2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

放鳥されたトキ、雌4羽だけ海を越えたのは想定外・・・春秋 八葉蓮華

昨年9月に新潟県の佐渡島で自然に放たれたトキが、雄はすべて佐渡にとどまっているのに雌が全部本州に渡り、離れ離れになってしまったそうだ。へえと思い、次に「そうだろうな」とうなずく。最後には、生きるとはどういうことかと考えさせられる話だ。 放鳥…

「時刻表」旅への思いをかき立ててくれる・・・春秋 八葉蓮華

旧ソ連時代につくられたアネクドート(社会風刺の小話)のひとつに、こういうのがあったそうだ。モスクワの書店で客が店員に聞く。「きみきみ、国鉄の時刻表を探しているんだが」「ああ、それならフィクションの棚にありますよ」 ダイヤなど乱れっぱなしの鉄…

「北海道」開拓者魂を受け継ぎ、伝統や既成概念にとらわれない・・・春秋 八葉蓮華

企業収益の悪化に地価下落。頼みの綱の1つだった海外からの観光客も激減した。暗い指標に目が向きがちだがこれらはあくまで総計や平均値。逆境の中にも明るい数字はあり、そのいくつかに意外な共通項を見つけた。「北海道」だ。 10年前、流通業界で北海道現…

「満開の花」身を振り絞るかのような渾身の頑張りで圧倒的な量感で迫る・・・春秋 八葉蓮華

東京の桜はゆったりと百花乱れる花の4月へ向かっている。農民は稲の種まきの時期を告げる桜の開花を田の神としてあがめた。それが花見の起源だという。「桜ほど酒喰(くら)ふ樹はなかりけり」(雪膓(せっちょう))と、花の盛りを愛(め)でるのもいい。 …

失策エラー「草野球並み」観客はあきれてそっぽを向く・・・春秋 八葉蓮華

打たれて失点する分には打って取り返してやるという反発心もわくが、失策で失った点は取り戻せない。プロ野球横浜の元監督、権藤博さんが本紙で持論の経験則を披露していた。エラーの失点は「こんなことで取られちゃった」と尾を引くだけなのだという。 ワー…

「にらみ」邪気を払う御利益があるというが・・・春秋 八葉蓮華

吉例にならいひとつにらんでご覧に入れまする――。歌舞伎の市川家が伝える「にらみ」の口上である。カッと目を見開き、黒目を寄せる。強烈な波動が伝わってくる。邪気を払う御利益があるというが、なるほどと思わせる力がある。 にらまれる快感にしびれるのは…

延長10回死闘 WBC日韓ともに水準の高さを大いに見せつける・・・春秋 八葉蓮華

仕事が手につかない人も少なくなかっただろう。ワンセグ携帯の小さな画面を眺めて歓声を上げたご同輩もたくさんいたはずだ。野球の面白さを久々に堪能させてくれた、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)決勝戦である。 延長10回、死闘の末に連覇を…

「気象の罠」風の変化・ズレに遭って着陸に失敗したものらしい・・・春秋 八葉蓮華

シアはshearとつづり、普通は複数形にして植木バサミのような大バサミを指す。転じて切断することやズレを意味し、ウインドシアは風の速さや向きの変化・ズレをいう。成田空港での貨物機事故は、風の変化・ズレに遭って着陸に失敗したものらしい。 突風…

今日は彼岸明け、もう「慈母のような春」は来ている・・・春秋 八葉蓮華

「自然は春に於(おい)てまさしく慈母なり」。明治大正期の作家徳富蘆花は「自然と人生」に収めた小文にそう書き、続けて、この季節には「人は自然と融け合ひ、自然の懐(ふところ)に抱かれて、限りある人生を哀(かなし)み、限りなき永遠を慕ふ」と記し…

「1万2000円で何ができるか」給付金「社会のため」に使うという選択肢・・・春秋 八葉蓮華

カネに色はないという。しかし持っていて何となく落ち着かないカネも、確かにある。定額給付金もその一種だと感じる方もいるのではないか。1人1万2000円の使い道について、経済学者の大竹文雄さんが自身のブログで、寄付をしてはどうかと提案している。 あ…

