2010-03-01から1ヶ月間の記事一覧

時効、痛恨の思い、テロリストがつけいるすき・・・春秋 八葉蓮華

モスクワ中心部のルビャンカといえば、英米のスパイ小説のファンにはなじみ深い地名だ。最大の敵役だった旧ソ連の秘密警察、国家保安委員会(KGB)の本部がここにあった。ソ連崩壊後は、ロシアの連邦保安局が引き継いでいる。 29日、朝のラッシュアワーの…

建築家にとって最高の栄誉であるプリツカー賞、使いたい気分になる空間・・・春秋 八葉蓮華

形がよいイスを見ると、座ってみたくなる。立派な万年筆を手にすると、何か書いてみたくなる。太鼓とバチが置いてあれば、ドンドコたたいてみたくなる。言葉で指示されたわけではないのに、自然にそうしたいと感じることがある。 モノの色や手触り。音や香り…

人口のもう一つの山「団塊ジュニア」順風満帆の人も揺らぐ・・・春秋 八葉蓮華

35歳が人生の折り返し点。そう心に決める男の話を、村上春樹氏が25年前に「プールサイド」という題で発表した。やりがいのある仕事、高い収入、家庭、健康、外車。35歳ですべてを手に入れ、これ以上何を求めるべきか分からなくなり泣く。そんな筋だった。 主…

「お金を解き放て」郵貯の巨額の資金は国債で運用されている・・・春秋 八葉蓮華

郵便貯金は1875年、東京と横浜で取り扱いが始まった。当時はお金を預ける習慣がまだ一般的でなく、郵貯はなかなか広がらなかった。郵政事業の父、前島密は家に出入りする職人や商人にお金をあげて貯金してもらうほどだった。 私費を散じてまで郵貯を普及させ…

独り身「熟年の恋」お二人の関係を詮索するのは・・・春秋 八葉蓮華

作家の内田百ケンは76歳のときに再婚を果たしている。長らく別居していた奥さんが亡くなって、内縁の仲だった人との思いを遂げたのだ。芸術院会員に推されたのに「イヤダカラ、イヤダ」と拒んだ頑固者の、シの5年前のことである。 ほろ苦いような、ほほえま…

情報の本性「検閲」利益になる限りのものならばスイスイ通す・・・春秋 八葉蓮華

世界は境界がない方がうまくいくというのは絵空事にすぎない。現実には国にとっての国境は、ヒトの皮膚のように不可欠なものなのだから――。一昨日東京で講演したフランスの著名な哲学者レジス・ドゥブレ氏が、そう話していた。 しかし、皮膚は呼吸もすれば汗…

消費とはモノとカネの単純交換ではない、モノをつくるのと同じほど創造的・・・春秋 八葉蓮華

桜前線が日本列島を駆け上がるとき、時計が少しだけ速く進む気がする。学校を卒業する子供がいる。新しい仕事に就く若者がいる。遠くに引っ越す友達がいる。無数の別れと出会いが凝縮する慌ただしい時。桜の花が笑顔と涙を彩る。 「サクラサク」の合格電報が…

一人の力には限りがある。いろいろな個性の人材を生かして・・・春秋 八葉蓮華

経済団体の事務局の幹部を務めた人が「最近経営者が小粒になりましたね」としみじみと語るのを聞いた。今に始まったことではないが、思い当たる節がある。例えば業績が悪いとマスコミを敬遠して引きこもる上場会社の社長がいる。 内弁慶で打たれると弱いのか…

国際政治の実像「マグロ」外交の基本は現実主義・・・春秋 八葉蓮華

バブル期の築地市場で、マグロ1本に2千万円の値段がついたことがある。下北半島の先端にある大間町産のクロマグロだった。人口は6千人ほどの小さな町だが、グルメの間では「高級マグロの名産地」として、名前を知られている。 野菜や果物とは意味がちょっ…

目に映る光、電球から蛍光灯を経て、発光ダイオード(LED)・・・春秋 八葉蓮華

本紙「私の履歴書」で先日、ユニ・チャームの高原慶一朗会長が紙おむつ事業進出のころを振り返っていた。欧州メーカーに視察団を派遣、飛び込みで見学できたがメモは禁止。社員は製造機を目に焼き付け、トイレに入っては紙に仕組みを書き記したそうだ。 先を…

「竜馬になりたい」志士の姿も世につれ・・・春秋 八葉蓮華

ぼさぼさの長髪。ざっくりとまとった着物に袴(はかま)。開けっ広げに土佐弁を繰り出し、豪胆かつ緻密(ちみつ)でしかも人情味にあふれ……。われらに擦り込まれた坂本竜馬のイメージはこんなところだろう。理想のリーダー像の定番でもあるらしい。 この役に…

大学は出たけれど「アリのような人々」まだ・・・春秋 八葉蓮華

庶民の哀歓を細やかに描く小津安二郎監督の無声映画「大学は出たけれど」が公開されたのは1929年。世界恐慌の年だ。就職できなかったことを親に言えず四苦八苦する主人公の姿は共感を呼び、映画名がそのまま流行語になった。 80年後、大卒の就職難は中国で新…

美しいふるさと「みさと」平成の大合併がこの3月末で終わる・・・春秋 八葉蓮華

美郷と美里が人気だったそうだ。「みさと」といっても女の子につける名前ではない。合併した町の名だ。平成の大合併で、前者が秋田、島根、宮崎の3県で後者が宮城と熊本の2県で誕生した。埼玉にも美里町はあるからややこしい。 合併をきっかけに「美しいふ…

