シェア1位が長く続いた結果、自己中心の天動説に陥っていた・・・春秋 八葉蓮華

 いつまでも王座を守れるわけではない。そう覚悟はしていたはずだった。それでも現実の数字を見るまで、本当の敗北の苦い味は知らなかった。キリンホールディングスの加藤壹康社長の転機は、米国に駐在していた43歳のときにきた。

 1987年、ライバルのアサヒビールが業界の伝統を破る辛口の「スーパードライ」を発売。市場シェアを爆発的に伸ばし、それまで盤石にみえたキリンの地位が崩れ始めた。負け戦を海外で傍観するのは、さぞ悔しかっただろう。サントリー経営統合を目指す果敢なM&A戦略。その原点は敗戦の記憶にある。

 都議選で惨敗した自民党はどうか。一夜にして10議席を失い、ライバルの民主党は20議席も増やした。敗色が濃厚といわれ続けながら、実際に結果が出るまで麻生太郎首相の表情には今ひとつ緊迫感がなかった。あたふたと衆院解散と総選挙を決めたが、政権への不信は国民の間でも自民党内でも高まるばかりだ。

 キリンの加藤社長は、「ドライ戦争」に敗れて半世紀ぶりに首位から転落した原因をこう振り返る。「お客様本位と品質本位という本来の理念が劣化し、会社がお客様から離れてしまった」。シェア1位が長く続いた結果、自己中心の天動説に陥っていたという反省である。国民から離れた政党の命運にも通じる。

春秋 日本経済新聞 7/14
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