変化の象徴「スリラー」ソフトがなければハードはただの箱・・・春秋 八葉蓮華

 1980年代に世界の家電業界はマイケル・ジャクソンさんに助けられた。家庭用VTRを売ろうと躍起だった頃(ころ)、ジャクソンさんのダンス音楽「スリラー」のビデオソフトが登場した。VTRの普及に大いに貢献したといわれている。

 床をすべるように歩く「ムーンウオーク」や、周りのダンサーとともに踊り歌う独特の空間が人気を得た。新しい家電製品VTRは斬新な映像と音楽とともに広がった。「ソフトがなければハード(機器)はただの箱」「ソフトとハードは車の両輪」といわれ始めた。変化の象徴がジャクソンさんだったのだろう。

 ビデオソフトや音楽CDがけん引役になって機器が売れ、家電業界が潤う時代は、インターネットの登場で終わる。ネットでソフトが簡単に手に入るようになり、異業種からの参入が相次いだ。機器も、音楽ソフトも、一緒に売り込もうとしたソニーは、ネットを駆使した米アップルのiPodにお株を奪われた。

 奇行もあったジャクソンさんは93年に少年へのせい的ぎゃく待で訴えられたあたりから、音楽活動で勢いを失っていったようにみえた。インターネットの登場で日本の家電業界が変化を迫られたのも90年代半ばだった。ここでも両者に浅からぬ因縁を感じる。その後のジャクソンさんは不遇だった。訃報(ふほう)に世界が驚いた。

春秋 日本経済新聞 6/27
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