2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

「夢とやさしさ」守れそうもない約束はしない方がいいです・・・春秋 八葉蓮華

上京で離れても電話するよと旅立つ少年が言う。「守れそうにない約束はしない方がいい」と、少女が凜(りん)とたしなめる。25年前にヒットした「卒業」の一節だ。歌った斉藤由貴さんは10代だったが、作詞の松本隆氏は団塊世代に属する。 都会の華やぎに恋人…

生産現場 低賃金や残業の強制など、過酷な労働条件・・・春秋 八葉蓮華

iPad(アイパッド)、キンドル、プレイステーション、Wii。どうも「横文字」ばかりで恐縮するが、世界的に知られたデジタル製品の面々だ。いずれの製品の生産も手がけている会社が、台湾にある。鴻海(ホンハイ)精密工業グループだ。 製造したり設計…

伸びる分野で思い切った手を打つ、技術革新をとらえ、臨機応変に投資する・・・春秋 八葉蓮華

36階建て、147メートルの東京の霞が関ビルは、日本初の超高層ビルとして知られる。最初の計画では9階建てだった。建築史に名を残すことになったのは、建て替える建物が予定より増えて、大型のビルに設計し直す必要が生じたためだ。 ときは1960年代前半。新…

「厄雑」を払うあらゆる手を考えないと大相撲の先がない・・・春秋 八葉蓮華

昔の人は「やくざ」という言葉を「厄雑」とも書きあらわしたらしい。作家の正岡容(まさおかいるる)がまとめた「明治東京風俗語事典」には「厄雑のもの」なる語が見える。ひどいもの、つまらないものの意味だとあるから、なかなかうまい当て字だ。 現代のヤ…

映画館が復活「まちなかキネマ」開館記念に藤沢作品が原作の「花のあと」・・・春秋 八葉蓮華

ふるさとは忘れがたし。作家の藤沢周平さんもそうだった。エッセー集「小説の周辺」のなかで「郷里の四季の移り変わりを思いうかべる癖がとれない」とこぼしている。小説にしばしば登場する海坂(うなさか)藩は故郷の庄内藩がモデルである。 その山形県鶴岡…

悲しいベストセラー「交通の教則」帰り道に、ゴミ箱に放り込んでいく・・・春秋 八葉蓮華

「1Q84」も「告白」も目じゃない、という大ベストセラーがある。発行部数は毎年なんと1400万部。クルマの免許の更新のとき、講習でかならず渡される教本だ。全日本交通安全協会なる財団法人がほぼ一手に引き受けてきた。 これほどウマい話はないだろう。ふ…

職業としての政治を志す名の連なり、参院選の立候補予定者・・・春秋 八葉蓮華

古典と伝統。似たようでも少し意味が違うらしい。古典には社会や文化のお手本、難しく言えば規範がより多く含まれている。どこかでそう聞いて、なるほどと思った。本であれば、傍線を引き引き心に刻む、といったイメージだろう。 マックス・ウェーバーの「職…

生まれた年を嘆く「人生、運次第」日本人の価値観が勤勉から運やコネ重視へ・・・春秋 八葉蓮華

人生の成功を決めるのは「勤勉さ」か「運やコネ」か。日本を含め多くの国が参加する意識調査の中にそんな問いがある。2005年の結果では日本で「運やコネ」を選んだ人は41%。米、中、韓は20%台、フィンランドでは10%台だ。 1995年の調査では日本での「運や…

山の頂上へと押し上げるたびに、ころころと落ちていく・・・春秋 八葉蓮華

古代フェニキアの王女エウロパの復讐(ふくしゅう)か。大神ゼウスが雄牛となって王女を連れ去ったというギリシャ神話。エウロパはヨーロッパという地名の語源とされる。その神話の故郷ギリシャが震源となり、欧州単一通貨ユーロが揺れている。 金融政策はひ…

チャイニーズドリーム、繊維産業上位企業に1代で育て上げ・・・春秋 八葉蓮華

17歳で工場勤務からスタートし、52歳の現在は企業集団のトップとして1万5000人を率いる。レナウンの筆頭株主になる中国企業、山東如意科技集団を1代で築き上げた邱亜夫氏の半生を、25日の日経産業新聞が詳しく伝えている。 国営毛織物工場に入った邱氏は、…

