2009-01-01から1年間の記事一覧

煩悩の数を超えて鐘の音が響き渡ったら「大納会」2009年が暮れていく・・・春秋 八葉蓮華

中島みゆきさんに「百九番目の除夜の鐘」という歌がある。108と決まった煩悩の数を超えて鐘の音が響き渡ったらどうなることか。明日はやってこない、悲しみはいつまでも止(や)みはしない。そんな情景を綴(つづ)ったみゆき節が胸をつく。 今年はもしかす…

経済なき道徳は労多くして功なし、道徳なき経済は永遠の道おぼつかなし・・・春秋 八葉蓮華

人間の背丈の2倍もあろうかという石造りの門柱に、大きな漢字が刻まれている。左の柱は「経済門」、右は「道徳門」とある。二宮尊徳の教えを伝える静岡県掛川市の大日本報徳社は、訪れる人たちを自然と改まった気持ちにさせる。 2つの門柱は高さも形も同じ…

夢と熱気をなくした時代のどこか寂しい光景を高ぶりもなく眺める私たち・・・春秋 八葉蓮華

NHKの「紅白歌合戦」は1962年に80%を超す視聴率を記録した。目玉は人気絶頂の吉永小百合さん初出場だったという。曲は「北風吹きぬく……」と始まる「寒い朝」だ。切なくも明るいあの歌は高度成長期の心情そのものだろう。 世の中はまだまだマズしく格差に…

「理想と現実」手厚い社会保障は結構だが、将来の財源は不安だらけ・・・春秋 八葉蓮華

「経済学賞ではなかった。しかと肝に銘じなければ」。大統領がノーベル平和賞を受賞したとの報に、こう評した人がいた。オバマ米大統領にも通じる寸言だが、そうではない。1990年にソ連のゴルバチョフ氏が受賞した時の話だ。 発言の主は当時のソ連情報局長だ…

「エヴァンゲリオンのシンジ君」難題山積、立ち止まるのは許されない・・・春秋 八葉蓮華

鳩山首相にあだ名をつけるとしたら、どんな呼び名がぴったりか。最近あるテレビ番組でこの話題が出た。出演者の一人で、アニメや漫画にも詳しい経済評論家が答えたのは「エヴァンゲリオンのシンジ君」。思わずぷっと噴き出した。 エヴァンゲリオンは10年余り…

「クリスマスキャロル」国境の眠れる村に聖夜くる・・・春秋 八葉蓮華

日本では実感しにくいが、世界の多くの人々にとり、今夜は特別なひとときだ。日本の元旦に近い。米本土の最南端にある保養地、フロリダ州キーウェストのクリスマスイブを取材したことがある。店は早じまい。人影もまばらだった。 いつもと違う、静かなアメリ…

路面電車「セントラム」気軽に出歩ける街に、中心市街地ににぎわいを・・・春秋 八葉蓮華

雪の降りしきる北陸は富山市の大通りで、真新しいレールに出合った。この街にきょう開業する路面電車「セントラム」の軌道だ。城跡を囲んで市内をぐるりと回る環状線を走るのは3台の新鋭車両。ピカピカの電停が客を待っている。 クルマ社会のなかで邪魔もの…

ひとときの暖を求めて、温かく迎え入れて、長居をさせず背中を押して送り出す・・・春秋 八葉蓮華

我々の遠い先祖は、冬の来る前に穴を掘り、熊(クマ)や狐(キツネ)やの獣と共に、小さくかじかまつて生きたへていた。おそろしい冬において、何よりも人々は火を愛した――。詩人の萩原朔太郎は、たき火を囲む心を「先祖の情緒の記憶」と呼んだ。 道端のたき…

「時代の空気」先行きへの不安から人々がやすらぎを求めている・・・春秋 八葉蓮華

「ジョージアで一休み」。そんな宣伝文句の缶コーヒーのCMがテレビに流れたのは、1990年代半ば。これをきっかけに売り上げは大きく伸びた。商品名入りの景品のプレゼントに4400万通も応募が集まり、宣伝作戦は当たった。 発売元の日本コカ・コーラ会長、魚…

温暖化ガス削減、人間をとりまく環境を変えることは、国の改造につながる・・・春秋 八葉蓮華

温暖化対策の国際会議でデンマークは議長国として力不足だったものの、開催地にはふさわしかった。19世紀後半、森林を3倍に増やした歴史がある。必ずしも環境の保全が狙いではなかったが、温暖化ガスをさぞ吸収したことだろう。 内村鑑三が「デンマルク国の…

