モノと人が行き交い、互いに富を生む、貿易に観光に文化交流・・・春秋 八葉蓮華

 今の時期、花見といえば桜というのが大方の思いだろうが、菜の花畑の可憐(かれん)な黄も捨てがたい。この週末、両方を同時に楽しめるのが埼玉県日高市巾着田(きんちゃくだ)という場所だ。蛇行する高麗(こま)川に丸く囲まれた土地の形から、その名が付いた。

 稲作に向かないこの土地を開拓し水田にしたのは1200年以上前、高度な技術とともに朝鮮半島から渡来した人々とされる。高麗(こま)郡と呼ばれたこの一帯だけではない。未開拓地だった関東平野の各地に移住した「北朝鮮高句麗系の渡来人」は農業などに高い生産能力を発揮したと東京都発行の東京100年史にある。

 政治、経済、産業、文化。幕末に黒船が到来する以前の日本では、新しい風はもっぱら西方から吹くものだった。近年では冷戦終結とアジアの経済成長に伴い、西側に広がる国々の近さを誰もが日常的に意識するようになった。貿易に観光に文化交流に。モノと人が行き交い、ビジネスが起こり、互いに富を生む。

 うれしい話ばかりではない。西風に乗って黄砂が飛来し、海岸には海洋ゴミも漂着する。これらは技術と知恵でいずれ解決するとして、問題はいま発射台に載せられている「物体」だ。かつて東アジアの海は、周りの皆に豊かさをもたらす交流の場だった。まだ遅くはない。引き返す勇気を持て。そう呼びかけたい。

春秋 日本経済新聞 4/5
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