日本初の大型パソコン専門館「ザ・コン」日本企業の培った価値に新たな光・・・春秋 八葉蓮華

 上京直後の理科系学生にスパイ、キャンペーンガール、ヤクザにハッカー。こんな面々が強盗団の立てこもりに巻き込まれる大騒動を描いた小説がある。若者に人気の作家、今野敏氏の「アキハバラ」だ。パソコン関連の専門店ビルが事件の舞台になっている。

 作品が発表されたのは10年前。作中では架空の店名だが、立地や情景はザ・コンという愛称の日本初の大型パソコン専門館を強く連想させる。1990年に開店、先端を走る斬新な作りでビル・ゲイツ氏も足を運んだ。事件は創作でも、買い物や仕事で当時、多くの人々が世界からこの店を訪れていたのは事実だ。

 そのザ・コンも2年前に閉店し、経営していたラオックスは先ごろ、中国の家電量販店の傘下入りが決まった。閉鎖されたままのザ・コンの建物は金網に囲まれ、うら寂しい空気が漂う。だが目を転じれば、好奇心旺盛な外国人が街を闊歩(かっぽ)し、メイド姿の客寄せの女性にシャッターを切る。

 この街を訪れる中国人客の需要を取り込むのがラオックスと出資者の共通の狙いだ。出資する中国企業にとっては、売り場作りや接客など日本式の商いを習得できる効果も大きいという。モノ、ヒトに続きマネーでも隣国の存在感が増し、日本企業の培った価値に新たな光を当てて見せる。そんな時代が来ている。

春秋 日本経済新聞 7/6
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