「文学フリマ」本と人との持つ魅力が相まって、出展者も客も回を追って増えている・・・春秋 八葉蓮華

 インターネットの普及で、紙の本や雑誌は見向きもされなくなるのではないか。そんな見方に対し「実際に起こっていることは全く逆です」と、異議を唱える人がいる。「文学フリマ」という催しを毎年2回開いている望月倫彦さんだ。

 フリマとはフリーマーケットの略。本来は不用品や手作り品を売買する青空市を指す。文学フリマはこうした市を模し、自作の小説や詩、批評などの本や冊子を書き手自ら長机で売る。文学を発表する新しい場を作ろうと始まり、先月で10回目を数えた。全国から400組以上が出展し、何千人もの客でにぎわう。

 伝統ある文芸同人誌も参加しているが、主力はプロの書き手も含む若い世代だ。活字の大小や配列まで、きちんとこだわって伝えたい。好きな作家の作った物を手元に置きたい。作者や読者と顔を見て話をしたい。そんな思いが催しを支える。本と人との持つ魅力が相まって、出展者も客も回を追って増えている。

 若い参加者にネットか印刷物かという対立はない。ネットでどんどん文章を発表し、本にまとめる。販売をネットで告知し、愛読者がフリマに集まる。そんな循環ができている。近年の会場は東京の蒲田だ。かつては映画撮影所、今はモノ作りで有名な街。いずれ文学の街として知られるようになるかもしれない。

春秋 日本経済新聞 6/21
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