ワンマン、強いリーダーシップ、急成長させた功労者・・・春秋 八葉蓮華

政治資金規正法違反の罪で小沢一郎民主党幹事長の秘書の初公判が開かれたが、これで小沢氏の政権内での威光が弱まることはなさそうだ。多数の国会議員を配下に従えて、時に強面(こわもて)を発揮する。威圧感に鳩山由紀夫首相もかしこまる。 あの人に逆らう…

「裏を見せ表を見せて散る紅葉」冤罪に泣く人を出さないための道・・・春秋 八葉蓮華

「裏を見せ表を見せて散る紅葉」。良寛上人がいまわの際に弟子と取り交わした句だ。かつてロッキード事件の法廷で弁護人がこれを朗々と詠じたことがある。被告人に不利な「表」の証拠しか見せない検察官をやり込めた弁論だった。 表も裏もためらいなくさらし…

予算編成の風物詩「陳情大会」のひとコマの様子が今年は大きく変わった・・・春秋 八葉蓮華

演出者が中央省庁の役人、主演・族議員、観客・全国の首長と地方議員。かつてこの時期になると、こんな芝居が連日開かれていた。道路や治山治水、下水道などの予算獲得に向けて気勢をあげる陳情大会だ。会場はいつも満員だった。 舞台と観客の一体感は迫力が…

大胆な言い合い「皇室と政治」2人はどんな腹づもりだったのか・・・春秋 八葉蓮華

「学問のすゝめ」を書いている最中、筆が少々過激に及んだことを気にしたのだろう。福沢諭吉がこんな手紙を知人に出している。「此節(このせつ)は余程(よほど)ボールド(大胆)なることを云(い)ふもさし支えなし。出版免許の課長は、肥田君と秋山君な…

生き物のような経済「フランケンシュタインのような怪物」・・・春秋 八葉蓮華

ポール・サミュエルソン教授に、しかられたことがある。講演の後に走り寄って、著書にサインを頼んだら、こちらの顔をジロリと見てこう言った。「経済学は厳しい学問なのですよ」。20年前のボストンでの恥ずかしい思い出である。 折しも貿易摩擦と日本叩(た…

「自転車ショー」出展する企業も使用する面積も年を追って拡大している・・・春秋 八葉蓮華

ふだんは企業などの展示コーナーが並ぶ国際見本市会場。そこに長い試乗コースがしつらえてある。背広の男性や普段着の女性がヘルメットをつけ、最先端のスポーツ自転車のペダルをこいでいる。きょうまで千葉市幕張で開かれている自転車見本市の風景だ。 自動…

オバマ米大統領が受け取るノーベル平和賞の賞金約1億2千万円・・・春秋 八葉蓮華

オバマ米大統領が受け取るノーベル平和賞の賞金は、円換算で約1億2千万円にのぼる。大統領はこの巨額の臨時収入を慈善団体に寄付するつもりだが、さて税金の扱いは――。納税額をめぐる議論が、早くも米国内でにぎわっている。 オバマ大統領夫妻の昨年の所得…

国民投票の末「憲法改正案」簡単に人はなびくのか・・・春秋 八葉蓮華

世のできごとが、あまりなじみのなかった英単語を有名にすることがある。去年の経済危機はグリード(greed・強欲)を知らしめた。最近目にして覚えたのがミナレット(minaret)。イスラム教寺院に付属する尖塔(せんとう)を指す言葉だ。 「今後…

はかりごと「略」捜査を略す、秘書を逮捕したときの勢いはどうしたのだろう・・・春秋 八葉蓮華

「略」というのは不思議な文字だ。策略や略取のように「はかりごと」を指すかと思えば省略だ略歴だと「はぶく」の意味でも盛んに使われる。刑事事件では面倒な審理を一切はぶくのが略式起訴だから、ときに運命を分ける略の字だ。 西松建設による一連の献金問…

「夢の超特急」せっかくの技術を国内に眠らせておくことはない・・・春秋 八葉蓮華

米騒動と新幹線。おかしな組み合わせだが、両者には浅からぬ因縁がある。そんな話をさいたま市の鉄道博物館で知った。東海道新幹線最初の営業用車両「0(ゼロ)系」の展示に合わせ、この博物館がまとめた資料が教える鉄道史の一こまだ。 時は大正の半ば。日…

