2008-01-01から1年間の記事一覧

「巣ごもり」毎日家にばかりいると・・・春秋 八葉蓮華

谷崎潤一郎が住んだ小石川原町、いまの東京都文京区白山辺りから銀座へ、歩くとざっと1時間半。この道を、彼は6つ年下の芥川龍之介としばしば散歩した。芥川が20代後半、大正のころだ。「実によく歩いてしゃべるんですね」と谷崎が振り返っている。 辛らつな…

「陶酔感」 現状を変えようとする姿が共感・・・春秋 八葉蓮華

米タイム誌の「今年の人」に選ばれたオバマ次期米大統領に2009年も今年の人に選ばれてほしい。世界経済を回復させ、イラクとアフガニスタンを安定させ、北朝鮮を非核化させた功績が評価されて――。期待過剰はわかっている。 日本ではそうでもないが、世界中で…

「8時59分60秒」という名の不思議な時間・・・春秋 八葉蓮華

来年の元日は例年より少しだけ1日の時間が長い。地球の自転の微妙なズレを調整するため「うるう秒」が入るからだ。日本では午前9時の直前。ほんの瞬く間の出来事だが「8時59分60秒」という名の不思議な時間が出現する。 たかが1秒。されど1秒。膨大なマネー…

「山の遭難」迷ったら来た道をすぐ引き返したい・・・春秋 八葉蓮華

この週末から年末年始の休暇という方も多かろう。清浄な自然を満喫しに、山へ足を運ぶ方もおられるのではないか。3000メートル級の雪山であれ、近場の山歩きであれ、心にとめてほしいことがある。昨年の山の遭難件数が過去最高であり、遭難者の6割強を55歳以…

専門用語をまくし立て、一喝される・・・春秋 八葉蓮華

さすがに「オイコラ」などと市民をとっちめることはないにしても、警察というのはどうしてもコワモテの集団だ。過日も運転免許更新の講習に出向いたら、遅れてやって来た若者が係官に一喝されていた。「決まりが守れないのか!」 そんな組織が、いったん決め…

「麋角解」人閉蔵ひととざしてかくる・・・春秋 八葉蓮華

「麋角解」人閉蔵ひととざしてかくる・・・春秋 八葉蓮華 きょうは麋角解。仕入れたての知識で書くとこれは「びかくげす」と読み、意味は「大型の雄ジカの角が落ちる」。立春から春分、夏至、秋分、冬至を経て大寒まで1年を24に分けた二十四節気をさらに3分…

「生活防衛のための大胆な実行予算」国民に不安が広がる・・・春秋 八葉蓮華

今は財務省になった大蔵省は以前、予算の原案と一緒に一般会計総額の語呂合わせ案も出していた。例えば1996年度の75兆1049億2400万円は「何事もまず良い暮らし日本の世」だ。1000億円の位の1を「まず」と読ませるなど、かなり苦しい。▼翌97年度予算では、大…

仕事より家庭を優先する、家族と過ごす時間を作る・・・春秋 八葉蓮華

年齢層や住む場所の条件が毎回同じになるように回答者を選び、同じアンケートをとる「生活定点調査」を博報堂生活総合研究所が1992年以来2年ごとに続けている。今年は約1200の質問項目の半分で10年来の最高か最低の数字になる異変があったそうだ。▼100年に1…

東京タワー ライトアップ「ダイヤモンドヴェール」・・・春秋 八葉蓮華

年の瀬を感じる。3年前に人気を呼んだ映画「ALWAYS三丁目の夕日」を思い出す。東京タワーの影とともに。セドリック・クラピッシュ監督の新作「PARIS」はフランス版「三丁目の夕日」である。やはり年の瀬によく合う。▼どこにでもいる人たちのしみ…

皆さんが楽しんでくれればええ・・・春秋 八葉蓮華

宴会の季節。カラオケのマイクを握る機会も増えよう。カラオケの市場規模はCDの2倍を超え、海外にも広がる。発明者はさぞ笑いが止まらないのでは。そんなさもしい想像が全く間違いだと、音楽界に詳しい烏賀陽弘道氏の近著「カラオケ秘史」で知った。▼そも…

