2010-06-01から1ヶ月間の記事一覧
ドラッグストア最大手のマツモトキヨシ。同社がまだ有限会社だった約40年前、創業者の松本清さんは千葉県松戸市の市長になった。「市民に役立つところだから市役所だ」を信条とする市長が就任早々に設けたのが「すぐやる課」だ。 市民の声に即応しない役所体…
同性の間の結婚は認められるべきか。日本ではほとんど論議にならないが、米国では熱い政治問題らしい。実際、州によって対応はまちまちだ。米国の根っこにある2つの考え方、自由主義とキリスト教が、厳しくせめぎ合うテーマだ。 こうした論争的な問題に沿っ…
一人娘を教え子にコロされた中学校教師の復讐(ふくしゅう)劇。明るいとは言い難い筋書きの映画「告白」の客足が、作り手の予想を超え伸びている。公開から3週連続で興行収入首位を維持。一般の映画とは逆に、客数は週を追い増えているという。 理由の一つ…
日本サッカーの恩人にドイツ人コーチ、デットマール・クラマーさん(85)がいる。ちょうど50年前に来日、厳しく献身的な指導が8年後のメキシコ五輪3位につながった。銅メダルは、蹴球(しゅうきゅう)と呼んだころからの歴史を彩る勲章である。 彼は箴言(…
「いやもう家計は火の車なんだ。家に入れるお金をちょっと増やしてくれないかな。これまでは1万円ずつもらってきたけど、まあ、倍の2万円ってとこか」。ある日、家族会議でお父さんが切り出した。「このままじゃ破産なんだよ」 お父さんがしきりに引き合い…
きのう東京の銀座や表参道の路上で、徹夜覚悟の行列を見かけた。けさ発売される米アップルの高機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)4」を求める人たちだ。人気スターの顔見せを今や遅しと待ち焦がれるファンを思わせる。 今年4月、多機能携帯端末「…
国技と名乗るのをやめたらどうか――。角界の大麻騒動のころ、小欄にそう書いたことがある。明治の末に常設の相撲場ができたとき、知恵者がいて国技館なる名をひねり出した。国技なんて、それ以降の呼び方にすぎないという話だ。 いささか辛口すぎるかと案じつ…
インターネットの普及で、紙の本や雑誌は見向きもされなくなるのではないか。そんな見方に対し「実際に起こっていることは全く逆です」と、異議を唱える人がいる。「文学フリマ」という催しを毎年2回開いている望月倫彦さんだ。 フリマとはフリーマーケット…
「父の日」のきょう、子育てに積極的な「イクメン」100人を、神戸市の企業や団体の代表者らでつくった実行委員会が選んで表彰するそうだ。育児の楽しさ、大切さを地域で共有し、仕事と子育てを両立する男性を応援する試みだ。 共働きが当たり前の時代である…
「お客様は神様です」。国民的歌手だった三波春夫さんは戦後の一時期に、「赤い浪曲師」と呼ばれた。芸名が南篠文若だったころである。それもそのはず。直前に4年にわたり、原体験になったシベリアでの抑留生活を送ったからだ。 三波さんと同様、終戦直後に…
「一つの行為から二つの利益を得ること」「一石二鳥!」「では、次から次へと問題が起きることは」「相撲協会!」。四字熟語で世の中をくすぐる東京の漫才ロケット団のお得意ネタに、客席は大爆笑だ。このごろは拍手までわきあがる。 面白うて、やがて苦みが…
空襲に打ちのめされ、あすの糧もない戦争末期にも映画だけはつくられていた。1945年の封切り作品は8月までに20本余。ほとんどが戦意高揚をねらった物語だという。溝口健二も成瀬巳喜男もプロパガンダ映画を撮らされている。 それが終戦後は一転して民主主義…
急ぎすぎだ。そう心配したがGHQ(連合国軍総司令部)は強硬だったと、吉田茂元首相は「回想十年」に書いている。中学も義務教育にした六・三制のことだ。終戦の翌々年、深刻な財政難のなか、制度を始めなければならなかった。 地方も新制の中学の校舎を建…
