便利さ・治安の良さで普及が進んだ「自販機王国」に逆風・・・春秋 八葉蓮華

 自動販売機の歴史は紀元前のアレクサンドリアにさかのぼるという。貨幣を入れると重みで弁が開き、水を得られる仕組みだったらしい。実在の証拠はないが図面は残る。そして19世紀に英国で、たばこ、菓子などの自販機が登場した。

 20世紀前半は米国、後半は日本が自販機を進化させた。工業力の発展に人手不足。さらに日本ならではの事情として、商品やお金の詰まった箱を路上に置ける治安の良さや、若者や子どもが自由に使える小金を持っていたことも普及を後押ししたと、生活史に詳しい鷲巣力氏は著書「自動販売機の文化史」で説く。

 かつての自販機は中身を冷やすばかりで、飲み物が売れるのはもっぱら夏。そこへ冷温両用機を開発したのが今のポッカコーポレーションだ。冬の温かい缶コーヒーは外回りのセールスマンらに歓迎され同社は社業を立て直す。先日サッポロが出資を決めたのも、ポッカの持つ自販機網が魅力だったからとされる。

 便利さや近未来イメージで普及が進んだ自販機にも、最近は逆風が吹き始めている。若者の間では節約とエコを兼ねて水筒を持ち歩くのがカッコいいという。昨年の清涼飲料の販売額は前年に比べ1割以上減った。設置場所である工場などの統廃合で台数も減り続け、治安にも黄信号。自販機王国の転機だろうか。

春秋 日本経済新聞 8/14
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