おしゃれ野菜市「野菜はきれい」安心を求める消費者の心・・・春秋 八葉蓮華

 けやき並木の緑が日ざしに映える東京・表参道の高級ファッションビル。正面玄関を入り、シャネル、ブルガリの店を両脇に見ながら下りエスカレーターへ。地下の休憩用広場は週末、姿を一変させる。産直の野菜やコメ、果物などを売る市場(いちば)に変身するのだ。

 昨年秋から毎月1回、土日に開催し、好評で今は月2回に。きのう訪れてみると、自然農法や無農薬などの食材を求める人で客足が途切れない。色が不ぞろいなトマトも並べ方が巧みで、かえっておしゃれに見える。陳列に使う籠(かご)など什器(じゅうき)の設計も洗練されており、欧州の朝市を思わせる。

 野菜市を企画したのはデザイン関連の企業に勤める24歳の青年だ。「野菜はきれい」だと語り、デザインの力で都市と農業を結びつけたいと目を輝かせる。店のひとつは筑波大学の現役学生5人によるもの。就農希望の男子学生や「農家の嫁になりたい」女子学生が自家農園の成果を一生懸命、売り込んでいた。

 こうしたおしゃれ野菜市が近年、都市部で盛んになってきた。主な舞台は再開発でできた高層マンションや郊外住宅地。価格は一般にやや高め。安売り頼みの大手小売業とは対照的だが、安心を求める消費者の心をとらえた。市場(しじょう)はある。意欲ある若者らもいる。こうした新しい芽をうまく育てる政策が望まれる。

春秋 日本経済新聞 7/26
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