世界中の青空・・・

北京五輪開幕まで1カ月足らず。洞爺湖サミットは中国の胡錦濤国家主席が五輪への国際協力を演出する場にもなっている。ボイコットを取りざたされたフランスのサルコジ大統領も、日米首脳に続いて開会式参加を表明する方針という。▼五輪史上最も多い80人以上の各国元首・首脳が集う開会式の成功に、中国は国の威信をかけている。会場の国家体育場(愛称・鳥の巣)は半開放の構造だ。大掛かりなアトラクションは雨に弱い。8月の北京は雨が多いが、開会式当日の雨だけはなんとしても避けたい。そこで中国の実用技術の出番がやって来る。▼中国で「人工消雨」と呼ぶ技術だ。近づいてくる雲にロケットや飛行機でヨウ化銀などの化学物質を打ち込み、開会式より前に雨を降らせる。4月のマラソンテストの日も人工の雨が降った。粉じんにまみれた選手を雨が洗った後、大気は様変わりにきれいになった。晴天が3日も続くと街はまたホコリでかすむが。▼東京五輪が開幕した10月10日、前夜の土砂降りは一転、秋晴れになった。北出清五郎NHKアナは「世界中の青空を全部東京に持ってきてしまったようなすばらしい秋日和」と表現した。当時、神風が吹いたといわれた。北京市民は人工の雨に慣れっこだという。砂漠化や水不足が現実の問題になっているからだ。

春秋 日本経済新聞 7/9

八葉蓮華 hachiyorenge