国際社会の結束が試されるところだが、足並みはそろうだろうか・・・春秋 八葉蓮華

カンを読むかブツを追うか。などと警察では言う。犯人を挙げるための、2つの大きな道である。カン(鑑)というのは被害者をめぐる様々な事情。ブツ(物)とは遺留品などの物証だ。それぞれを地道に調べて刑事たちは真相に迫る。 3月に黄海で起きた韓国海軍…

線引きにはあまりとらわれない「常用漢字」社会生活における漢字使用の目安・・・春秋 八葉蓮華

60歳を過ぎて随筆を書き始めた女優の沢村貞子は、知らない言葉があると、意味を調べてはせっせと手帳に書き留めていた。ベンチャービジネス(知識集約型中小企業)、アフォリズム(金言、定義)などなど。カタカナ語が多かった。 その中に、森羅万象(しんら…

現場には発見がある。もっと現場に出よ 成長への道筋を・・・春秋 八葉蓮華

松下幸之助さんの大番頭といえば、高橋荒太郎さんの名前が挙がる。朝日乾電池という会社で経理の制度をつくった実績を見込まれて、松下電器産業(現パナソニック)に転じた。が、「経営の神様」が買った点はほかにもあったろう。 需要が減り始めた商品から伸…

なまけもの「三年寝太郎」使えぬ法律を施行する矛盾に目をつぶる・・・春秋 八葉蓮華

ばあさまに甘えてぐうたらの限り。揚げ句、火がなくても煮える鍋やシ者を生き返らせる火吹き竹などインチキな品を思いつき、働き者の農民や長者からお金を巻き上げる。民話「三年寝太郎」は何がいいたいのか、思案することがある。 戯曲に仕立てた木下順二も…

急速に普及した文明の利器「ケータイ」マナーモードへの切り替え・・・春秋 八葉蓮華

賃金交渉が大詰めを迎えつつあり、部屋の中を緊張感が満たした。それを一気に緩めたのは携帯電話の着信ボイスだった。「彼女から電話です」。次の瞬間、組合側の1人が真っ赤な顔で立ち上がり、ケータイを手に部屋を出て行った。 労使交渉の当事者から聞いた…

戦争や政情不安、いまバンコクが混乱の中にある・・・春秋 八葉蓮華

バンコクは、いわゆる「美しい」町ではない――。50年余り前、民族学者の梅棹忠夫氏がタイを訪れた感想だ。道は整然とせず、建物は不ぞろいでどぶ川も多い。ただし、つんとすました冷たさがなく、日本の都市に似ているとも記す。 その親しみやすさは今も日本人…

すっかり軽くなった首相の座に、今、約束をいとも軽く破る・・・春秋 八葉蓮華

「魯魚(ろぎょ)の誤り」という。形が似通った文字を間違えることをたとえた、中国の古い言葉だ。虚と虎、章と草、さらには烏と焉と馬。いにしえ人はいろんな例を引いた。「魯魚烏焉馬」を一緒くたにして「ロギョウエンバ」などとも言った。 漢字を使って暮…

隙をついてウイルスは暴れ「口蹄疫」ものものしい呼び名にふさわしい疫病・・・春秋 八葉蓮華

英語では「フット・アンド・マウス・ディジーズ」。直訳すると「足口病」だ。それが「口蹄疫(こうていえき)」と難しい名になったのは、明治期にこの家畜の病気が日本に侵入してしばらく後だという。「疫」と書けばすなわち流行病の意味になる。 牛や豚や羊…

路線の隔たりの大きい「ねじれ」政治空白への危機感・・・春秋 八葉蓮華

明治初年の日本をたち、列強諸国をつぶさに見て回った「岩倉使節団」は英国でも驚いてばかりいた。随行した久米邦武による「米欧回覧実記」は、英国議会や政党の様子をこと細かに記して面白い。すでに二大政党が丁々発止なのだ。 下院議員は「政府党」と「抗…

「イエロー・ハンカチーフ」人々の地域への愛着が再建の土台・・・春秋 八葉蓮華

刑期を終えて出所した中年男が偶然出会った若い男女に背中を押され妻の元を目指す……。6月公開の米映画「イエロー・ハンカチーフ」の筋書きだ。似ているなと思ったら、山田洋次監督作品「幸福の黄色いハンカチ」のリメークだ。 「幸福の……」の舞台は北海道夕…

