2009-06-01から1ヶ月間の記事一覧
「本社なんか無い方がいいんだよ」。現場に偉そうに口出しする本社の管理部門は不要だという意味である。過激な発言の主は、松下電器産業(現パナソニック)の社長だった山下俊彦さんだ。少々乱暴な言い方だが本質を突いている。 同席した広報担当者は「そう…
大手金融機関の企画担当者から、こんな愚痴を聞いた。コスト削減の大号令が下ったが、無用だと分かっていても、どうしても切れない出費がある。調査の委託費や情報料などの名目で、官僚OBが営む複数の「研究所」に払うカネだ。 その額は年間で数千万円にの…
昨年の今ごろ東京駅で迷う外国人観光客の多さを小欄に書いた。政府が訪日観光キャンペーンを大きく展開しておきながら、実際に来てみると旅をしにくい。他の先進国に倣い、首都の玄関口である東京駅に外国人向け旅行案内所を設けたら、との内容だった。 今年…
1980年代に世界の家電業界はマイケル・ジャクソンさんに助けられた。家庭用VTRを売ろうと躍起だった頃(ころ)、ジャクソンさんのダンス音楽「スリラー」のビデオソフトが登場した。VTRの普及に大いに貢献したといわれている。 床をすべるように歩く「…
「心配ありません」。ズブの素人に裁判員など務まるのかと不安を訴える声に、最高裁が繰り返す決まり文句だ。法律の知識はいりません。分からないことがあったら裁判官が説明します。みなさんは常識に基づいて率直な判断を――。 その通りかもしれないが、頼り…
「もったいない」と思う気持ちに軍配が上がったといってもいい。消費期限の迫った弁当や総菜の値引きを認めず、みすみす捨てさせる商法をやめるよう公正取引委員会がコンビニ本部に命じた一件だ。客もこれには大いに納得がいく。 もったいない精神をどこより…
なぜ人は歩くのか。多くの場合、歩くと生きるは同義だ。歩くとはどこかに向かう過程だから、人生に例えられる。人は歩きながら、考えたり、祈ったり、涙したりする。目標に到達できるか分からない、途中経過の蓄積が人生なのか。 熊野古道や四国八十八カ所に…
ふと手にした本を読みながら小膝(ひざ)をたたくことがある。ミステリーにこの一節を見つけた時もそうだった。「時間をつぶしながら午後を過ごし、夜を過ごし、週末を過ごす。そうして時間をつぶしながら歳月を重ねるうち、ついには時間がおれをつぶすだろ…
百貨店にしても、スーパーマーケットにしても、消費者にモノを「売る」のが本来の仕事。そんな大手小売各社が今年、世に放ったヒット企画は、消費者からモノを「買う」ことだった。マーケティング専門紙の日経MJがそう伝える。 先週、同紙が選考、発表した…
ああ、人見絹枝は800メートルを走りきってこの辺りにうつぶせに倒れ込んだんだ。そんな思いにとらわれた。先日、81年前に五輪が開かれたオランダ・アムステルダムの陸上競技場を訪れ、トラックを1周歩いてゴールに立った時である。 日本から初の、そして唯…
多からず少なからず。「三」という数字は重宝である。三羽がらすだの三英傑だの三美人だの、よく使われるのもそのためだろう。重宝さのゆえか、面倒な法律を作る時にしばしばもぐり込ませるのが「三年後に見直す」という規定だ。 最近では裁判員法がそうだっ…
規制をものともせず宅配便事業をつくり上げたヤマト運輸の小倉昌男さんは硬骨漢として知られた。その小倉さんを「老害」ではないかと疑ったことが一度ある。相談役から会長に復帰した時である。今さら何のつもりかと思った。 自ら言っていた会長定年の68歳で…
伊藤博文は27歳、山県有朋が30歳、板垣退助も31歳、幕臣の榎本武揚でさえ32歳。幕末明治に活躍した人々の維新のときの満年齢だ。夜明けを待たず、安政の大獄で非業の死を遂げた吉田松陰は享年29歳、橋本左内はなんと25歳である。 寿命の短い時代とはいえ、こ…
米国ワシントンの最大の産業は意外にも印刷業である。この街で姿が目立つ職業といえば政治家やロビイスト、政府職員、報道関係者など。額に汗してモノを作る製造業は皆無と思いきや、実はビルの中に無数の印刷工場が隠れている。 発表前の経済統計や議会の報…
