「励まされる言葉」人の気の移ろい、人垣はどこへ消えたのか・・・春秋 八葉蓮華

 スポーツジャーナリストの二宮清純さんによれば、選手に一番印象に残っている言葉を聞くと、例外なく調子の悪いときかけてもらった言葉を挙げるという。「どん底時代のことほど記憶に残るんでしょうね」。将棋の羽生善治さんとの対談でそう語っている。

 人垣はどこへ消えたのか。落ち目になった選手には、人も寄ってこなければ電話もかかってこない。だからこそちょっとした言葉でも身にしみ、心にも響く。その姿、選挙に敗れ地位を失った候補にダブらぬでもない。きのうは東京都議選があった。人の気の移ろいへのおびえが頭をもたげる落選者もいるだろう。

 先日、パリの街頭インタビューで「励まされる言葉」を聞かれたフランス人が口々に披露するのをNHKテレビで見た。なかなか面白い。例えば「起こることは受け入れなければならない」。答えたパリジェンヌ自ら、「とても簡単な、少しZEN(禅)風の表現ね」と解説したりもする。

 なかでも「さあ、一緒にお茶でも飲もう」が気に入った。そういえば、二宮さんによると野球の野茂英雄さんが一番うれしかった言葉は「今度、飯でも食いにいくか」だそうだ。渡米前ケガで2軍落ちしたとき、練習場までやってきた評論家の権藤博さんに誘われたという。励ましの要諦(ようてい)、洋の東西に関係はない。

春秋 日本経済新聞 7/13
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