「西から東へ」過剰な設備を抱える産業の行方が気になる・・・春秋 八葉蓮華

 セメントは西から東へと流れる。と、この業界ではいわれている。九州や中国地方は主原料の石灰石の産地で、セメント工場が数多い。できあがったセメントは貨車やトラック、船便で、関西、名古屋圏や首都圏などへと運ばれていく。

 といった解説はあくまで国内の話。九州の西には中国がある。世界2位の経済大国になろうとしている国にはビルや道路を造るセメントの工場が何千とある。「西から東へ」にならえば、今はわずかな中国産セメント輸入がこれから増えてもおかしくない。過剰な設備を抱える国内セメント産業の行方が気になる。

 中国も設備は過剰な状態とみえる。中国政府はセメント762社など18業種・計2087社に、老朽化した設備を9月末までに廃棄するよう命じた。もっとも各企業は生産効率の高い新鋭設備の導入も考えるはずだ。過剰生産はどこまで和らぐのだろうか。余ったセメントが国外へ行き場を探すことは十分あろう。

 日本のセメント会社は各地の港に倉庫を設け、「西から東へ」と製品を届けてきた。工場の燃料を重油から石炭へ一気に転換して石油危機も乗り切った。いま設備の3割が余剰とされている。そこに中国産セメントが押し寄せてくれば、かつてない窮地だ。変化に対応する力を、このへんでもう一度見せてほしい。

春秋 日本経済新聞 8/14
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