企業が支えるスポーツの多くが消えていく・・・春秋 八葉蓮華

長野冬季五輪は国内ではマイナーなアイスホッケーにも大きな光を当て氷上の格闘技の魅力を伝えた。当時、日本アイスホッケー連盟会長だった堤義明氏は「新アイスホッケー元年と呼びたい」と胸を張ったものだ。10年前のことである。▼日本も22年ぶりの五輪1勝…

湯たんぽ 省エネや環境ブームで復活・・・春秋 八葉蓮華

湯たんぽが大人気だ。熱すぎず、ぬるすぎず。ほかほか優しいぬくもりが、とろけるような眠りを誘う。電気じかけの製品に押されて消えゆく運命かと思いきや、省エネや環境ブームで復活。年に100万個だった需要が3年で3倍に増えた。▼大正12年創業の老舗マルカ…

教科書だけで「教育こそ国家なり」は実践できない・・・春秋 八葉蓮華

絶対王制全盛期のフランスに君臨した太陽王ルイ14世は「朕(ちん)は国家なり」と豪語した。という証拠はどこにもないそうだ。しかし、いかにももっともらしい。それっぽい偉人をサクラにして発言を創作する。そんな「名言」も歴史に残るという例にはなろう…

こぼれ落ちたときの安全網がない世では軋みも増すだろう・・・春秋 八葉蓮華

「100円玉の攻防」などという決まり文句があった。私鉄の労働組合が年中行事のようにストライキを構えていた時代の話だ。労使の賃金交渉が未明に及び、スト突入の瀬戸際で双方が取材陣に漏らす。「あと1枚2枚を譲らないんだよ」▼多分に儀式めいていたし、…

「ポンジ・スキーム」ねずみ講マネーゲームに浮かれて・・・春秋 八葉蓮華

20世紀初めの米国ボストンに希代の詐欺師がいた。チャールズ・ポンジという男だ。彼は国によって値段が大きく異なる「国際郵便返信用クーポン」なるものをネタに、90日間で利回り100%などとうたって巨額のカネを集めた。▼安値で仕入れたクーポンがその何倍…

どこにうそがあって、どこがほんとうだかわからなくちゃだめ・・・春秋 八葉蓮華

5代目古今亭志ん生のわがまま、ずぼらは有名だった。大看板になると、忙しいからときょう来てあしたは来ない。で、寄席の出番にしばしば穴があく。規則を守れなくては下の者にしめしがつかない。落語協会から出ていってもらおうという話にまでなった。▼その…

「環境や文化」大正期の貴重な和風建築・・・春秋 八葉蓮華

盛りはすでに過ぎたものの、カエデの紅と常緑樹の緑の対照がまだ十分美しい。ここは東京都心にある小高い丘。斜面を生かした回遊式庭園を木造2階の屋敷から眺め下ろす。敷石の間を埋める紅の落葉。深山の山荘を思わせる風景が入場料100円とは、お得だ。▼大正…

平和はあまりにも重要で平和主義者の手にはまかせられない・・・春秋 八葉蓮華

その昔、双子の兄弟姉妹では後から生まれた方が兄姉とされた。そちらの方が先に母の胎内に宿ったと考えたのだろう。明治政府はこれをやめ、先に世に出た方を兄姉と決めた。1874年のきょう。で、きょうは「双子の日」らしい。▼双子の兄弟がつくったと伝えられ…

「トキの消息」野生とは危険から身を守るすべを自ら学ぶ・・・春秋 八葉蓮華

迷子にもなるだろう。腹もすかそう。けがもしよう。もともと臆病な子なのだ。なんともせつない。でも、もう野に任せたのだ――。新潟県の佐渡島で放鳥されて2カ月半たつトキの消息をあれこれ聞くにつけ、そんな思いがちらつく。▼大空に放たれたのは雄雌5羽ずつ…

世界市場での日本の製造業の象徴・・・春秋 八葉蓮華

お手元の国語辞典を引いても無駄です。次の語の意味は? 「ヤスる」「セパる」「ぺしゃむ」――どれも中高生が使う若者言葉で、「明鏡国語辞典」を出版する大修館書店主催の「みんなで作ろう国語辞典!」キャンペーン結果報告に語義、用例が出ている。▼「ヤス…

アイ・キャント・スピーク・イングリッシュ・・・春秋 八葉蓮華

街角で英語でものを尋ねられ「ソリー! アイ・キャント・スピーク・イングリッシュ」で逃げようとしたら「ユー・アー・スピーキング」と切り返されたことがある。同じ前口上を振るノーベル物理学賞の益川敏英さんを見ていて、そんな些事(さじ)を思い出した…

 消えゆくものが、またひとつ・・・春秋 八葉蓮華

「最終号 ご愛読ありがとうございました」同じ言葉が表紙に並んだ月刊誌と週刊誌を手に取る。「読売ウイークリー」は前身の月刊誌から数えると65年で終刊を迎えた。1967年に新年創刊号を出した「月刊現代」は2009年1月号で終わりになる。▼来し方を振り返る特…

21世紀になったら世界が平和になると思ったのに・・・春秋 八葉蓮華

「想像してごらん」で始まり平和への願いを静かに歌った曲「イマジン」。歌手ジョン・レノンが書いた26行の原詞を、作家で音楽家の新井満さんが270行の散文詩へと意訳した本がある。やさしい日本語でこの曲の魅力を改めて広く伝えるのが目的だ。▼「本来は非…

大きなものが永久に大きい保証はない・・・春秋 八葉蓮華

ホンダは自動車レースの最高峰、F1選手権を「走る実験室」と考えてきた。車体やエンジンなどレースで得られた知識と経験が車づくりにフィードバックされ、知名度も上がる。創業者の本田宗一郎だけでなく全技術者の夢であったろう。▼そのホンダが今年限りで…

「ロルナの祈り」国籍を売買する犯罪・・・春秋 八葉蓮華

アルバニアの女がベルギー人の重症麻薬中毒患者と偽装結婚してベルギー国籍を得る。男にもう用はない。女は次にベルギー国籍を欲しがるロシア人の男と偽装結婚して……。近く公開される映画「ロルナの祈り」が、ヤミの国籍ビジネスの実態を描いている。▼日本で…

あなたはどう過ごしているのでしょう・・・春秋 八葉蓮華

拝啓、と書き始めましたが貴殿の名を存じません。しかし、あのモンタージュ写真が象徴する不敵なあなたです。1968年12月10日、あなたが東京・府中で東芝工場のボーナス3億円を強奪してから、間もなく40年になりますね。▼偽の白バイや発煙筒を小道具に、まん…

がんじがらめの決まりからは創意も工夫も生まれない・・・春秋 八葉蓮華

雑煮というのは不思議な食べ物だ。正月にはほとんどの家庭でこれを作るけれど、仕立ても中身も地域や出身地ごとに千差万別。角餅(もち)か丸餅か、焼いて入れるかいきなり煮るか、すましか味噌(みそ)か……。小豆が欠かせない地方だってある。▼さまざまな風…

自動車文明そのものの転機なのだろうか・・・春秋 八葉蓮華

地球を80日間で1回りしてみせる――。友人らと2万ポンドを賭けて冒険の旅に出た英国紳士の活躍、といえばジュール・ヴェルヌの「80日間世界一周」だ。1872年の小説である。この時代、汽船や鉄道は長足の進歩を遂げていた。▼だから賭けに勝てると主人公は踏んだ…

師走に入り、人の列が目に付く・・・春秋 八葉蓮華

きっちり1分おきに女性の声が宣告する。誠に申し訳ありませんが、ただいま電話が大変に込み合っております。2回、3回、4回と待つうちに、流れる音楽まで耳障りに聞こえてくる。長さが見えない行列に、不安と焦燥が増幅する。▼師走に入り、人の列が目に付くよ…

暮れの風景はお花見とともに格好の落語ネタ・・・春秋 八葉蓮華

落語家の柳家喬太郎さんが「秋の噺(はなし)ってとても少ないんですよ」と言ったのを聞き覚えている。「すぐ思い浮かぶ古典といえば『目黒のさんま』ぐらいで」。物思う季節だ。欲やら業やらをむき出しにする落語向き人物は、なるほど束(つか)の間減るの…