2010-01-01から1年間の記事一覧

全国の街から個性が消えていく、競い合いが特徴ある街を生む・・・春秋 八葉蓮華

東京・日本橋に完成したばかりの高層オフィスビル。1階玄関を入るとかつおだしの香りが漂い、食欲をそそる。この街を本拠地とする三井不動産が手がけた新築ビルの顔となったのは、この地で創業300年を経たかつお節専門店だ。 昔は多くの家にカンナのような…

ポスト「42年組」は東アジアに新風を吹き込めるだろうか・・・春秋 八葉蓮華

少女漫画の世界に「24年組」という言葉があるのを、ご存じだろうか。萩尾望都さんや竹宮恵子さん、大島弓子さんら、1970年代に圧倒的な新風を吹き込んだ作家たちを指す。呼び名の由来は、昭和24年前後の生まれだったことだ。 どんな世界でも、人材の「当たり…

耳を澄ませば足音が聞こえる・・・春秋 八葉蓮華

目をとじて、だるまさんがころんだ、と早口で言う。そのわずかな時間に相手は移動し、目を開くたびに形を大きくして近づいて来る。今年の秋は、そんな跳躍の足どりでやってきた。ひと雨ごとに空気が澄み、雲が高いことに気づく。 季節の移りは連続的で滑らか…

若者離れ 人口が減っても上がる「長寿県」数字と結論との間で・・・春秋 八葉蓮華

38年ぶりに首位交代。そのニュースにホウと思い、しばらくしてアレッと感じた。敬老の日を前に、毎年厚生労働省が人口10万人あたりの100歳以上のお年寄りの数を都道府県ごとに発表する。今年は常勝の沖縄をおしのけ、島根が74.37人でトップだった。 メディア…

土壇場の駆け引きの末に、おかしな妥協で落着しなかったのに救いを見いだす・・・春秋 八葉蓮華

トロイカ、トロイカと民主党の面々が口走っていたから、有名なロシア民謡を思い出した人も多いだろう。3頭立ての馬そりが、「雪の白樺(しらかば)並木……」と軽やかに進んでいく、あの歌だ。かようなスリートップ体制が党の「原点」らしい。 代表選で菅直人…

「挙党態勢」信ずるところを互いにぶちまければいい・・・春秋 八葉蓮華

フショウの身でありますけれど……。代表選に打って出る民主党の小沢一郎さんが決意を語る場面を、きのうは朝からテレビで見た。負傷の身? ああ、スネに傷ということかと納得しかけたが、むろんこれは「不肖」という謙譲語だ。 いつも陰でうごめいている風情…

「西から東へ」過剰な設備を抱える産業の行方が気になる・・・春秋 八葉蓮華

セメントは西から東へと流れる。と、この業界ではいわれている。九州や中国地方は主原料の石灰石の産地で、セメント工場が数多い。できあがったセメントは貨車やトラック、船便で、関西、名古屋圏や首都圏などへと運ばれていく。 といった解説はあくまで国内…

大規模な山火事、森は二酸化炭素を吸収し、多様な生物をはぐくむ、人にとって大切な空間・・・春秋 八葉蓮華

ロシアの首都モスクワを、マスクで口や鼻を覆った住民や観光客が歩く。日本以外の国では一般に、風邪が大流行した時などですら、マスク姿で外を歩く人は珍しいそうだ。森林火災による大気汚染がどれほどひどいか、伝わってくる。 今回は規模に加え、首都や穀…

様々な生き物に満ちた豊かな地球を守ろうと、国連が定めた「国際生物多様性年」・・・春秋 八葉蓮華

スシや刺し身など、海の幸を味わう食文化が日本で花開いたのも当然ではないか。そんな思いを抱かせる調査結果が先ごろ発表された。日本の近海に生息している生き物は確認できただけで3万3千種余りで、全世界の15%近いという。 容積では全海洋の1%も占め…

命の重さ、尊さ「いのちを生きる」現代人の心を見つめ直すことはできないか・・・春秋 八葉蓮華

東京・秋葉原は宗教に縁の深い町でもある。近くには神田、日本橋、大手町周辺の総氏神、神田明神があり、孔子をまつる湯島聖堂がある。仏教学の泰斗、中村元がつくった研究教育機関、東方学院もすぐだ。この町で2年前の6月、無差別サッ傷事件が起きた。 神…