「常用漢字」ちょっとした形の差で音も意味もまったく違ってくる・・・春秋 八葉蓮華

しばらく前にラジオで聞いた俳人、黒田杏子さんの話が面白かった。名前をなかなか「ももこ」と読んではもらえない。それどころか、書き間違えられてしまうことさえある。否子(いなこ)。吝子(けちこ)。さらに木と口がひっくり返って呆子(ぼけこ)。楽し…

「社長人事は恐ろしい」最も重要な仕事は後継者の育成・・・春秋 八葉蓮華

トップ経営者の座にひとたび就くと、降りたくなくなる人が少なくない。業績が好調なら居心地がよいし、悪ければ挽回(ばんかい)するまでとなる。東芝の西田厚聡社長は赤字決算を見込む中、4年で交代すると発表したので、普通は引責である。 しかし記者会見…

「分かっちゃいるけどやめられねえ」何とか悪循環を断ち切りたい・・・春秋 八葉蓮華

チョイト一杯のつもりで飲んで――。詞を書き出しただけで、調子のよいメロディーが耳によみがえってくる。クレージーキャッツの植木等さんが歌った「スーダラ節」だ。この不世出のコメディアンが没して、今月末で2年になる。 ご本人は戸惑っていたらしいが、…

「日和見」政策を世に問う最後の手立て・・・春秋 八葉蓮華

ペリー提督の率いる黒船4隻が浦賀沖にやってきたとき、徳川幕府はうろたえながらも思いきった試みに出た。未曽有の国難を乗り越えるにはどうしたらいいか。諸国諸大名をはじめ役人や藩士、江戸の町民からさえ意見を募ったのだ。 半藤一利さんの「幕末史」が…

「ぼくと1ルピーの神様」外交電報も小説も使う言葉を注意深く選ぶ必要がある・・・春秋 八葉蓮華

ことしのアカデミー賞8部門をさらった映画「スラムドッグ$ミリオネア」の原作「ぼくと1ルピーの神様」を書いたヴィカス・スワラップは、現役の外交官だ。南アフリカの首都、プレトリアのインド大使館で大使に次ぐ立場にある。 先週、東京でインタビューし…

「いま社会に旅立つ」大正ロマン風の女学生袴姿それぞれ活躍してほしい・・・春秋 八葉蓮華

街なかでふだん見かけない袴(はかま)姿の女性の集団を目にすると、春の訪れに気づく。大学の卒業式で大正ロマン風の女学生姿が流行し始めたのは20年余り前。一時のブームに終わらず、いまや制服のない高校や、小学校にも広がっている。 城一夫氏の著書「日…

「正しい柔道」世界に広がる“JUDO”ニッポン「正しい柔道」・・・春秋 八葉蓮華

フランス人は柔道に東洋の神秘を見る。小さい者が大きな者を投げる。柔道着を見れば着物を連想し、黒帯を見れば格好いいと思う。今やフランスは、競技者登録人口が56万人と、日本の20万人を大きく上回る柔道大国となった。 作家の村上春樹さんとよく似た名前…

あくせくした渇望感はなく、微妙にユルい中年ロック「ユニコーン」・・・春秋 八葉蓮華

朝倉哲也は昼間は平凡なサラリーマンを装っていた。油脂会社の経理課で働きながら、夜はボクシングで肉体を鍛え上げる。やがて巨大資本を乗っ取る計画が動き出す……。大藪春彦が昭和39年に書いた長編「蘇える金狼」である。 企業社会を舞台にした高度成長期の…

敵なしの天才少年、絶対的な差がつく「俺は名人になれない」・・・春秋 八葉蓮華

芹沢博文という才能あふれる将棋の棋士がいた。ある日、彼が屋台のおでん屋で飲みながら激しく泣いたという話を作家の山口瞳が著書「血涙十番勝負」で紹介している。「ああ、俺(おれ)は、名人になれないんだな」との思いが、突如としてこみ上げたのだとい…

「母のしぐさやクセを知る」お母さん生きていますよ。希望を・・・春秋 八葉蓮華

「円また高値更新」が夕刊1面のトップにある。ただし1ドル=203円80銭だ。首相は福田赳夫氏、安倍晋太郎官房長官、中川一郎農相、園田直外相……。30年1世代という通り、この人たちの子らが今の有力政治家で、うち2人は首相にまでなっている。 田口八重子さ…

