。じつは、年齢の言い表し方を「数え」から「満」に改める法律が施行されたのである。 生まれて1歳、あとは新年に齢(…