「注文型教育」全国から優秀な学生を集め、企業が欲する未来の研究者を育てている・・・春秋 八葉蓮華

 韓国に「キロギ・アッパ」なる言葉がある。キロギは渡り鳥の雁(がん)、アッパは父さん。幼い子供を妻同伴で海外留学させ、自分は残って学費や生活費を稼ぐ。妻子のもとを訪ねるのはせいぜい年1回。そんな父さんを渡り鳥になぞらえる。

 教育熱は日本以上という韓国だ。母国語並みに外国語を習得するには、早期留学が一番と、海外に飛び立つ母子が後を絶たない。小中高生の海外留学は年3万人近くに上る。英語なら米国、カナダや豪州が定番だが、年収との相談でフィリピンやマレーシアなども人気とか。「雁父さん」は社会現象になっている。

 韓国では大学進学率が8割を超える。大卒の就職率は、非正規を含めても60%台。せめて語学を身につけさせ、就職を有利にとの親心か。採用する企業にとってはさぞ楽かと思いきや、この程度で満足しない会社も出てきた。厳しい就職事情を逆手に、有能人材を早めに手当てしている。最大手のサムスン電子だ。

 私学の成均館大学と組み、学部には半導体、大学院に携帯電話の学科をつくった。全国から優秀な理系学生を集め、企業が欲する未来の研究者を育てている。学費も生活費も会社もち。卒業後はサムスンへの入社が待っている。担当教授はこれを「注文型教育」と呼んでいた。まさか、ここまではとも思うのだが。

春秋 日本経済新聞 7/20
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