来る年への決意、新しい手帳を手に、思う・・・春秋 八葉蓮華

デジタル機器を使っている人は別だが、いまはスケジュール管理が面倒な時期だ。2009年版の手帳は、来年1月半ばまでしか書き込めない。それ以降の予定は余白に書くしかないから、新しい手帳に切り替える時に写し忘れやすい。 それでも12月半ばに新しい手帳に…

買い物は先送りがお得。それが若者の常識・・・春秋 八葉蓮華

若者はなぜ自動車を買わなくなったのか。自動車メーカーで販売戦略に携わる人が、ある研究会で理由をあげた。所得の減少。公共交通の充実する都市部への人口集中。未婚率の上昇。こうした要因に加え価値観の変化も大きいという。 「デートにクルマはいらない…

もの申すのは容易ではない「物言えば唇寒し」顔色をうかがって行動する・・・春秋 八葉蓮華

日本監査役協会の役員と懇談した折に、トップ経営者の暴走に監査役は有効に対処できるのか尋ねてみた。「トップが密(ひそ)かにしていることを即座に知るのは難しいですね」。協会長の築舘勝利東京電力監査役は悩ましげに答えてくれた。 会長や社長がおかし…

どんな激安店も仰天する値段・・・春秋 八葉蓮華

ペットボトルの飲み物が24本で123円。レトルトカレーは10袋で88円。どんな激安店も仰天する値段だ。ところが最近、あるネット通販のサイトでこんな値付けが独り歩きする珍事が起きた。入力するときに数字を取り違えたらしい。 セット売りの商品なのに単品価…

一画家にとどまらぬ大きさ「大唐西域壁画」時代も地域も超えていく・・・春秋 八葉蓮華

10年間は絵で金をもらうな。古典の研究を怠るな。一流のものだけを見ろ。模写を続けろ。いい道具だけ使え――。東京美術学校(現東京芸大)の日本画予科に合格した16歳の平山郁夫少年に、著名な彫金家だった大伯父の清水南山はこう訓戒を垂れたという。 40年以…

「景気のせいなのか」」自分の目で問題を発見、あぶりだすことこそ先決・・・春秋 八葉蓮華

企業が大きくなると、会議が増え意思決定や実行のスピードが遅くなる。制御機器メーカーのオムロンを興した立石一真さんは「大企業病」と名づけた。創業50年目の1982年頃(ごろ)から、しきりにこの言葉を使い社内に危機感を訴えた。 当時は欧米が不況。日本…

エコ時代の都会人の心に響く、クラシックカーの簡素な風情・・・春秋 八葉蓮華

最先端の技術を極めた製品には、鋭い美しさがある。時を経た古い工業品には、生き物に似たぬくもりがある。近ごろ増えたハイブリッド車は未来社会を予感させる流線型。街中から姿を消した往年の名車は、凸凹した容姿が愛らしい。 先週末、東京・神宮外苑に81…

風雅に響く「日本再発見塾」日本を元気にしようとする試み・・・春秋 八葉蓮華

「武蔵」「大和」といえば、戦艦を連想する人が多いだろうが、明治初期まで使われた旧国名である。多くが現在の県名よりも風雅に響く。異論もあろうが、例えば千葉よりも「安房」、福井よりも「若狭」がずっとゆかしく、美しい。 なかでも「美作(みまさか)…

人々の工夫で最期の一花、解体を待つ建物ならではの現代アートの催し・・・春秋 八葉蓮華

東京・港区のフランス大使館で、ちょっと変わった現代アートの展示会が始まった。今月初めまで実際に大使館として使っていた1950年代の建物を丸ごと転用。室内や壁を約70組のアーティストが思い思いの作品で飾っているのだ。 絵あり映像あり立体作品あり。階…

世界中にあふれたマネーが暴れる外国為替市場は、現代の戦場・・・春秋 八葉蓮華

秋空のどこからか、1匹のトンボが飛んで来る。羽を休めようと、ふと選んだ場所が悪かった。武将が立てた槍(やり)の先っぽにとまった途端に、スーッと真っ二つ。戦国時代の三河の名将、本多忠勝が愛用した長槍「蜻蛉切(とんぼきり)」の逸話である。 岡崎…