技術の情熱の結晶「F1」世界最高峰の自動車レースの雲行きが怪しい・・・春秋 八葉蓮華

 フェラーリランボルギーニなど、往年の名車のエンジンを手がけたイタリアの著名な技術者が、冷めた口調で語っていた。「もうF1グランプリは観戦しない。刺激を感じなくなった」。世界最高峰の自動車レースの雲行きが怪しい。

 F1はレーサーだけの戦いではない。エンジンの開発者にとっても、腕を磨く道場である。競争相手が繰り出す新型マシンの動きに目を凝らし、轟(ごう)音に耳を澄ませる。排気の力を利用する「ターボ」や、バルブの開閉に空気の弾性を使う「ニューマチック」など、様々な新技術の種がサーキットの中から生まれた。

 昨年末のホンダに続きドイツのBMWもF1撤退を発表した。次はトヨタルノーかと、ファンは気もそぞろだろう。チームの維持には年に100億円もかかるという。金融危機の影響は大きいが、「環境配慮」の看板の下で今年から導入された新しいルールも、参加企業の情熱を冷ます原因になっているようだ。

 新規則では、ブレーキから逃げる力を回収し、エンジンに追加で馬力を注入できる。エネルギーの効率的な利用を後押しする狙いもある。ところが、完全に自由な設計を認めないため、誰が作っても似たような装置になるそうだ。技術陣の情熱の結晶だったF1エンジンが、単なる量産部品になるとすれば寂しい。

春秋 日本経済新聞 7/31
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge