JR福知山線の事故「忘れていたもの」無理を重ねた組織の過ち・・・春秋 八葉蓮華

 全国にはいくつも「東西線」がある。東京メトロ東西線をはじめ札幌や京都の地下鉄にもその名はあって、仙台でも同名の地下鉄路線を建設中だ。なにしろ分かりやすいから多用されるのだろう。12年前には大阪にも東西線が誕生した。

 商都の真ん中を横断するJR西日本のこの鉄道は延長わずか12キロほど。しかし東と西から在来線の電車が乗り入れて関西の通勤事情を大きく変えた。ところがそこに、あの惨事の芽が隠されていたことになる。乗客106人が犠牲になった福知山線の事故は、東西線との接続のために付け替えた急カーブで起きた。

 危険が予測できたのに自動列車停止装置の設置を怠った。検察はこう断じて現社長の起訴にまで踏み切ったけれど、その人ひとりの責任というわけでは、決してない。新線開業を控えてしゃにむに造ったきついカーブ。そこを走る従来の3倍近い本数の電車。そんな無理を重ねた組織の過ちが大事故を招いたのだ。

 私鉄王国の関西でJRはどうしても影が薄い。だから大阪の都心を横切る新線にJR西日本は大きな希望を託し、堂々と「東西線」の名を与えたのだろう。その高揚のなかで忘れていたものがあった。それが8年ののちに悲劇を引き起こし、果てはトップの訴追をもたらした。法廷で、その正体は見えるだろうか。

春秋 日本経済新聞 7/10
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