「自民党に及ぶことは絶対ない」捜査が混迷するのは目に見えています・・・春秋 八葉蓮華

東海銀行を舞台にした巨額不正融資、外務省職員による機密費詐取、農水省汚職など大きな事件を担当した元警視庁警視の著書「警視庁捜査二課」を読んだ。刑事たちはどう不正をつかみ容疑者逮捕にこぎつけるのか、哀歓と共に、捜査の内幕を明かしている。 おも…

「東京大空襲」数棟の建物以外一面の焼け野原になった街・・・春秋 八葉蓮華

参拝の善男善女や外国人の観光客でにぎやかな東京・浅草寺の仲見世から本堂に向かうと、右手に警備派出所がありその前に縦、横、高さ1メートル余りの巨大な石が3つ鎮座している。1649年に徳川家光が寄進した“先代”仁王門の礎石だ。 18あった石のうち、1945年…

「共同の敵」言論・報道活動に対する不気味な脅し・・・春秋 八葉蓮華

ある問題について書いた記事に対し、たくさんの抗議の手紙を受け取ったことがある。言論に批判は当然だが、全く同じ文面のはがきや封書が毎日、数十通も届く。2週間でぴたりとやんだが、気味が悪かった。それが狙いなのだろう。 NHKに対する不気味な脅し…

「田舎暮らし」妄想が消えてから現実が始まる・・・春秋 八葉蓮華

都市から農村などに移住する「田舎暮らし」に関心を寄せる人が増えているという。書店には移住者らの充実した生活ぶりを紹介する雑誌が並ぶ。テレビ番組も同様だ。話がうますぎるのでは、と感じていたら辛口の助言が出版された。 題名からして「田舎暮らしに…

定額給付金、何はともあれこの時節のお金である・・・春秋 八葉蓮華

人情噺(ばなし)の名作「芝浜」は三代目桂三木助のおはこだった。師匠筋にあたる先代の桂文楽は研究熱心で知られる。この噺をものにしようとあれこれ考え、三木助の前でやってみせた。「おい、どうだい」「師匠、だめだ」「だめかい」「肝心なところがいけ…

「世の中の険しさ」不法滞在の両親の間に生まれ・・・春秋 八葉蓮華

「13歳のハローワーク」といえば、村上龍さんが子ども向けに書いた仕事紹介の本だ。これに連動したサイトもあって、なりたい職業、夢見る仕事の相談が引きも切らない。読んでいると思春期の心の揺れまで伝わってきて切なくなる。 大人の入り口に立って未来の…

違法献金を受け取った疑い、真相を明らかにするために・・・春秋 八葉蓮華

河井信太郎という鬼検事がいた。戦後史に残る数々の汚職事件を、ときには上司との衝突も恐れず徹底追及したという。不偏不党、厳正公平な検察権の行使――。退官後に著した「特捜検事ノート」には、この言葉が繰り返し登場する。 「事実と証拠があるのに、ある…

「都会風景」保存と再開発の兼ね合いはつくづく難しく・・・春秋 八葉蓮華

関東大震災で打ちのめされた東京をどう造り直すか。大正末から昭和の初めにかけて、若き建築家たちは腕を競い合った。彼らを引きつけたのは、装飾過剰の古めかしい様式とは違うシンプルなデザインだ。いわゆるモダニズムである。 東京中央郵便局の局舎はその…

「雛祭り」冬の暖かさ、旧暦とのズレがいずれピッタリ・・・春秋 八葉蓮華

光源氏はむろん男だが、雛(ひな)祭りをする場面が源氏物語第十二帖「須磨」に出てくる。といっても、人形を飾ったり白酒を飲んだりではなく、祭りの元の姿だった「禊(みそ)ぎ祓(はら)え」の神事を、都を離れて隠れ住んだ須磨の海辺で行うのである。 「…

春の訪れ「花粉症・黄砂」自然の秩序を壊したツケは必ず回ってくる・・・春秋 八葉蓮華

歩けるようになったばかりの赤ちゃんが、雪が降るのを眺めていた。生まれて初めて見る不思議な光景だったに違いない。ぺたりと窓に手をつき、じっと天を仰いでいた。先週は東京でも雪がぱらついた。3月なのに冷え込む日が続く。 空にはいろいろなものが舞う…