揚げたてのサツマイモに甘い蜜(みつ)をたっぷり絡めたオヤツをなぜか大学イモと呼ぶ。かつて学生街で好まれたからその名が付いたというが、異説もある。昭和の初め、金に困った東大生が自らこしらえて売ったのが始まりとの言い伝えだ。 発祥は早稲田、と唱…
1割切り詰めるより、5割減らす方がやりやすい――。松下幸之助氏はコスト削減の進め方を聞かれるたびに、こう答えていた。従来の延長線上では1割減でも苦労するが、発想を根本から変えれば半減も不可能ではないという意味だ。 「経営の神様」の信条は産業界…
マミズ、マミズと首相が力んでいた。温暖化ガスを2020年までにどれだけ減らすかという中期目標発表の記者会見だ。05年比で15%削減の目標には排出枠購入などの加算は一切なし。混じりっ気なしの真水だと強調した次第だろう。 話は分かるが、真水というのは一…
大量の魚が突然、街にヒョウのように降り注ぐ。なんと2000匹ものピンピン跳ねるイワシとアジだ――。というのは小説のなかの話。村上春樹さんの「海辺のカフカ」に出てくる事件である。この作品では空からヒルも落ちてくる。 これを地でいくような出来事ではな…
紫陽花(あじさい)ほど水滴が似合う花はない。雨にぬれると、花弁の青と枝葉の緑が一段と鮮やかに輝き始める。天の恵みを受け止めてパラパラと鳴る元気な音も心地よい。学名は「ハイドランジア」という。文字どおり「水の器」という意味だ。 今は世界各地で…
3年前に買った青いTシャツは、どうしたっけ。そう思った方も多いかもしれない。先週末にサッカー日本代表がウズベキスタンに勝ち、2010年南アフリカで開くW杯大会への出場を決めた。選手や監督の奮闘を心からたたえたい。 しかし前回、前々回に比べ一般の…
国際平和と安全の維持を主たる目的にした国際連合。第2次世界大戦後まもなく発足し、長い歴史があるが、国連旗を掲げた国連軍が編成されたのは後にも先にも1度しかないそうだ。1950年6月に始まった朝鮮戦争のときである。 38度線を越えて奇襲した北朝鮮軍…
昔ツッパリ、今ヤンキー。不良少年の呼び名も時代ごとに変わる。髪を逆立て、ケンカに明け暮れる。そんなヤンキーらの少し古風な青春映画が続々ヒット中と専門誌が巻頭で特集する。演じるのは当代を代表する二枚目俳優たちだ。 不良話は娯楽の定番だが、ドラ…
6日は第2次大戦の帰趨(きすう)を決めたノルマンディー上陸作戦の65周年の記念日に当たる。フランスの海岸に押し寄せた連合軍を率いたのはアイゼンハワー最高司令官だ。「アイク」の愛称で兵隊の間で大変人気のあった希有(けう)な軍人である。 殺人的な…
地下に咲く花々がある。「インカの薔薇(バラ)」は燃えるような深紅。「青金石」が放つ群青色は目が覚めるほど鮮やか。怪しげに光る「虎目石」の黄金色には思わずドキリとする。人間が手を加えていない天然の鉱物は生々しい魅力がある。 鉱石や化石を展示販…
かなたに毛沢東の巨大な肖像画が見える。その両側には「中華人民共和国万歳」「世界人民大団結万歳」のスローガン。そこまでたどり着こうと歩くのだが、これが遠い。じつに遠い。北京の天安門広場は人を途方に暮れさせる空間だ。 ゆうに50万人は収容できると…
閣議に臨む大臣たちがみんな沖縄の夏服「かりゆしウエア」という光景が、今年もニュースになっていた。クールビズのPRとはいえ大仰な気がするが、あのシャツはたしかにこれからの時期に心地よい。沖縄ではこれが堂々の正装だ。 やがて梅雨も明け、強烈な日…
GMが破綻した。GMはアメリカ繁栄の象徴だった。そしてアメリカとクルマは20世紀の世界を語るうえでの象徴でもあった。自由と可能性の国でGMが国有企業になる。大きな歯車がギィという不気味な音をたてて回った。その音が聞こえたような気がする。 第2…
先週金曜日に発売した2巻組のうち、第1巻だけはすでに売り切れ。そんな本屋さんも多いという。村上春樹さんの最新長編「1Q84」の話だ。発売日に4刷が決まり、2巻合わせた部数は68万部。異例の記録だと出版元は説明する。 購入者が皆、熱心なファンな…