違法なバクチにうつつを抜かす、国技の看板を背負ってぬるま湯につかる角界・・・春秋 八葉蓮華

 「一つの行為から二つの利益を得ること」「一石二鳥!」「では、次から次へと問題が起きることは」「相撲協会!」。四字熟語で世の中をくすぐる東京の漫才ロケット団のお得意ネタに、客席は大爆笑だ。このごろは拍手までわきあがる。

 面白うて、やがて苦みが広がる光景である。四字熟語は相撲道の十八番(おはこ)ではなかったか。不惜身(ふしゃくしん)命(みょう)、堅忍不抜、精神一到……。横綱大関に昇進が決まると、力士はこうした言葉に決意を託してきた。渦中にある琴光喜も3年前、31歳で大関になった遅咲きの喜びを力戦奮闘の4字に込め、精進を誓っていたのだ。

 野球賭博暴力団の資金源になっている。彼らはいったん目をつけた金づるはしゃぶり尽くそうとする。それが常識というものだ。国技の看板を背負ってぬるま湯につかる角界と、闇の勢力と。両者の間がどれほど深まなのか、底は見えない。親方まで賭博に手を染めていたと聞いて、もう驚く人もいないだろう。

 「相撲の差し手、組み手、決まり手がややわかるようになるには十年かかったですよ」と、横綱審議委員長だった独文学者の高橋義孝は言った。こちらに手間ひまかけて相撲通になったファンがいる。そして、あちらには違法なバクチにうつつを抜かす輩(やから)。これで深まな間柄にはなりようがない。絶体絶命である。

春秋 日本経済新聞 6/18
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