海外旅行「日本への旅」観光立国の名に恥じぬ受け皿も整えたい・・・春秋 八葉蓮華

競馬で大もうけした寅さんが気前よく、おいちゃんたちをハワイに連れて行こうとする。ところが旅行会社が代金を持ち逃げし、夢はあえなくパー。近所総出で送り出してもらったから格好がつかず、店の2階にじっと潜むはめに……。 「男はつらいよ」シリーズのな…

最後まで挑んでいく姿を「世界最高峰の試合W杯」出場32カ国の中でまだ下から5番目・・・春秋 八葉蓮華

1990年7月9日、月曜日の未明だった。東京本社編集局の光景を思い出すことがある。朝刊を作り終えた連中が缶ビール片手に興奮を冷ましている。やがて、つけっ放しのテレビでサッカーが始まる。が、誰も見ようとしない――。 流れていたのはローマから生中継さ…

天を突く「東京スカイツリー」迫力を感じる東京の下町一帯・・・春秋 八葉蓮華

ここからも見えるかな……。そう思って電車を降りてみると塔は思わぬ大きさで眼前にあった。話題の東京スカイツリーだ。建設現場のざわめきから少し離れた東武伊勢崎線の曳舟駅。高さ370メートルほどに達した塔は威風あたりを払う。 遠く高尾山からも望めるそ…

米軍統治「ヤポネシア」一枚の布を織りなしている複雑な事情・・・春秋 八葉蓮華

先ごろ亡くなった立松和平さんは「ヤポネシア」にこだわっていた。東アジアの端っこに緩く弧を描いて連なる沖縄や奄美の島々、そして日本の本土。その歴史と文化を眺めわたし、ひと繋(つな)がりの空間としてとらえたのがヤポネシアだ。 奄美大島に長く住ん…

メキシコ湾の惨事、周囲の生態系にじわじわと被害が広がっている・・・春秋 八葉蓮華

新潟県の弥彦神社は石油の神様である。境内には、日本最古とされる明治時代の石油精製装置が奉納されている。地域の採掘会社を訪ねると部屋の一角にまつられた立派な神棚にお目にかかる。発掘の成功や、作業の安全を祈るそうだ。 近代文明を象徴する産物と思…

高度消費社会の波に乗り花開いたかに見えた夢が、力尽きる・・・春秋 八葉蓮華

蒸気機関車が引退し始めたころからか。鉄道好きの中には、廃止が決まった列車にわざわざ乗りに出かけたり、写真に収めたりする人が結構いる。近年は遊園地や百貨店でも、閉鎖が決まると人が集まり、名残を惜しむ光景を目にする。 この連休中、都心の赤坂見附…

伸び続けてきた「化粧品市場」あの手この手で、美を求め続ける・・・春秋 八葉蓮華

赤と白と黒。この3つの色でどうやって自分を美しく見せようかと、江戸時代の女性たちは競った。赤は唇、ほおや目のふちを染める紅、白は顔や首筋につけるおしろい。黒はおはぐろ、まゆずみ。化粧品は今よりずっと限られていた。 顔が引き立って見えるように…

こどもの日「父母に感謝する」ざまなものへの敬愛や感謝・・・春秋 八葉蓮華

祝うのは当たり前として、願ったり期したり感謝したり。それぞれの祝日にはいろいろな意味が込められている。それを定めているのが「国民の祝日に関する法律」だ。短くて読みやすいので、一読をお勧めする。なかなか勉強になる。 きょうの憲法記念日は「国の…

「八十八夜」日本のお茶が欧州に初めて輸出されてちょうど400年・・・春秋 八葉蓮華

きょう2日は立春から八十八夜になる。この日に摘まれた新茶は不老長寿の縁起物だ。しかし、この不順な気候である。静岡・牧ノ原台地の茶畑を訪れると本格的な出荷はまだこれから。唱歌にあるように、夏の足音を聞きたい昨今だ。 天気は気がかりだが、緑茶の…

ウランフの失脚から44年の歳月「10年の動乱」文革に関する研究がほとんどできない・・・春秋 八葉蓮華

1966年5月1日、中国・内モンゴル自治区の最高指導者だったウランフは北京入りし、自由を奪われた。「10年の動乱」と呼ばれる文化大革命が正式に始まったのは半月後。少数民族出身の代表的な政治家は早々と打倒されていた。 その後、内モンゴルでは「民族の…