成果や能力を反映させる制度、若手と中高年社員の給料の格差はまだ大きい・・・春秋 八葉蓮華

王子製紙の北海道・苫小牧工場は世界最大の紙の工場だ。操業を始めて来月12日で100年になる。工場を建設したのは、取引銀行の三井銀行(現三井住友銀行)から専務として移った鈴木梅四郎。王子を発展させた功労者のひとりだ。 三井銀行に30代初めで入ってか…

原爆記念日、色あせた年中行事にしない責任が私たち日本人にある・・・春秋 八葉蓮華

地上の獲物を探す鳥のように目を見開いていたはずだ。目印は「T」の一文字だった。広島の中心を貫く太田川。その分岐点にかかる相生橋は、三方から渡れるようにT字の形をしている。空の上からでも見つけやすい投下目標だった。 原爆が広島に落とされてから…

立憲の政治を語るに足らず、自主返納、日割り今度もまとまらなかった・・・春秋 八葉蓮華

「官望」「民望」なる言葉がある。自分が作った新語だと福沢諭吉が書いている。人望がヒントなのだろう。政官界が内の歓心を集めるのが官望、外の人心を得るのが民望というわけだ。もっとも民望は古くからあった語で、彼のオリジナルとは言えぬらしい。 それ…

北方戦線の悲劇「樺太1945年夏 氷雪の門」北方領土を巡る・・・春秋 八葉蓮華

樺太(からふと)と呼ばれたサハリンは、かつて南半分が日本の領土だった。戦前、「愛の逃避行」と称された女優の岡田嘉子と演出家の杉本良吉のソ連亡命も樺太経由だった。第2次世界大戦の末期には、約40万人の日本人が暮らしていたという。 空襲はない。食…

肝心の一言が聞こえない「あっ」類人猿は出会った相手に敬意を表する・・・春秋 八葉蓮華

開演前のホール。席に座りうつむいてものを読んでいると、ひざに何か当たる。顔を上げれば、前を人が通り抜けようとしている。無言。込んだ電車が駅に着く。車内の人の流れが収まったころ、ぐいぐい背中を押すものがある。無言。 「申し訳ありません」とか「…

「遺体とともに生きる家」今を暮らす者、あるべき姿・・・春秋 八葉蓮華

詩人の田村隆一は、シ人の出ていない家に文化はないと言っていたそうだ。人がシねば愛用の品が残る。においがしみつき、ふとした折に生前の姿形が立ちのぼってもくる。その重なりが家の歴史を築いていく。そんな意味合いだろう。 「新しい家はきらいである………

電子のネットワークが広く浸透したいま、クリック一つで大規模な機密の漏洩・・・春秋 八葉蓮華

オバマ大統領はさぞかし焦ったことだろう。アフガニスタン戦争に関する機密文書が、一挙に9万点以上も流出したというのである。立ち上がってわずか3年という民間ウェブサイト「ウィキリークス」が、ひとまとめにして公開した。 政府や企業の内部告発情報な…

世界最大手の米グーグルと国内検索最大手のヤフーが提携する・・・春秋 八葉蓮華

たとえば、南米アンデス地方の民俗楽器「チャランゴ」について知りたいとき、どうしますか。古代エジプトの象形文字「ヒエログリフ」はどうでしょう。はたまた近年の百貨店業界の売上高は? こんど出張する町で人気の居酒屋は? どれもインターネットで調べ…

ありのままの姿を示す、数字という事実は何より雄弁・・・春秋 八葉蓮華

公的資金の助けを借りる会社の経営は、ふつう参考になりにくい。が、なるほどと思う例外があった。半導体大手エルピーダメモリの坂本幸雄社長の話だ。「社員を動かすのはそう難しくない。業績の数字をそのまま示せばいいだけだ」 エルピーダの経営を8年前に…

未来への展望を開く手段として社会的企業が期待を集め、活動が盛んになってきた・・・春秋 八葉蓮華

ヒン困、衛生、教育などの社会的課題を、服の生産、販売を通じて解決する。ユニクロを展開するファーストリテイリングが、バングラデシュでヒン困層への事業融資を手がけるグラミン銀行と提携した理由だ。一種の社会事業と説明する。 社会問題をビジネスの手…

自分たちでという住民の意気「みんなの花火大会」花火大会が続々と復活している・・・春秋 八葉蓮華

夏の風物詩である花火が本当に好きなのだろう。岩手県一関市や長野県須坂市、広島県大竹市と世界同時不況のあおりで昨年中止になった各地の花火大会が続々と復活している。スポンサー役の企業の財布のひもが緩んだわけではない。 住民からの寄付、有料観覧席…

猛暑が続く日本列島、ぬぐってもぬぐっても、噴き出す汗、汗、汗・・・春秋 八葉蓮華

エアコンのない昔の夏はどんなにつらかったか。野村芳太郎監督の古い傑作「張込み」を見て思い出した。刑事が犯人を追い夜行列車で九州へ向かう。この車内がシぬほど暑そうだ。ぬぐってもぬぐっても、噴き出す汗、汗、汗である。 映画が公開された1958年当時…

おまえだろう「似ている」から「同じ」までの距離を埋める・・・春秋 八葉蓮華

犯罪を防ぐ切り札も使いようでは冤罪(えんざい)を生む凶器になる。あらためてそう思い知った。石川県で起きた窃盗事件で、コンビニの防犯カメラに残った映像をもとに起訴された男性が別人と分かり、先日の裁判で検察自ら無罪を求めたのだ。 映像を本人とて…

「パリ祭」シャンソンの本丸パリ・オランピア劇場で日本人ではじめてリサイタル・・・春秋 八葉蓮華

はじめてリサイタルを開いたのは敗戦2年後の7月14日だった。たまたま会場があいていただけという日がフランス革命記念日。運命なのだろう。日本で「パリ祭」と呼ばれたその日が、シャンソン歌手石井好子さんの代名詞になった。 若き石井さんが名を成してい…

「注文型教育」全国から優秀な学生を集め、企業が欲する未来の研究者を育てている・・・春秋 八葉蓮華

韓国に「キロギ・アッパ」なる言葉がある。キロギは渡り鳥の雁(がん)、アッパは父さん。幼い子供を妻同伴で海外留学させ、自分は残って学費や生活費を稼ぐ。妻子のもとを訪ねるのはせいぜい年1回。そんな父さんを渡り鳥になぞらえる。 教育熱は日本以上と…

「平和を希求する紙幣」ミレニアム(千年紀)記念事業として発行された二千円札・・・春秋 八葉蓮華

満10歳の誕生日おめでとうと祝いたいところだけれど、最近めったに姿を見かけない。10年前のきょう、ミレニアム(千年紀)記念事業として発行された二千円札の話だ。あのころ、手にした新札を物珍しく眺めた方も多かっただろう。 当時、小渕恵三首相は「アポ…

東京都心と成田空港を結ぶ鉄道新線、成田スカイアクセス・・・春秋 八葉蓮華

優秀だが、少し使いづらい。名門大卒の新入社員の話ではない。きのう開業の東京都心と成田空港を結ぶ鉄道新線、成田スカイアクセスに乗ってみた感想だ。初日ということもあり、改札口や乗り場で戸惑う客を多く見かけた。なぜか。 所要36分と従来より15分短縮…

コストを抑え、外部調達を増やしている。その落とし穴・・・春秋 八葉蓮華

そのころ茨城県の日立市は、まだ日立村といっていた。明治時代の末に、この地で生まれた日立製作所は、早々に窮地に立たされた。発電所で使う変圧器など、つくり始めた製品が、相次いで約束した納期に間に合わなくなったからだ。 「注文者から甚だしく責め立…

足元が定まらない、連立相手のご機嫌を取り、結局はなんにもできない・・・春秋 八葉蓮華

真ん中、とんび、こんぶ、そのまんま……と並べてみたのは何かの呪文(じゅもん)じゃない。強調したり発声しやすくしたりするために「ん」が加わった言葉たちだ。「ん」ひとつでグッとくだける日本語の妙。専門的には撥音(はつおん)添加というそうだ。 「皆…

「すかたん」はやり廃りを繰り返しつつ国の酒量は減っていく・・・春秋 八葉蓮華

「すかたん」といえば、間抜けの意味。ときとして見当違いのことをしでかした人をののしっていう言葉にもなる。ここまでは辞書にもあるのだが、昨今流行している飲み物がその昔「スカタン」とも呼ばれていたとは、知らなかった。 スカッチ・アンド・炭酸。そ…