「安保は重い」と言われていたのだという。後に「60年安保の年」としてくくられる50年前を、政治学者の丸山真男はそう振り返っていた。「安保は難しすぎる。もっと切実な経済問題でなければ大衆は動かない」といった趣旨だった。 ところが、5月20日に日米新…
「私にとって此(この)世界は触覚である」と書いたのは高村光太郎だ。多分彫刻家のせいだろう、という理由を読めばなるほどとは思う。しかし、「五官は殆(ほとん)ど全く触覚に統一せられている」とまで言われると、わけが分からなくなってくる。 随想「触…
小惑星探査機「はやぶさ」が7年の旅を終え今夜、地球に帰ってくる。エンジンの故障、通信の途絶など数々の困難を乗り越え、予定より3年も遅れ満身創痍(そうい)での帰還だ。月より遠い星から探査機が戻るのは、世界でも初めてだという。 はやぶさは2つの…
テレビドラマの名作「岸辺のアルバム」をご存じだろうか。家族の崩壊を生々しく描いたこの作品は最後に小さな救いがあった。多摩川べりのマイホームが洪水で流され、一家はすべてを失う。しかし、分厚いアルバムだけは残るのだ。 思い出のつまったアルバムは…
報道陣が細いマイクを突き出すと、とっさに後ずさった。獄中27年。新しい武器かと思ったという。その人は後の南アフリカ共和国大統領、ネルソン・マンデラ氏。差別と闘い投獄され、ついに釈放された日を自伝でそう回想している。 かつて、ここにはアパルトヘ…
亡くなった後も模範として人々の心の中によみがえる。人として、これほどの栄誉はないのではないか。菅直人首相が8日の組閣後に開いた記者会見をみていて、こんなことを思った。中曽根政権の後藤田正晴官房長官に言及した時だ。 内閣の番頭役である官房長官…
「番長」というのはもうシ語だろうか。むかしの学園ドラマやマンガには、先生も一目置く親分がよく出てきた。裏でにらみをきかせて子分たちを自在に操る。失礼ながら、民主党の小沢一郎という人を眺めているとこの言葉が浮かぶ。 党の新執行部を決める両院議…
この世には神も仏もいないのか。そう思いつめたと、伊藤忠商事の丹羽宇一郎相談役は著書「人は仕事で磨かれる」で振り返っている。30代半ば、米国駐在のとき。大豆の相場を読み誤り、会社の純利益に匹敵する損を抱えてしまった。 連日のように米国で干ばつの…
「少子化対策の一種」「移民の仕事を代行している」。自動販売機のことである。すっかり生活に溶け込んだ日本の自販機大国ぶりを香港紙がこう解説したそうだ。作家の浅田次郎さんが、エッセー集「つばさよつばさ」に書いている。 確かにシャッターが閉まった…
がんで亡くなったニュースキャスター、久和ひとみさんの随筆集に、学生時代に菅直人氏の選挙を手伝った思い出話が登場する。投票前日、選挙区の東京に初雪が舞った。若い運動員が疲れを忘れ、はしゃぐのを見た菅夫人が一喝した。 「この雪が明日積もってたら…
ソウルの都心からバスに揺られて1時間余。軍事境界線を挟んで南北が向き合う板門店という場所は、首都の郊外といえるほどに近い。手続きさえ踏めば外国人観光客がふらりと訪れることもできるのだが、誓約書へのサインは必須だ。 「危ガイを加えられたりシ亡…
人間的で、誠実であること――マキャベリが「君主論」の中で、君主に必要な資質としてこういった美点を挙げている。ただし、権力を保つ法の現実論を説いて「マキャベリズム」なる語にまでなった男だ。当然、後に続く一節がある。 「資質の有無よりずっと大切な…
「命も要らず名も要らず、官位も金も望まぬ者ほど御しがたき者なし」。鳩山首相は西郷隆盛のこの言葉を、ときどき口にするそうだ。遺訓はこう続いている。「しかれども、この御しがたき者にあらざれば天下の大計はかるべからず」 支持率20%前後。連立政権か…
126年前のきょう発表された日本初の天気予報は大ざっぱな内容だった。「全国一般、風ノ向キハ定(さだま)リナシ。天気ハ変リ易(やす)シ、但(ただ)シ雨天勝チ」。気象庁の前身、東京気象台の開設から9年後で、当時は観測にあたる人も限られていた。 今…