世界中の海から「マグロ」日本人の偏愛はとどまるところを知らず・・・春秋 八葉蓮華

その昔、マグロは上等な魚ではなかったというのはよく聞く話だ。昭和初期になってもそんな気分が残っていたのだろう。当時の「すし通」なるグルメ本いわく「宮内省や華族の屋敷に出前する鮨(すし)には、鮪(まぐろ)は使わないのが普通である」。 それが何…

「地域主権」各地の仕事ぶりから日々の素行までを調べ上げ・・・春秋 八葉蓮華

江戸時代は元禄のころに書かれた「土芥寇讎(どかいこうしゅう)記(き)」という珍本がある。難しい題名だが、中身は各地の大名の仕事ぶりから日々の素行までを調べ上げた機密報告だ。幕府の隠密が諸藩に潜り込んで拾ってきたネタを高官がまとめたらしい。 …

「危機感」実力を世の中にさらし悔しさを糧に・・・春秋 八葉蓮華

富士通元専務の池田敏雄氏といえば、1950年代から70年代にかけて日本のコンピューター開発をけん引した技術者として知られる。が、最初は苦杯をなめた。株式の取引を精算するシステムの受注競争で、米国勢にあっさり敗れた。 開発を始めたばかりのコンピュー…

「ベアリング」精密な球が、目につかぬ所で社会を回している・・・春秋 八葉蓮華

どんなに丸く見える満月も、完全な球状ではない。地球も赤道の部分が少し膨らんでいて、厳密にいえば、楕円(だえん)の形をしている。完全無欠の「真球」は自然界では見つかっていない。最も近い存在は、機械部品のベアリングの玉である。 水力発電所の水車…

人が動いて豊かになる、飛び回れば花粉がつく、花を咲かせて、蜂蜜ができる・・・春秋 八葉蓮華

花粉と聞くだけで目鼻がむずつく季節だというのに、中国人作家の楊逸(ヤンイー)さん(45)が「私には花粉がたくさんついているかもしれない」といった話をしていた。スギの話ではない。イメージは、花粉や蜜(みつ)を集めるミツバチなのだそうだ。 きのう…

「焦燥感あらわ」金剛山事業、デノミネーションも、さんざん・・・春秋 八葉蓮華

山の中腹に土産物の露店がぽつり。売り子の女性の笑顔が優しい。手作りなのだろう。不ぞろいな木製のお猪口(ちょこ)を2つ手にとる。「お友達が少ないのですね」と売り子さん。機転が利いた一言に「ではもっと」。思わず応じてしまった。 5年前、北朝鮮の…

自ら種をまいた災厄に無策のまま、食料不足や温暖化などで崩壊する・・・春秋 八葉蓮華

杞(き)の国の人が天の落下を心配した中国の故事から、取り越し苦労を杞憂(きゆう)という。人間同様、かつて地上の王者だった恐竜も空から破壊者が降ってくるとは想定外だったろう。科学者の国際チームが、恐竜絶滅の原因は隕石(いんせき)の衝突だと結…

「信じて」と何度繰り返すより一度でも「信じる」と言われる方が、ずっと難しい・・・春秋 八葉蓮華

人類が米ソ核戦争による滅亡に最も近づいたといわれる1962年のキューバ危機の折だ。ソ連がキューバに核ミサイルを運び込んでいる証拠だという航空写真を携え、米国務省高官がひそかにパリに飛んだ。ドゴール仏大統領の支持を取りつけるためである。 フランス…

国交を結んで55年、ラオスの国家元首が公式に日本を訪れたのは初めて・・・春秋 八葉蓮華

東南アジアの内陸国、ラオスのチュンマリ国家主席が2日から日本を訪問している。天皇、皇后両陛下と会見し、鳩山由紀夫首相と会談した。国交を結んで55年、ラオスの国家元首が公式に日本を訪れたのは初めてだ。意外な気がする。 日本はラオスに対する最大の…

強さの秘密「日本製」種明かしができれば、あとは学ぶだけ・・・春秋 八葉蓮華

神は細部に宿る。一生懸命に探せば。その居場所は必ず見つけられる――。そんな確信に満ちた言葉を、米国の学者から聞いたことがある。名門米企業が次々と没落し、貿易摩擦が高まった20年前。産業界だけでなく学界も真剣だった。 トヨタやソニーなどの日本企業…

政策実現「久恋」カネ、カネ、そしてカネ・・・春秋 八葉蓮華

演説上手といわれる英国のトニー・ブレア前首相が「政府が優先すべき課題は3つ。教育、教育、そして教育だ」とうたいあげたことがある。名せりふである。首相になる約7カ月前、日の出の勢いだった43歳の労働党党首のころだ。 この一節を借用するなら、「民…

怪物を待つ時間「ソリトン」想像を超えた異次元の力・・・春秋 八葉蓮華

男の子は、ただならぬ気配を感じて、波打ち際から離れていた。だが友達は彼の目の前で、大波にのまれてさらわれていく。立ちすくんでいると波が再び迫り、波頭に浮かんだ友達がこちらに腕を差し出して、ニヤリと笑いかける……。 村上春樹氏の短編「七番目の男…

石橋を叩けば渡れない、余計な仕事であふれかえる・・・春秋 八葉蓮華

業務の能率を高めるには、まず余計な仕事をやめるのが早道だ。第1次南極越冬隊長を務めた西堀栄三郎さんは、能率とは「目的を果たしながら、もっとも要領よく手をぬくこと」だと自著の「石橋を叩(たた)けば渡れない」で明言している。 「手ぬき」など、と…