太陽の熱と光「太陽エネルギー」地球の未来、人間たちの知恵比べ・・・春秋 八葉蓮華

 ヘロドトスの「歴史」に、日食に驚いて戦争をやめた話が出てくる。小アジアでリュディアとメディアという国が合戦に及んだとき、突如として真昼が夜になった。両軍とも狼狽(ろうばい)して和平を急いだという。紀元前585年のことらしい。

 きのう、あちこちの天体ショーを刻々と伝える映像に見入っていて、古代世界のこんな物語にも大いに納得がいった。トカラ列島も中国の上海も無情の雨。それでも不意打ちのように訪れた白昼の闇は皆既日食の神秘を実感させてあまりある。硫黄島から届いた黒い太陽と輝けるコロナの図には思わず息をのんだ。

 気温もたちまち5度ほど下がったというから、太陽の熱と光のすさまじさを思い知る。地球に降り注ぐわずか1時間分の太陽エネルギーの量が、この星で1年間に消費するエネルギーの量を超えるのだ。これをうまく使わない手はない。化石燃料頼みの社会を大きく変え、温暖化を食い止める確かな道に違いない。

 太陽はまだ50億年ほど燃え続けるという。人間たちの知恵比べを見て、造物主も少しは安心しておられようか。かつて戦争をやめさせるほどの力を持った日食である。今はそれに触れて地球の未来に心をはせてもいい。日本で次に皆既日食が見られるのは26年後。そのころ、人は天空を見上げて何を顧みるだろう。

春秋 日本経済新聞 7/23
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