一国のリーダーを決める衆院選、情報や組織を掌握できないときの怖さ・・・春秋 八葉蓮華

 広島県江田島市海上自衛隊幹部候補生学校では1羽のフクロウが大講堂の中を見下ろしている。演壇の上の玉座を飾る彫刻のことだ。大講堂は海軍兵学校のころから入校式や卒業式に使われ、士官になる大勢の若者を送りだしてきた。

 フクロウはローマ神話の知性の女神、ミネルバの使いとされる。海軍は軍事も数学、理科も最高水準の教育を実践しているとの自負があった。誇りの表れがフクロウの彫刻だったらしい。士官養成の場を東京の築地から移転する際に江田島を選んだのは、都会から遠く離れ教育に集中できると考えたからだという。

 そんな恵まれた教育で鍛えられた人材が軍の要職を占めていたにもかかわらず、無謀な戦争に突入した。フクロウが象徴する知性とは知識が豊かなだけでなく、的確に判断する力も含まれるはずだ。講堂の彫刻もさぞ無念だったのではないか。リーダーが情報や組織を掌握できないときの怖さを今更ながら感じる。

 旧首相官邸の屋上には東西南北を向いた4羽のミミズクの石像が今もある。「森の賢者」と呼ばれるミミズクはフクロウの仲間で、やはり英知の象徴とされてきた。新しい官邸に石像が移らなかったせいか、政治が指導力を欠いた状況が長らく続いている。一国のリーダーを決める衆院選投票まで2週間になった。

春秋 日本経済新聞 8/16
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