「挙党態勢」信ずるところを互いにぶちまければいい・・・春秋 八葉蓮華

 フショウの身でありますけれど……。代表選に打って出る民主党小沢一郎さんが決意を語る場面を、きのうは朝からテレビで見た。負傷の身? ああ、スネに傷ということかと納得しかけたが、むろんこれは「不肖」という謙譲語だ。

 いつも陰でうごめいている風情の人が、とうとう表舞台に出てくる。菅直人首相が「挙党態勢」を拒んだのが許せなかったらしい。政界では党内の対立が抜き差しならなくなると大騒ぎだが、このさい国民の前で信ずるところを互いにぶちまければいい。小沢一郎という政治家の本当の力も分かろうというものだ。

 とはいえ、異様な光景というほかない。「政治とカネ」の問題を抱えた小沢さんは、強制起訴にもつながる検察審査会の議決を控えての出馬だ。それだけでも道理に合わないが、もし代表に選ばれ、首相になった場合は憲法の規定で訴追を逃れることもできる。非難は高まり、負傷の身がますます痛むことだろう。

 さて、小沢さんが神妙に口にした「不肖」とは愚か者のこと。もともとは父親や先生に「似ていない」という意味だ。たしかに、これほどあからさまに事を構えるのだから誰かに似ているはずもない。ちなみに不肖には「不運」という意味もある。こちらはちょうど1年前、政権交代に夢を託した有権者の嘆きだ。

春秋 日本経済新聞 8/27
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